第二東京弁護士会所属。刑事事件で逮捕されてしまっても前科をつけずに解決できる方法があります。
「刑事事件 法律Know」では、逮捕や前科を回避する方法、逮捕後すぐに釈放されるためにできることを詳しく解説しています。
被害者との示談で刑事処分を軽くしたい、前科をつけずに事件を解決したいという相談は、アトム法律事務所にお電話ください。
アトムは夜間土日も受け付けの相談窓口で刑事事件のお悩みにスピーディーに対応いたします。
死亡事故の慰謝料は?労災の刑事責任・損害賠償・慰謝料計算方法・交通死亡事故も
- 死亡事故だと慰謝料はいくら?
- 労災について、会社の責任は?
このような疑問やお悩みをかかえている方へ。
経験豊富な弁護士が、あなたのお悩みや疑問を解決する手段をご案内します。
交通死亡事故については、こちらのページ(「死亡事故の慰謝料はいくら?高齢者のひき逃げなどの相場・払えないとどうなる?」)をご覧ください。
目次
会社で労災死亡事故…慰謝料と損害賠償の違いは?
労災死亡事故とは?(典型事例あり)
「労災」とは?
労災とは、労働災害の略です。
「労働災害」は、以下の①②にあてはまるものをいいます。
労働災害
- ① 労働者の就業に係る建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等により、または作業行動その他業務に起因して、
- ② 労働者が負傷し、疾病にかかり、または死亡することをいう。
労働安全衛生法第2条第1号参照。
労災のなかでも、今回は「死亡事故」についてまとめます。
労災死亡事故の「典型事例」は?
労災死亡事故の典型事例としては、
- 屋根の塗装作業中に、転落して死亡
- ベルトコンベヤーに、巻き込まれて死亡
- ピザの宅配中に、交通事故で死亡
といったものです。
業種 | 死亡者数 | 比率 |
---|---|---|
全産業 | 978 | 100.0% |
①製造業 | 160 | 16.4% |
②建設業 | 323 | 33.0% |
③陸上貨物運送事業 | 137 | 14.0% |
④第三次産業 | 244 | 24.9% |
厚生労働省『職場のあんぜんサイト』(http://anzeninfo.mhlw.go.jp/user/anzen/tok/anst00.htm)より抜粋・編集。
第三次産業とは、次のような産業をあらわします。
第三次産業・内訳
商業、金融・広告、通信、保健衛生業、接客・娯楽、清掃・と畜、警備業、その他。
死亡事故の原因としては、「墜落・転落」、「はさまれ・巻き込まれ」、「交通事故(道路)」などが多くなっています。
墜落 転落 | はさまれ 巻き込まれ | 交通事故 (道路) | 合計 |
---|---|---|---|
258 | 140 | 202 | 978 |
厚生労働省『職場のあんぜんサイト』(http://anzeninfo.mhlw.go.jp/user/anzen/tok/anst00.htm)より抜粋・編集した。
労災の死亡事故が多い業種・死亡事故の類型をまとめました。
墜落 転落 | はさまれ 巻き込まれ | 交通事故 (道路) | 合計 | |
---|---|---|---|---|
製造業 | 28 | 51 | 10 | 160 |
建設業 | 135 | 28 | 50 | 323 |
陸上貨物 運送事業 | 19 | 19 | 57 | 137 |
第三次産業 | 56 | 21 | 79 | 244 |
厚生労働省『職場のあんぜんサイト』(http://anzeninfo.mhlw.go.jp/user/anzen/tok/anst00.htm)より抜粋・編集。
この交通事故は、業務中の交通事故もあれば、通勤途中の交通事故も含みます。
業務災害 | 通勤災害 |
---|---|
業務中の交通事故 | 通勤中の交通事故 |
業務中の災害は「業務災害」、通勤途中の災害は「通勤災害」と呼ばれています。
交通労働災害は意外と多い?
交通死亡事故は、労災の約2割を占めています。
これらの死亡事故は、トラック・バス・タクシーのドライバーに限られません。
移動・送迎・配達の途中で交通事故になるケースも多く、交通労働災害の約6割にのぼります。
交通事故の労災事例
- 介護サービスの利用者宅から事務所へ移動中
- 建設現場への移動中
- 介護サービス利用者の送迎中
- 新聞配達をしているとき
出典:厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11300000-Roudoukijunkyokuanzeneiseibu/0000102734.pdf
労災保険と損害賠償
労働災害の場合、「労災保険(労働者災害補償保険)」に加入していれば、保険金でまかなえる部分も多いです。
労災保険がカバーできる範囲
労災保険の対象
- 治療費
- 休業損害の一部
- 死亡逸失利益
- 葬儀費用
- 介護費用
労災保険の対象外
- 慰謝料など
労働者災害補償保険法第12条の8第1項参照。
休業損害以外の項目についても、全額カバーできない場合があります。
しかし、労災保険がカバーできない範囲もあります。
労災保険は、労災に遭った被害者に最低限の補償を与えることを意図した保険制度です。
「慰謝料」や、「休業損害」の一部など、補償されない部分もあります。
また、「逸失利益」についても、場合によっては、全額補償されないことがあります。
慰謝料
精神的損害に対する賠償金のこと。
休業損害
事故などで仕事を休んだために得られなかった給与やその期間の減収分のこと。
逸失利益
不法行為などがなければ本来得られたであろう利益のこと。
「得べかりし利益」「消極的損害」ともいわれる。
(例)定年までのお給料
労災保険で補償されない損害については、
- 会社が、契約上の安全配慮義務に違反した
- 会社が、不法行為責任を負う
といえる場合、会社が民法上の損害賠償責任を負う可能性があります。
会社の責任
- 契約責任(安全配慮義務の違反)
- 不法行為責任
会社への損害賠償請求が認められるからといって、利益の二重取りは許されていません。
労災保険と損害賠償金の二重取りを防ぐために、利益調整がおこなわれます。
会社の損害賠償金から、労災保険で支給された金額が差し引かれて、最終的な賠償金額が決定されます。
慰謝料と損害賠償の違いは?
「損害賠償」=「慰謝料」ととらえている方も多くおられますが、厳密にいうと両者の意味は違います。
「慰謝料」は、損害賠償の一種です。
損害には、精神的損害と財産的損害があります。
「慰謝料」は、精神的苦痛・ショックに対する損害賠償金のことです。
精神的損害 | 財産的損害 |
---|---|
慰謝料 ※精神的苦痛に対して支払われる | ・逸失利益 ・葬儀費用 ・死亡までの入院費 etc |
損害賠償を請求されるとしたら、次のようなものが考えられます。
損害まとめ
- 死亡慰謝料
家族に対する役割によって金額が変わる - 逸失利益
基礎収入額 ×(1-生活費控除率)× ライプニッツ係数* - 弁護士費用
裁判の弁護士費用(相当と認められる範囲内の弁護士費用**)
* 就労可能年数に対応するライプニッツ係数のこと。
** 最一小判昭和44・2・27民集23-2-441では、不法行為の被害者が、自分の権利を守るために訴えを提起することを余儀なくされ、訴訟追行を弁護士に委任した場合、その弁護士費用は事案の難易に、請求額、認容された額その他諸般の事情も加味して、相当な範囲で「損害」賠償の対象になると示されている。
【金額】労災死亡事故の慰謝料は?相場は?
計算の方法は?
死亡慰謝料は?算定基準は2000万円超え?
労災死亡事故の慰謝料算定の目安になる基準は、次のとおりです。
この基準は、交通事故の死亡慰謝料を算定するときに用いられる基準で、「弁護士基準」、「裁判基準」などと呼ばれています。
労災の死亡事故が通勤労災の場合には、ダイレクトにこの基準を用いることになります。
しかし、業務労災の場合でも、目安として役立つ数値です。
被害者 | 慰謝料 |
---|---|
一家の支柱 | 2800万 |
一家の支柱に準ずる場合 | 2500万 |
そのほか (単身・子ども) | 2000万 ~ 2500万 |
年齢、家族構成、死亡直前の稼働状況などによって、慰謝料は増減します。
家族の生計を立てている人が死亡した場合、2800万円が目安です。
それに準ずる人が死亡すると2500万円、単身者や子どもの場合は2000~2500万円となっています。
逸失利益の計算方法は?
逸失利益の計算方法(一例)は、次のとおりです。
死亡逸失利益の計算方法
基礎収入×(1ー生活費控除率)×ライプニッツ係数
簡単にいうと、生活費をのぞいた前年度の年収に、ライプニッツ係数をかけた金額が逸失利益になります。
たとえば、生活費が収入の30%の場合、
1‐生活費控除率=1‐0.3=0.7
になります。
「ライプニッツ係数」というのは、中間利息を控除するための係数です。
中間利息
将来もらえるお金が、早めに支払われることによる利益。
法律上は「金銭は常に利息を生じるもの」として扱われるため、将来もらえるお金を現時点で請求する際には、その利息部分に対応する金額が控除される。
死亡したことで、被害者側は、将来のお給料を早めに受け取ることになります。
法律的には、「早めにお金を手に入れることには利益がある」と考えられているので、その分の利益(中間利息)を控除するために、「ライプニッツ係数」をかけています。
損害賠償・慰謝料の相場は?
実際の損害賠償(慰謝料を含む)について、実例をいくつか紹介します。
まず、一般的な労災事案についての損害賠償について、いくつか実例をまとめました。
事案 | 死亡慰謝料 | 損害賠償 | |
---|---|---|---|
事案1 | ホテル設備係 疾病 ※アスベスト | 3000 万円 | 約4455 万円 |
事案2 | うつで自殺 ※不正行為 の強要 | 3300 万円 | 約3125 万円 |
事案3 | うつで自殺 ※過労自殺 | 2800 万円 | 約7430 万円 |
事案②については、被害者側に労災遺族年金がおりたり、被害者側に過失が認定されたという事情がありました。
そのため、最終的な会社の賠償責任は、約3125万円にとどまっています。
次に、労災死亡事故の損害賠償について、いくつか実例をまとめました。
事案 | 死亡慰謝料 | 損害賠償 | |
---|---|---|---|
事案1 | 工場 圧死 機械と支柱 | 2500 万円 | 約3070 万円 |
事案2 | 工事現場 圧死 鉄板と土壁 | 3500 万円 | 約4503 万円 |
事案3 | 帰宅途中 自損事故 原付バイク | 2400 万円 | 約7591 万円 |
労災死亡事故の場合、うつなどの症状にくらべて、損害が認定されやすいといえます。
そのため、労災保険でまかなえる部分が増え、損害賠償の額は比較的低額になっています。
会社側のリスク管理とは?
企業側は、多額の損害賠償金を負うリスクがあります。
リスク対策としては、
- ① 企業内の教育体制を強化
- ② 労災保険に上乗せできる保険に加入
といった対策が考えられます。
ただ、②の上乗せ保険の場合にも、保険金がおりないケースがあるので、注意が必要です。
保険金がおりないケース
(例)
- 国の労災保険の給付を受けない
- 酒酔い運転、無免許運転
- 戦争、地震、津波、核燃料
どういったケースで保険が適用されないのかについては、加入している保険ごとに異なります。
詳細は、保険会社の担当者におたずねください。
【刑事事件】慰謝料だけじゃない…死亡事故(労災)の刑事責任とは?
労災の刑事罰は?
労災死亡事故がおきた場合、問題になるのは損害賠償(民事責任)だけではありません。
会社は、刑事責任を負う可能性があります。
会社は、労働安全衛生法の違反や、刑法の業務上過失致死罪に問われる可能性があります。
刑法の業務上過失致死罪だと、1ヵ月以上5年以下の懲役・禁錮または100万円以下の罰金が科せられます。
業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、五年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。
引用元:刑法第211条第1項
労災隠し(ろうさいかくし)は?
労働死亡事故が発生したら、会社は、労働基準監督署に事故を報告しなければなりません。
また、会社は、虚偽の報告をすることも法律上許されません。
もしも、会社が、労災事故を報告しなかったり、虚偽の報告をしたら、「労災隠し」にあたります。
「労災隠し」とは、
- 故意に労働者死傷病報告を提出しないこと
- 虚偽の内容を記載した労働者死傷病報告を所轄労働基準監督署長に提出すること
などをいいます。
労災隠しをすると、
1万円以上50万円以下の罰金
に問われる可能性があります。
交通死亡事故の慰謝料について知りたい方はこちら
労災死亡事故について説明をしてきましたが、交通死亡事故について知りたい方もおられると思います。
交通死亡事故については、こちらのページ(「死亡事故の慰謝料はいくら?高齢者のひき逃げなどの相場・払えないとどうなる?」)
をご覧ください。
死亡事故(刑事事件)に関するお悩みを弁護士に無料相談
スピーディーに弁護士に無料相談したいなら
- 死亡事故の慰謝料は、どのくらい?
- 労災の会社の責任は?
- 死亡事故の刑罰について知りたい・・・
このように刑事事件お悩みは突然起こるもの。
そんなお悩みにスピーディーに対応するために、アトム法律事務所では電話やLINEを窓口として、24時間無料相談の予約を受け付けています。
無料相談について詳しく知りたい方は、無料相談のご案内をご覧ください。
今すぐお電話をしたい方は、フリーダイヤル 0120-631-276 におかけください。
24時間365日、専門スタッフがお電話をお待ちしております。
アトム法律事務所では、主に刑事事件の加害者側、交通事故の被害者側の事件を受任しています。
刑事事件の加害者側の方は、上記の連絡先をご利用ください。
労災事故の被害に遭われた方におかれましては、事案によっては、お引き受けできる場合もあるので、フリーダイヤル0120-465-911にお電話いただければと思います。
平成29年度の死亡災害は、978件発生しています。
全産業のうち、死亡災害発生件数の上位を占めるのが、製造業、建設業、陸上貨物運送事業、第三次産業です。