岡野武志

第二東京弁護士会所属。刑事事件で逮捕されてしまっても前科をつけずに解決できる方法があります。

「刑事事件 法律Know」では、逮捕や前科を回避する方法、逮捕後すぐに釈放されるためにできることを詳しく解説しています。

被害者との示談で刑事処分を軽くしたい、前科をつけずに事件を解決したいという相談は、アトム法律事務所にお電話ください。

アトムは夜間土日も受け付けの相談窓口で刑事事件のお悩みにスピーディーに対応いたします。

前科があると海外出張できない?海外出張と前科の影響|ビザ取得は可能?

ac1120 etc 1
  • 過去に前科があるが、海外出張のある会社部署に就職した
  • 過去に前科があるが、会社から海外出張を命じられた
  • ビジネスチャンスともなる海外出張は前科が問題になる?
  • そもそも前科がある場合パスポートの発給・取得はできるのか?

など、お困りではありませんか?

前科・前歴があると、普段の生活においてはもちろん、海外出張・海外旅行などができるのかと不安になります。
また、そもそも前科とは何なのか、前歴との違いは何かなどの基礎的な意味についても知っておきたいところです。

前科があっても海外出張に行けるのかどうか、海外出張や海外旅行に必要な手続きには何があるのかなどについても解説していきましょう。

今すぐ前科について個別に相談したい方は、弁護士による「刑事事件の相談」をご利用ください。

  • 前科があると海外出張できない?前科と前歴はどう違う?
  • 海外出張に必要な手続きは前科があるとできない?
  • パスポートとビザ、ESTAの違いは?前科との関係は?
  • 前科は海外出張以外でも不利益を受ける?

前科と海外出張の基礎知識

item 0108 2

まずは、前科と海外出張についての基礎的なことについてお話します。
ご自身にそもそも前科がなかったと判明すれば、海外出張や海外旅行について、あまり心配する必要はありません。

前科とは?

前科は、被告人が検察官に起訴され、有罪判決が下ることによってつくものです。
執行猶予付き判決を得ても前科はついてしまいます。
判決で無罪となった場合、前科はつきません。

前歴とは?

前歴は、事件が警察によって捜査対象となった時点でつきます。
刑事事件はまず、警察官によって捜査されるところから始まり、その後検察官によって起訴されるか起訴されないかが判断されます。
前歴とは、起訴されるまでの捜査段階の履歴をいい、言い換えれば捜査をされたという事実のことです。

検察官に起訴されない処分のことを「不起訴処分」といいます。

被疑者の不起訴処分が確定すれば、前歴がつくのみでとどまり、「前科」がつくことはありません。

海外出張に必要な手続きとは?前科があってもできる?

item 8 1

海外出張や海外旅行に必要な手続きは、基本的に以下のとおりです。

  • パスポートの発給・取得
  • ビザの発給・取得

前科とパスポート取得の関係

まずパスポートとは、海外出張や海外旅行にかならず必要なものです。
自国から出国する際の「旅券」にあたるもので、ない場合は海外渡航ができません。

そこでパスポートの取得と前科の関係ですが、旅券法にはパスポート取得の制限について規定されています。
一部抜粋して見てみましょう。

 渡航先に施行されている法規によりその国に入ることを認められない者
 死刑、無期若しくは長期二年以上の刑に当たる罪につき訴追されている者又はこれらの罪を犯した疑いにより逮捕状、こう引状、こう留状若しくは鑑定留置状が発せられている旨が関係機関から外務大臣に通報されている者
 禁以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又は執行を受けることがなくなるまでの者
(一部抜粋)

旅券法13条1項

1号は、渡航予定の国で犯罪をしたケースなどが該当します。

2号は、死刑・無期懲役などが法定刑に含まれる重い罪で検察官に訴追されている者や、重い罪を犯した疑いで身体拘束を予定されている者が、海外に逃亡しないよう通報されているようなケースなどです。

また3号は、禁固以上の重い刑に処せられており、刑務所からまだ出所していない者や、執行猶予がついたがまだ猶予期間を満了していない状態の者のことをさしています。

その他4号以降では、不正にパスポートを取得したことのある者や、旅券を偽造し、公文書偽造罪などの刑に処せられた者について制限しています。

上記に該当しない、単に前科があるというのみですと、基本的にパスポート取得は可能です。

前科とビザ取得の関係

ビザの取得は不要なこともある

まずビザ(査証)の取得が必要かどうかということですが、基本的に90日以内の滞在であれば必要ありません。
なお、日本は各国からの信頼が厚い国でもあり、2020年時点で、199カ国が日本からの入国の際ビザの取得を不要としています。

ビザ(査証)とは、日本人が外国へ入国する際に、その国が入国させても問題がないかどうかを事前に審査したうえで発行する証明書です。

そこで前科・前歴とビザとの関係ですが、ビザが不要だったとしても、渡航先の空港では入国審査があります。
渡航先の入国基準によっては、入国審査官に質問等をされ、入国拒否される可能性も考えられます。

入国許可の基準は各国で異なります。

また、海外出張を予定している方は、まずは日本にある大使館にビザの要否等を確認するようにしましょう。
確認先は、海外出張などで入国を予定している国の大使館です。

渡米は注意が必要?

アメリカへの海外出張を予定している、前科前歴のある方は注意が必要です。
アメリカはビザ取得を必須としている国ではありませんが、逮捕歴のある方は有罪判決の有無にかかわらずビザ取得が必要です。
大使館にて、渡米資格を確認されることになります。
ビザ申請の際には、前科のある方は判決謄本や裁判記録、逮捕歴のある方は、捜査関連書類を提出する必要が出てくるでしょう。
また、アメリカやカナダでは、薬物犯罪で前科や前歴のある人には厳しい判断がなされます。
審査には数週間から数ヶ月かかることもありますので、渡米の際は余裕をもって準備しましょう。

ESTA(エスタ)とは?前科があっても申請できる?

ESTA(エスタ)とは?

ESTA(エスタ)とは、短期のアメリカ渡航の際に必要となる入国審査制度です。
2009年より、米国国土安全保障省によって義務化されるようになりました。
短期滞在(90日以内)の場合、ビザの取得が免除されてもESTAの申請が必要になります。

前述のとおり、前科前歴のある方がアメリカへ海外出張などする際は、そもそもビザの発給・取得が必要です。
まずは、アメリカ大使館に問い合わせをしてください。

ESTAについても、前科前歴のある方の審査は厳しくなっています。
ESTAの申請が制限される内容については以下のとおりです。

  • 殺人、過失致死、重大な暴行、誘拐、複数回におよぶ悪質な交通違反などをした場合
  • 放火、強盗、盗難、詐欺など生命・身体・財産に危険を生じさせる犯罪をした場合
  • 多額の脱税、贈収賄、偽証、薬物犯罪などをした場合

なお、交通違反であっても、過失致死など重大な加害行為でなければ上記に該当しないことがあります。
また、他人に危害を与えない個人のスピード違反などは、「重大な過失」にあたらない場合もあります。

その他、薬物犯罪や暴行罪など、逮捕歴のある場合も含めて正直に回答・申請しなければなりません。
嘘の申請をすると「虚偽申請」となり、二度と審査が通らなくなる可能性もあります。

前科をつけたくない・海外出張でお困りの方は弁護士へ相談ください

atom bengoshi 11

この記事を読まれている方の中には、現時点で前科はついていないが逮捕を恐れている方、在宅捜査などの最中で前科がつくことを恐れている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
また、警察もしくは検察の捜査中でありながら、海外出張を控えている方もいらっしゃるかもしれません。

前科をつけないためには、弁護士の力を借りる必要があります。
弁護士に刑事弁護を依頼した場合、前科をつけないための活動をすることが可能です。

この章ではまず、前科がもたらす不利益について解説しましょう。

海外出張以外でも前科は今後が心配

海外出張以外でも、普段の生活において、前科がつくと今後の生活に制限が出ることがあります。
前科がもたらす不利益・影響について以下3つにまとめてみました。

前科がつくと以下のことで困ります
  • 仕事(職場)で前科が影響する可能性がある
  • 国家資格や国家公務員試験で制限を受ける
  • その他社会的な制裁を受ける可能性がある

仕事(職場)で前科が影響する可能性がある

就職面接をする際、使用する履歴書に「賞罰」欄がない、もしくは申告を求められなかった場合は、基本的に前科を申告する必要はありません。
前科を記入する欄は賞罰の「罰」の部分です。

しかし、就職時には前科・前歴がなかったとしても、入社後に有罪判決を受けた場合、解雇事由に該当してしまうこともあり、海外出張以前に職を失う可能性があるのです。

労働基準法では、常時10人以上の労働者を使用する事業所に、「就業規則」の作成・届け出義務が課されています。

就業規則の記載事項には「退職に関する事項」があり、そのなかには解雇に関する事由が含まれています。

就業規則に、「有罪判決を受けた者」や「罰金刑以上の刑に処せられた者」は解雇事由にあたるとする旨、あらかじめ記載している事業所は多くあります。
そのため、せっかく入社した会社の職を失ってしまう可能性が考えられるでしょう。

国家資格や国家公務員試験で制限を受ける

たとえば弁護士ですと、弁護士法7条に、禁錮以上の刑に処せられた者は弁護士資格をもたない旨規定しています。
前歴は資格要件に引っかかりませんが、前科があると試験を受けても弁護士になることができない場合があります。

なお、同じ国家資格でも、すべてが同じ制限を受けるわけではありません。
禁固以上の刑が確定後、刑の執行を終えるか、執行を受けることがなくなってから3年~5年を経過すれば資格を持てるものもあります。

また、公務員試験においても前科は影響を及ぼします。
国家公務員、地方公務員ともに、禁固刑以上の前科は欠格事由となるのです。
ただし、刑の執行を終えてから、再度試験に合格した場合は資格取得が可能です。

その他社会的な制裁を受けてしまう可能性がある

有罪判決を受けた前科者は、インターネットのニュース記事や、他人のブログなどに実名が残ることがあります。

逮捕時にひとたびニュースになってしまった際は、長期間にわたって氏名などが掲載されることもあるでしょう。
有罪判決後、刑の執行を終えた後であっても、何かとネット上で話題にされることも珍しくありません。

弁護士だけができる前科をつけない活動

前科をつけないためには、検察官に起訴されないようにすることが必要です。
起訴されると99%以上の割合で有罪になってしまうため、不起訴を目指す活動は、被疑者にとって非常に重要なものとなります。
よって弁護士は、起訴されない、不起訴処分になりうる要素を検討し、検察官にアピールしていくのです。

不起訴に向けた活動は、検察官の終局処分前に速やかにおこなう必要があります。
身柄事件の場合は制限時間も発生するため、早期の準備が必要です。

被害者がいる事件では、示談が出来るかどうかの交渉期間も必要です。

身柄事件の場合、検察官は勾留満期の数日前に処分を決めます。
よって、時間が限られている身柄事件では、特に刑事事件のスケジュールを把握することが重要です。

前科を付けたくない方は、まずは弁護士による法律相談を利用しましょう。