第二東京弁護士会所属。刑事事件で逮捕されてしまっても前科をつけずに解決できる方法があります。
「刑事事件 法律Know」では、逮捕や前科を回避する方法、逮捕後すぐに釈放されるためにできることを詳しく解説しています。
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泥酔状態の被害者と性交したら罪になる?性犯罪の要件・逮捕・対策を解説
2023年7月13日以降の事件は「不同意性交等罪」に問われます。
泥酔した女性(男性)と性交した場合、性犯罪に該当することがあります。
性犯罪とは、強制わいせつ罪や強制性交等罪(旧強姦罪)はじめ、それに類する犯罪です。
相手(被害者)が泥酔状態のときに性交してしまった場合に考えられる、罪の内容・その後の処分などについて解説していきましょう。
当記事にたどり着いた方は、以下についてお困りではないでしょうか?
- 相手(被害者)が泥酔状態で性交。同意を得ていないと罪になる?
- 相手(被害者)は泥酔状態だったが暴行など乱暴なことはしていない。罪になる?
- 泥酔の相手と性交し、すでに警察が介入している。至急対応を急ぎたい。
性犯罪とひとくちにいっても、各犯罪によって構成要件(成立要件)は異なります。
また、法定刑やその後の処分・前科がつく可能性などは被害者対応により変わってくる可能性があります。
刑事事件に発展しそう・刑事事件に発展した場合には、まずは弁護士相談を利用することが先決です。
- 泥酔状態の相手と性交したら何罪になるのかがわかる
- 泥酔状態の性交で逮捕される可能性・逮捕のきっかけ・流れがわかる
- 泥酔状態の性交を弁護士相談したあとの流れ・メリットがわかる
目次
泥酔の被害者と性交したら罪になる可能性が高い
まずは、泥酔状態の相手と同意なく性交した場合に、罪になる可能性が高い理由について言及します。
大前提として、同意があると客観的に認められる場合は罪になりません。
泥酔の被害者と性交したら罪になりやすい理由
- 刑法の改正がおこなわれ、性犯罪の対象が広くなった
- 準強制性交等罪であれば、被害者が泥酔状態というだけで罪になりうる
- 完全な性行為でなくとも、それ以外の類似行為で罪になりうる
それでは各章において、順番に解説していきましょう。
強制性交等罪にあたるケース
泥酔状態の被害者と性交した場合、暴行や脅迫があれば「強制性交等罪」に該当する可能性があります。
(強制性交等)第百七十七条
十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。
刑法第177条
強制性交等罪の要件を箇条書きにすると、以下のとおりです。
- 暴行または脅迫を用いた
- 性交・肛門性交・口腔性交(オーラルセックス)が対象
- 暴行・脅迫要件は13歳以上の者に対してのみ・13歳未満に対しては暴行・脅迫がなくても罪
法定刑は5年以上の有期懲役です。
罰金刑は用意されていません。
被害者が13歳未満だった場合は、たとえ同意があったとしても罪になる点についても注意が必要です。
13歳という基準は、現在の日本の「性交同意年齢」です。
ここで、旧強姦罪との比較についてご説明しましょう。
平成29年(2017年)、約110年ぶりに刑法の性犯罪に関する規定が大改正されました。
以前は強姦罪として規定されていたものが、この章でご説明する「強制性交等罪」に置きかえられたのです。
改正されたのは罪名だけではありません。
おもな改正点は以下のとおりです。
強姦罪から強制性交等罪(旧強姦罪)へ
- 被害者の対象が「女性のみ」だったのが、性別を問わなくなった
- 法定刑が3年から5年に引き上げられた
- 親告罪だったのが非親告罪になった
- 監護者にかかる「監護者強制性交等罪」などもあわせて新設された
改正後は女性の貞操だけに限らず、男性も含めた「個人の性的自由」を保護法益としています。
泥酔状態の相手が女性であろうと男性であろうと、暴行・脅迫を用いて性交等に及んだのであれば、強制性交等罪の厳しい罰を受ける可能性があるということです。
では、暴行や脅迫は用いていないが、相手が泥酔していた場合の性交等はどうでしょうか。
次章で解説いたします。
準強制性交等罪にあたるケース
被害者が泥酔しており、正常な判断ができない状態で性交に及んだ場合、準強制性交等罪にあたる可能性があります。
強制性交等罪と準強制性交等罪の違いは、準強制性交等罪においては暴行・脅迫を要件としていない点です。
つまり、相手が泥酔しているのをいいことに性交等におよんだ場合、それだけで罪になる可能性があるということです。
なお、準強制性交等罪においても同意がある場合は罪になりません。
しかし同意があったかなかったかの見極めは非常に難しく、裁判でも争われることがあります。
先述の強制性交等罪も、こちらで説明する準強制性交等罪においても、「個人の性的自由の妨害」である点は共通しています。
以下は、準強制わいせつ罪および準強制性交等罪について規定している条文です。
(準強制わいせつ及び準強制性交等)第百七十八条
人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、第百七十六条の例による。
2 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、性交等をした者は、前条の例による。
刑法第178条
心神喪失とは、正常な判断能力を失っていた状態をいい、抗拒不能とは、抵抗できない状態であったことをいいます。
「泥酔」は、心神喪失にあたります。
また、準強制性交等罪には「準」とついているため、強制性交等罪よりも軽い犯罪だと思われがちです。
しかし、単に要件が異なっているのみで、法定刑は強制性交等罪と変わりません。
強制性交等罪も準強制性交等罪も、厳しい処分が予想される犯罪です。
強制わいせつ罪にあたるケース
被害者が泥酔状態だったけれども、性交まではしていないという場合の例です。
強制わいせつ罪は、強制性交等罪などの「性交等」が問題になるのではなく、「わいせつ行為」が問題となる犯罪です。
なお、暴行・脅迫の要件や、性的同意年齢については強制性交等罪と共通しています。
(強制わいせつ)第百七十六条
十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。
刑法第176条
わいせつ行為とは、性交等以外の性的な意味をもった一定の行為をいいます。
以下のような例は、「わいせつ行為」にあたる可能性が高いです。
- 無理やりキスをする
- 衣服の中に無理やり手を入れる
- 陰部や乳房を触る
泥酔の被害者と性交したら逮捕される?
強制性交等罪(旧強姦罪)や、準強制性交等罪(旧準強姦罪)の疑いがあれば、被害者からの訴えがなくても逮捕されることがあります。
先述のとおり、刑法改正により強制性交等罪・準強制性交等罪は非親告罪となりました。
被害者からの告訴がなくても、検察官が起訴できる犯罪になったということです。
では、被害者からの訴えがない場合、どのような経緯で逮捕にいたるのでしょうか?
逮捕のきっかけ
強制性交等罪・準強制性交等罪で逮捕されるきっかけ
- 路上などで行為に及んだ場合、防犯カメラから犯人が特定されることがある
- 被害者本人が被害届を出したことにより、捜査から逮捕にいたることがある
被害届は、被害の客観的事実を証明する重要な書類です。
被害届を受理した警察官に、捜査義務がかならず課されるわけではありませんが、捜査の対象になることは間違いありません。
なお、告訴は被害届と違い、告訴を受けた捜査機関にはかならず捜査義務が発生します。
強制性交等罪などが非親告罪だった時代は、告訴のない被害は、被害届があっても捜査の対象にはされなかったということです。
強制性交等罪や準強制性交等罪で逮捕されたらどうなる?
事件が発覚した場合は、逮捕される可能性があります。
泥酔した被害者と性交等をした疑いのある被疑者は、犯行後逃亡するおそれがあると考えられるためです。
また、被害者に接近し、犯行をなかったことにするよう脅すようなことも考えられます。
これらの要素は、逮捕要件を満たすと判断され、事件発覚後逮捕手続がとられてしまう可能性が高いのです。
さらに逮捕後は「勾留」といって、検察官の判断により、起訴・不起訴の判断が下るまで最大20日間身柄拘束されてしまう可能性があります。
最大20日間というのは、最初の勾留が10日間、その後延長が必要と判断された場合は、最長でさらに10日間の勾留延長がつくからです。
その後釈放される要素がない限り、身柄拘束されたまま公判手続きまで進むこともあるでしょう。
強制性交等罪・準強制性交等罪は罰金刑がないため、起訴後は正式裁判によって裁かれることになります。
正式裁判は公開裁判ともいわれ、一般人の傍聴が可能です。
強制性交等罪などの犯罪は、数ある犯罪の中でも重い部類に該当します。
次章では、被疑者・被告人に向けた刑事事件の対策についてお話ししましょう。
泥酔で性交は危険|早めに弁護士相談しましょう
強制性交等罪や準強制性交等罪は、早期の弁護士相談・依頼が必須です。
その理由は以下のとおりです。
- 刑事事件はスピーディーに進行する
- 性犯罪においては示談が重要
強制性交等罪には執行猶予がつかない?
強制性交等罪の法定刑は、5年以上の有期懲役刑です。
じつは執行猶予は、懲役刑では3年以下の場合しかつきません。
強制性交等罪などの罪で逮捕・勾留されると、あっという間に起訴されてしまう可能性があります。
その場合、実刑判決となる可能性が高いでしょう。
強制性交等罪などに執行猶予が原則つかないという理由もありますが、これら犯罪は、刑法改正による厳罰化の背景を受け大変厳しくなっているのです。
そこで実刑判決を回避するために、以下の対策が非常に重要となります。
強制性交等罪など性犯罪で厳罰化を回避するには?
- 起訴される前に被害者と示談する
- 捜査期間に犯罪事実が発覚していない場合、自首を検討する
上記重要な対策については、次章で詳しくご説明します。
なお、自首と減刑については、関連記事『自首で減刑されるケースとは?自首と減刑の意味・タイミングなども解説』を参考にしてください。
弁護士依頼・被害者との示談で処分は変わる
強制性交等罪など、性犯罪の被疑者が犯罪事実を認めている場合、ただちに被害者との示談交渉が必要といえるでしょう。
強制性交等罪などが親告罪でなくとも、示談の成立は減軽(減刑)に繋がることが多いです。
かりに起訴前に示談が成立すれば、不起訴処分を獲得できるケースもあります。
不起訴処分となれば事件は終了し、前科もつきません。
身柄拘束中である場合は、ただちに釈放されます。
不起訴処分には、以下3つの種類があります。
- 嫌疑なし
- 嫌疑不十分
- 起訴猶予
このうち3の起訴猶予に関しては、被疑事実が明白ではあるが、検察官が起訴しないと判断した処分です。
起訴猶予で考慮される条件をまとめると、以下のとおりです。
起訴猶予で考慮される条件
- 被疑者の性格や年齢・生活環境
- 犯罪の軽重や犯行状況
- 被疑者から被害者に謝罪はあったか
- 被害者との示談が成立し、被害者から「許し」を得ているか
また、弁護士を介して被害届の取下げを交渉することも可能です。
被害届の取り下げに応じてもらえた場合は、間接的に許しを得たと判断されることもあります。
被害者との接触から示談交渉・示談成立にいたっては、弁護士を介して積極的におこないましょう。
今後の人生が左右される可能性が高いです。
同意があったと無罪主張する場合は?
泥酔している相手と性交したが、同意があったと主張する場合についても弁護士に相談しましょう。
否認事件においては、以下のケースが考えられます。
- 被害者の人違いだった
- 被害者が被害を受けたと誤信している
- 性交等の前に、確実に相手の同意を得たという自信・証拠がある
このような事件の場合、弁護士は客観的証拠や事実との食い違いなどを検討し、弁護方針を固めていきます。
自白事件・否認事件どちらにおいても、早期の弁護士相談を検討しましょう。
暴行または脅迫の内容は、「犯行を著しく困難にする程度の暴行・脅迫」が必要であるとされています。