岡野武志

第二東京弁護士会所属。刑事事件で逮捕されてしまっても前科をつけずに解決できる方法があります。

「刑事事件 法律Know」では、逮捕や前科を回避する方法、逮捕後すぐに釈放されるためにできることを詳しく解説しています。

被害者との示談で刑事処分を軽くしたい、前科をつけずに事件を解決したいという相談は、アトム法律事務所にお電話ください。

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不起訴のメリットとは?メリット獲得方法と起訴・罰金刑との違いを解説

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不起訴になればメリットが多い・不起訴になれば前科はつかない、などと聞いたことがある方は多いのではないでしょうか?
ですが、そもそも不起訴とは何か、不起訴になると実生活でどのようなメリットがあるのかについては、よく知らない方も多いです。

まずもって、不起訴処分は有罪ではありません。そのため、弁護活動により不起訴を獲得すれば今後の人生が変わる可能性が高いです。

当記事では、不起訴の意味と流れについて説明し、メリット及び不起訴処分を獲得する方法についても解説します。

例えば以下の状況に置かれている方は、是非最後までお読みください。

  • 痴漢で不起訴処分になったら会社への復帰は可能?
  • 盗撮で不起訴処分になったらどのようなメリットがある?
  • 傷害罪で示談したい・示談できたら不起訴になる?
  • 不起訴の意味や起訴との違いがわかる
  • 実際に不起訴処分となった際のメリットがわかる
  • 不起訴処分になるための刑事弁護の内容がわかる

不起訴とは?起訴・不起訴の違い

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不起訴処分とは、検察官が公訴を提起しない、つまり起訴しないと判断することです。

ではその起訴とはどのような基準でされてしまうのか、逆に不起訴とは何なのかなどについて解説しましょう。

起訴と不起訴

被疑者が何らかの犯罪容疑で逮捕されると、微罪処分になるケースなどを除き、検察庁に事件が送られます。

起訴の内容と流れについては以下の通りです。

起訴とは

検察官に事件が送られることを「検察官送致」といい、書類のみが送致される事件と被疑者の身柄ごと送致される事件とがあります。

身柄事件で送致された場合は、刑事訴訟法により厳格な時間制限が適用されます(刑事訴訟法第203条第205条)。

検察官に送致されると、その後検察官の専権によって起訴されるか不起訴処分となるかが決まります。

刑事事件の流れ

起訴される事件とは、捜査段階で検察官が有罪であると判断した事件や、裁判で裁かれるべきだと判断した事件をいいます。

起訴後は刑事裁判が開かれることになり、その後刑罰が確定します。

起訴後における99.9%の有罪率とは?

検察官に起訴されると、高確率で有罪になるという事実を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。これは検察統計などのデータでも公にされている事実であり、起訴後は極めて有罪判決となる確率が高いことを示しているのです。
無罪判決を獲得できない場合を除いて、有罪判決は回避できません。

参考元:罪名別 被疑事件の既済及び未済の人員(2020年)

起訴後の刑事裁判には、大きく正式裁判と略式裁判とがあります。

正式裁判になれば、懲役刑や禁錮刑などの刑罰が確定し、略式裁判になれば、罰金刑などの刑罰が確定します。

不起訴とは

不起訴には、主に以下3種類あります。

  1. 嫌疑なし
  2. 嫌疑不十分
  3. 起訴猶予

嫌疑なしとされるのは、そもそも事件の犯人でないことが明白になったときや、犯人と断定するには証拠が不十分なケースが該当します。
嫌疑不十分についても、捜査を尽くした結果、起訴するだけの証拠が不十分な場合が該当するでしょう。
起訴猶予とは、起訴するだけの要素はあるが、検察官の判断により起訴しないとすることです。被疑者本人が反省していたり、被害者の処罰感情が強くなかったりと、様々な背景事情により決定されます。

不起訴処分が確定すれば、事件は終了です。

罰金刑とは

先述の通り、罰金刑も検察官の起訴後に確定する刑罰です。つまり罰金刑であっても、前科がつくことは避けられません。

略式起訴の流れ

第四百六十一条

簡易裁判所は、検察官の請求により、その管轄に属する事件について、公判前、略式命令で、百万円以下の罰金又は科料を科することができる。この場合には、刑の執行猶予をし、没収を科し、その他付随の処分をすることができる。

刑事訴訟法第461条

罰金刑は、国に罰金を納める財産刑です。なお、1万円以上の金額をもって罰金刑とされています。

不起訴処分のメリット4選

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この章では、不起訴処分のメリットを一つひとつ解説します。犯罪に関与してしまった本人やご家族の方は、是非お読みください。

前科がつかない

まずは前科がつかないということです。
先述の通り、検察官が起訴しない事件は基本的に不起訴処分となります。
起訴され有罪とならない限りは、「無罪推定の原則」が働きます。

無罪推定の原則は、近代法における基本原則です。憲法31条に規定されており、「何人も有罪判決を受けるまでは無罪と推定される」という決まりであり、憲法31条が根拠条文といわれています。

有罪とされるには、検察官の立証が必要です。
不起訴処分となっても、逮捕歴、つまり前歴は残ります。前歴は犯罪捜査の資料として捜査機関にデータが残りますが、前科のように今後の社会生活に大きな悪影響を及ぼすものではありません。

なお、前科がついてしまうと、会社を解雇されたり、転職で不利になったりすることがあります。

もとの生活に復帰できる

不起訴処分を獲得すれば、基本的に会社や世間、学校などから非難を浴びせられることはありません。

先述の無罪推定の原則にも関わってきますが、有罪判決を受けていないのにもかかわらず、仮に解雇されたりネットに誹謗中傷を書かれてしまったりすると、相手側が違法となるケースが多いです。
会社においては特に、「懲戒解雇」とされることは考えにくいです。

例えば就職の際にも、履歴書の賞罰欄に記載する必要がないため、実名報道などされていない限り事件が周囲に知られることもないでしょう。

また、すでに解雇されている会社には、不起訴処分になったことを証明し、再度同じ会社に復帰できる可能性もゼロではありません。

身柄拘束から解放される

身柄拘束とは基本的に、逮捕や勾留のことをいいます。なお勾留には、被疑者勾留と被告人勾留とがあります。

例えば逮捕後、被疑者勾留されていると想定してみましょう。弁護士による示談成立など、弁護活動の末不起訴処分になった場合には、これまで身柄拘束されていても即日釈放されます。

海外旅行に行ける

その他、海外旅行や海外出張に影響を及ぼさないというメリットがあります。

特に、アメリカやカナダでは前科者を厳しく取り締まっており、前科がついてしまうと渡航すらできない場合があります。なお、前科がある場合の渡航については、以下の記事で詳しく説明しています。

不起訴のメリットを獲得するための刑事弁護とは

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実際に、不起訴処分を獲得する方法について解説します。不起訴処分獲得のポイントは、情状弁護にあります。

第二百四十八条 

犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。

刑事訴訟法第248条

被害者がいる事件では示談交渉・示談成立

被害者のいる事件での示談は、非常に重要です。

示談とは、民事的な当事者同士の合意です。刑事事件においては、合意内容を書面で作成し、捜査機関などに有利な証拠として提出します。

ではなぜ、示談が刑事事件に有利なのでしょうか。

犯罪によって、最も被害を受けているのは被害者本人です。その本人と事件が解決しているのであれば、もはや刑事事件として裁判にかける必要はなくなるという考えになります。
そのため、示談書を加害者側の証拠として提出することにより、検察官は起訴するまでの必要性がないと判断することがあるのです。

また、示談成立とともに被害届を取り下げてもらえることもあります。

反省・謝罪をする

被疑者本人の反省有無は、刑事事件において重要な判断要素です。反省の気持ちがある場合は形にしましょう。
具体的には、捜査機関などへの反省文や、被害者へ向けた謝罪の手紙などを用意します。文章能力に自信がない場合は弁護士にチェックしてもらいましょう。

なお謝罪の手紙は、示談交渉の際に被害者本人の手にも渡ります。被害者が謝罪文の受け取りを拒否した場合であっても、検察官に対して当該文面は提出します。謝罪の意思があることを示す証拠となるからです。

親告罪の場合は告訴の取り消しをしてもらう

起訴前であれば、告訴の取り消しが有効です。
犯した罪が親告罪である場合、告訴を取り消してもらうことでそもそも検察官は起訴できないことになっています。

親告罪とは、犯罪事実が公になることで被害者のプライバシーが侵害されるおそれのある罪や、被害者の告訴がなければ起訴できないとされている罪です。

例えば名誉毀損罪や侮辱罪、器物損壊罪などが該当します。

犯罪の軽重を考慮する

犯罪の軽重について情状弁護してもらいましょう。犯罪をした際の被疑者の境遇や年齢など、不起訴処分にふさわしい有利な条件を検察官に訴えるということです。

その他、再犯に至らない事情についても訴えていきましょう。例えば被疑者が両親と住んでいる場合は、両親が監視監督できる旨などを書面に記すことがあります。他に考えられる要素としては、就職が決まっているケースです。そのような状況下で再犯する可能性が低いことなどを訴えていきます。

不起訴のメリットを獲得するにはまず弁護士へ相談

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不起訴処分や起訴後の執行猶予付き判決を実現するには、早い段階での弁護士相談が必要です。

刑事事件で逮捕されてしまうと、その後は決められた時間内に進行するという決まりがあります。被疑者の逮捕後、その後最大期間勾留されたとしても、検察官の起訴不起訴の判断が下るまで23日間しかありません。

当然のことながら、不起訴処分を獲得するには、起訴前の弁護活動が前提です。また、不起訴処分に向けた弁護活動は、身柄の解放にも繋がり、被疑者にとって非常に有利なものとなります。

なお、身柄解放活動の大前提として、弁護士が被疑者本人の接見に赴き、直接話をすることも可能です。今後の弁護方針なども相談するといいでしょう。

逮捕された被疑者のご家族は、早期に弁護士や弁護士法人へ相談されることが大切です。刑事事件の無料相談などを、積極的に利用しましょう。