岡野武志

第二東京弁護士会所属。刑事事件で逮捕されてしまっても前科をつけずに解決できる方法があります。

「刑事事件 法律Know」では、逮捕や前科を回避する方法、逮捕後すぐに釈放されるためにできることを詳しく解説しています。

被害者との示談で刑事処分を軽くしたい、前科をつけずに事件を解決したいという相談は、アトム法律事務所にお電話ください。

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自首で減刑されるケースとは?自首と減刑の意味・タイミングなども解説

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自首減刑について解説しています。

刑を軽くすることについて、ただしくは「減軽」といいます。
ただ、一般的な表現として「減刑」と表記されることも多いため、当記事においては「減刑」を使用し解説していきましょう。

この記事にたどり着いた方は、以下のような状況でお困りではないでしょうか?

  • 犯罪をしたが自首を迷っている・・・逮捕されてしまうのか
  • 自首したらかならず減刑されるのか
  • 自首は親告罪でもできるのか
  • 自首と被害者対応について誰かに相談したい

当記事における「自首」の概念は、あくまで法律上の自首です。
警察の捜査中に被疑者が「自白」しても、それは自首にはあたりません。

まずは自首・減刑について法律上(条文上)の根拠をあきらかにした上で、自首が認められるケース・認められないケースなどについて解説していきましょう。

自首についての裁判例などもご紹介していきます。

なお、自首について急いでいる方は、取り急ぎ弁護士相談をされることをおすすめします。
弁護士は、相談者・依頼者から聞いた内容・個人情報などを、捜査機関などの外部にもらすことはありません。

  • 自首と減刑の意味・方法がわかる
  • 自首で減刑されるケースや裁判例がわかる
  • 自首や被害者対応に向けた最善の方法がわかる

自首すると減刑される?

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自首とは

自首すると減刑される可能性があります。
以下、根拠条文を確認してみましょう。

(自首等)第四十二条 

罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる

 告訴がなければ公訴を提起することができない罪について、告訴をすることができる者に対して自己の犯罪事実を告げ、その措置にゆだねたときも、前項と同様とする。

刑法第42条

法律上の「自首」とは、犯罪事実があきらかになる前に捜査期間に申告することです。

注意しなければならないのは、あくまで減刑することができるということです。

かならず減刑されるわけではありません。

条文上はあくまで、有罪判決になる前の減刑を認めています。

有罪判決とは、検察官の起訴後、裁判所が示す判断のことです。

つまり減刑は、刑罰確定前に考慮される要素ということになります。

なお同条第2項により、告訴を必要とする親告罪についても、告訴権者に対して自首できる旨規定されています。

親告罪とは、検察官が起訴するにあたって、告訴権者からの告訴を必要とする犯罪です。

自首が逮捕回避につながることはある?

法律を根拠に、自首が逮捕回避や勾留回避につながるわけではありません。

ただし自首することによって、逮捕の必要性がないと判断されることはあります。

逮捕には要件があり、そのうちの「罪証隠滅」・「逃亡」の可能性がないとされる場合があるからです。

逮捕の要件
  1. 嫌疑の相当性
    その犯罪をしたことが十分に疑われる
  2. 逮捕の必要性
    罪証隠滅・逃亡のおそれがある

減刑とは

では、減刑は具体的にどのようにされるのでしょうか。

減刑の方法については、以下に規定されています。

(法律上の減軽の方法)第六十八条 

法律上刑を減軽すべき一個又は二個以上の事由があるときは、次の例による。

 死刑を減軽するときは、無期の懲役若しくは禁錮又は十年以上の懲役若しくは禁錮とする。

 無期の懲役又は禁錮を減軽するときは、七年以上の有期の懲役又は禁錮とする。

 有期の懲役又は禁錮を減軽するときは、その長期及び短期の二分の一を減ずる。

 罰金を減軽するときは、その多額及び寡額の二分の一を減ずる。

 拘留を減軽するときは、その長期の二分の一を減ずる。

 科料を減軽するときは、その多額の二分の一を減ずる。

刑法第68条

犯罪の情状を酌量すべき事由が認められる場合には、上記の方法で減刑されます。

自首で減刑されるケース・自首にならないケース

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自首の4要件と減刑される条件

自首で減刑されるためには、そもそも自首が有効に成立したことが前提です。
自首の要件は以下のとおりです。

自首の4要件
  1. 犯人が自発的に、自己の犯罪事実を申告すること
  2. 捜査機関に対してすること
  3. その犯罪について刑事処分を求めること
  4. 犯罪事実が発覚する前であること

これらすべてを満たした場合でなければ、自首として取り扱ってくれません。

更に以下の条件がそろうと、減刑の可能性があります。

  • 自首の要件を満たした(自首の有効性
  • 自首の事実があった上で裁判官が減刑を決めた(裁判官の裁量

以下、自首の要件について少し触れておきましょう。

自首の要件1について、犯人が自らおこなうことが原則ですが、他人を介してした自首も有効であるとされています。

ただし、同時にほかの3要件を満たす必要があります。

昭和23年2月18日の最高裁判決では、殺人事件について、他人を介した自首を有効なものであるとしています。
同時に、自首についての事実を認めつつも、当事件では減刑にはいたっていません。

くり返しになりますが、あくまで自首がかならず減刑に直結するわけではないのです。

要件2について、刑事訴訟法では、自首は司法警察員(巡査部長以上)に対してすることと規定されています。

しかし実際には、「巡査」に申告したとしても、その後内部処理がなされます。

そのため、交番の巡査に対して自首しても問題ありません。

要件4について、犯罪事実の発覚前に申告したことがポイントです。
たとえば犯罪後、警察に疑われて任意出頭の要請があったとします。

そのタイミングで犯罪事実を申告したとしても、法律上の「自首」にはあたらないのです。

自首のタイミングについて、以下の裁判例をご紹介します。
自首が有効に成立したかそうでないかが争点となった事件です。

自首の有効性が認められ、減刑された事例

妻と被害者男性の不倫現場を目撃した被告人が、被害者男性を刺殺した事件です。
原判決では自首について考慮されておらず、被告人の量刑が重すぎて不当だと弁護士が控訴しました。

自首にいたるまでの流れは以下のとおりです。

被告人は、自首をしようと決意したうえ交番に赴いていました。
交番に到着したのは、犯行後わずか10分ほど経過後だったとのことです。
しかし交番の警察官が不在だったため、被告人は近場の公衆電話から110番通報をしました。

一方で被告人の妻も110番通報しており、妻の通報が受理された時刻は、被告人の110番通報よりも2分早かったそうです。
しかし実際には、被告人の妻からの通報より先に、被告人は最初の交番に足を運んでいるのです。

原審では、自首の事実については考慮されませんでした。

その後高裁判決では、当該自首について、単なる時間的前後関係だけにこだわらず実質的にとらえられるべきだと判断しました。

犯人が、第一に自発的に犯罪の申告をしようとしていたこと、申告して身柄の処分をゆだねる意思があったとされていたことなどから、当該自首は有効であるとされたのです。

さらにこの事件では、減刑が認められました。

東京高裁平成7年(う)1228判決

この裁判例で下された量刑・減刑要素は、以下のとおりです。
執行猶予をつける余地まではないものの、原審の判決は重すぎると判断されました。


被告人が責められるべき要素

  • 被害者と平和的解決の道を求めなかったこと・そうした努力をせずいきなり犯行に及んだこと

被告人の酌むべき情状

  • 刺殺する意図をもって犯行現場に赴いたわけではなく、とっさの殺害だったこと
  • 経緯・動機が被告人にとっても酷なものであること
  • 犯行後まもなく我に返り、自己の犯行を悔いていること
  • 自首し、反省していると認められること
  • 前科もなく仕事も真面目であったこと
  • 私生活でも夫として、父親として真面目な生活を送ってきたこと

犯行にいたる経緯・犯行状況・犯行後の状況(自首など)が考慮された判決といえるでしょう。

自首にならないケースとは

この章では、自首にならないケースについてまとめています。

自首にならない例
  • 犯罪事実及び犯人が、すでに捜査機関によって特定されている
  • 犯人が自発的にした申告ではなく、任意捜査を求められた時点で申告した
  • 虚偽の申告をした

考えられるケースとしては、痴漢容疑で事情聴取後現場から逃げてしまったケースです。

いくら逃げたあとに後悔して戻ってきても、犯人が特定されており、犯罪事実があきらかになっている可能性が高いからです。

また、犯罪事実について一部のみを申告したり、虚偽申告をしたりした場合は自首とみなされません。

そのような場合において、減刑要素とされることはないでしょう。

自首で減刑を望む方は弁護士へ

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自首は弁護士に同行してもらいましょう

自首の方法は大きく2つです。

  • 自分で出頭する
  • 弁護士に同行してもらう

また、形式面では以下のように規定されています。

第二百四十一条 

告訴又は告発は、書面又は口頭で検察官又は司法警察員にこれをしなければならない。

刑事訴訟法第241条

この条文は「自首」についても準用されています(刑事訴訟法第245条)。

自首は、たった1人でしかできないと思っている方もいるのではないでしょうか。

自首は弁護士同行が可能です。

また、たった1人で自首する際に、書面を準備する方はあまりいないかと思います。
たしかに自首は口頭でも可能ですが、弁護士同行であれば基本的に書面でおこない、書面であれば証拠として残すことが可能です。

何より、弁護士同行によって落ち着いて犯罪と向き合えるというメリットも生まれるでしょう。
弁護士同行であれば、反省の態度を、捜査機関にしっかり伝ることが容易になります。

弁護士依頼で被害者対応もスムーズに

減刑や逮捕回避には、自首が判断要素となる可能性についてはお話ししました。

実は、減刑(減軽)の条件・要素は自首だけではありません。

被害者のいる犯罪では、被害者との示談がとりわけ重要になってくるのです。

示談とは

いくら自首が有効に成立しても、示談の成立していない事件では厳しい判決がくだされることがあります。

もっともスムーズ・かつ安心な方法は、逮捕前に弁護士に相談しておくことです。
そうすることによって、弁護士同行の自首に加え、早期に被害者対応含む事件の対策を立てることが可能となります。