岡野武志

第二東京弁護士会所属。刑事事件で逮捕されてしまっても前科をつけずに解決できる方法があります。

「刑事事件 法律Know」では、逮捕や前科を回避する方法、逮捕後すぐに釈放されるためにできることを詳しく解説しています。

被害者との示談で刑事処分を軽くしたい、前科をつけずに事件を解決したいという相談は、アトム法律事務所にお電話ください。

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未成年でも児童ポルノで逮捕される?逮捕の要件と刑事事件対策を解説

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当記事は、以下のようなお困り事・心配事を抱えている方に向け解説します。

  • 未成年である自分自身が児童ポルノ禁止法違反に該当する行為をした
  • 未成年の子どものした行為が児童ポルノ禁止法違反かもしれない
  • 未成年でも児童ポルノで逮捕されるのかが気になる
  • 未成年の児童ポルノで逮捕されたらどうなるのか知りたい

自分自身あるいはご家族が犯罪に関与しているかもしれないという状況において、身近な人は大変な不安を抱えていることでしょう。
まずもって、児童ポルノ禁止法違反をした本人が未成年であっても、逮捕されたり処分を受けたりする可能性はあります。

ただし、児童ポルノ禁止法違反行為をした本人が20歳未満の場合、20歳以上と扱いが異なる部分があります。また、児童ポルノ禁止法違反をした場合であっても、自首や示談によって刑の減軽に繋がるケースも考えられます。このことについても詳しく解説していきましょう。

  1. 児童ポルノで逮捕に至る根拠がわかる
  2. 児童ポルノで逮捕されてしまった後の流れがわかる
  3. 児童ポルノで逮捕されない・処分減軽の方法がわかる

未成年が児童ポルノで逮捕される要件

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未成年が児童ポルノで逮捕されてしまう理由・要件は、以下2つの要素を満たしたときです。

  • 児童ポルノ禁止法違反にあたる行為をした
  • 逮捕要件を満たした

まずはこれらの基礎知識について順番に解説します。

児童ポルノ禁止法違反をしたこと

児童ポルノ禁止法違反について確認します。児童ポルノ禁止法違反と呼ばれる犯罪で主なものを挙げてみましょう。

児童ポルノ禁止法とは?

当記事で使用している児童ポルノ禁止法とは、正式名称「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」の事をいいます。同法で規定している「児童」と「児童ポルノ」の概念については、児童ポルノ禁止法第2条に規定されています。

児童・児童ポルノとは?
  • 児童
    18歳未満(17歳以下)の男女
  • 児童ポルノ
    児童を被写体とする写真や動画で、性欲を刺激するもの

被害者が18歳未満であり、かつ加害者が児童ポルノ禁止法違反行為をした場合、罪になる可能性があるということです。

児童ポルノ禁止法違反の行為・罰則

児童ポルノ禁止法違反となる行為について、代表的なものを挙げてみましょう。

  • 児童ポルノの所持
  • 児童ポルノの提供
  • 児童ポルノの陳列
  • 児童ポルノの運搬
  • 児童ポルノの製造
  • 児童ポルノの輸出入

児童ポルノ所持罪は、「性的好奇心を満たす目的」だったことが要件となります。

児童ポルノの単純所持については、被害者が18歳未満であることを知らなかった場合は処罰対象になりません。その他の提供や製造などは、18歳未満であることを知らなかった場合でも原則罪になります。

以下は、各違反行為の罰則です。

児童ポルノの
単純所持
1年以下の懲役又は100万円以下の罰金
児童ポルノの提供3年以下の懲役又は300万円以下の罰金
児童ポルノの陳列5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金
児童ポルノの運搬3年以下の懲役又は300万円以下の罰金
不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した場合は、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金
またはこれを併科
児童ポルノの製造・輸出入3年以下の懲役又は300万円以下の罰金
不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した場合は、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金
またはこれを併科
児童ポルノ禁止法違反第7条

逮捕要件を満たしたこと

犯人が逮捕されるには、逮捕要件を満たしたことが大前提となります。

逮捕の要件

嫌疑の相当性

まずは、犯人であることが明確であるということです。児童ポルノ禁止法違反で逮捕に至るケースとして、被害者児童が親に相談し、発覚するケースがあります。警察が犯人の身元を捜査し、犯人のスマホなどから、大量の児童ポルノ画像の保存が明るみになったという事件もよくあります。

その他、性的犯罪を繰り返していた場合、別罪で逮捕されたことをきっかけにスマホなどを押収され、児童ポルノの所持や製造が発覚するという可能性もあります。

何にせよ、犯人から「物的証拠」が確認された場合は、犯人であると断定されやすいでしょう。

逮捕の必要性

逮捕される要件に、逃亡か証拠隠滅の疑いがあることが挙げられます。

児童ポルノを所持・製造していた犯人が、警察に捜査されることを防ぐためデータを削除する行為は「証拠隠し」の代表例です。また、児童ポルノ禁止法違反の性質上、このような行為をすることが想定されやすく、そもそも逮捕や勾留の可能性は決して低くないと考えられます。

未成年の児童を対象とした犯罪は厳しく捜査される傾向にあり、その他同種事件の余罪についても、徹底して行われる可能性があります。

未成年の場合14歳以上でないと逮捕されない

逮捕は未成年でもされます。ただし未成年の犯人を逮捕する場合、14歳以上であることが要件となります。つまり、犯行時点において14歳未満であった場合は逮捕されないということです。

刑法上、刑事責任を問うことができる年齢は、14歳以上であるとしているのです。

(責任年齢)第四十一条 

十四歳に満たない者の行為は、罰しない。

刑法第41条

ただし14歳未満であっても、「触法少年」として、児童相談所や都道府県知事などが行う措置の対象になります。

未成年が児童ポルノで逮捕される例と逮捕の流れ

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次に、そもそも児童ポルノで逮捕される事例と、実際に未成年が逮捕されてしまった際の流れについて説明します。なお、逮捕の手続きや勾留の手続きについては、基本的に20歳以上と同じです。

児童ポルノ違反になる?ならない?逮捕される事例

児童ポルノ禁止法違反で逮捕される行為については先述の通りですが、事件の態様は様々です。そこでまずは、事例を挙げ、逮捕される行為かどうかについて言及していきましょう。

事例1

故意で、児童ポルノのダウンロードをしました。それのみをもって逮捕されますか?

児童ポルノ所持にあたり逮捕される可能性はあります。児童ポルノの画像や動画をスマホやパソコンに保存しているケースは非常に多いため、家宅捜索の際に明るみになることがあるでしょう。

事例2

18歳未満の児童に、性的な写真を送ってもらうよう何度か依頼しました。以前から複数人に依頼していたことがあるため、いくつかのデータは削除しました。見つかったら逮捕されますか?また、未成年であっても逮捕されたら実名報道されますか?

児童ポルノ製造・所持で逮捕される可能性はあります。データを削除していても、相手の被害者のデータが残っている場合もあります。また、わいせつなやり取りなどを行っていれば、別途条例違反にも該当する可能性があるでしょう。

逮捕時点で特定少年(18歳以上)の場合は実名封報道される可能性があります。

事例3

子ども時代の裸の写真を人に送りました。この画像は児童ポルノにあたりますか?

基本的には児童ポルノにあたりません。ただし、不特定多数に送ったり、相手が性的好奇心を満たすために所持していたのであれば違法となる可能性があります。

事例4

以前、児童ポルノの画像を閲覧しました。いたずらメールに添付してあった画像で、自分ではダウンロードやアップロード、保存もしていません。罪になりますか?

自己の意思に反して閲覧したのみで違法になることは考えにくいです。

よって、児童ポルノの単純所持は成立しません。

少年の逮捕・勾留

18歳未満の未成年が逮捕された場合の、全体的な流れは以下の図の通りです。逮捕・勾留期間を終えると、事件が家庭裁判所に送致されます。

少年事件の逮捕の流れ

では、逮捕中の状況について確認します。逮捕後は警察の取り調べ期間です。逮捕から48時間以内に、まずは検察官に事件が送られます。このことを、「検察官送致」といいます。

その後検察官が、少年の身柄を継続して拘束することが必要と判断した場合、勾留請求を行います。

被疑者勾留の流れ

検察官が裁判官に勾留請求し勾留決定が出ると、10日間の身柄拘束が確定します。その後さらに勾留の延長が必要とされた場合は、最大で10日間(合計最大20日間)の勾留が決定されます。

ただし法律上の措置として、少年の被疑事件においては、「勾留に代わる観護措置」となる場合があります。少年の勾留は、やむを得ない場合に限るとする考えが根底にあるのです。

勾留期間が経過すると、先ほどの図の通り家庭裁判所へ事件が送られます。罪を犯した時点で20歳未満であれば原則として少年法が適用されるため、刑事罰が科せられるわけではありません。ただし、罪を犯した時点で20歳未満でも家裁の処分前に20歳になった場合などは刑事罰に科せられる可能性があります。

逮捕・勾留された場合は、弁護士に身柄解放のための活動に尽力してもらいましょう。

未成年が児童ポルノ禁止法違反をしたら弁護士へ相談

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未成年が児童ポルノ禁止法違反にあたる行為をした、あるいは逮捕されそうという場合は、早めに弁護士に相談しましょう。この章では、逮捕前にできることや、逮捕後であってもできることについて解説します。

逮捕前なら自首を検討

未成年が児童ポルノ禁止法違反をしたことについて自覚がある場合、まずは自首を検討してみましょう。

自首とメリットについて

自首とは?

犯罪が発覚する前に、犯人が犯罪の事実について捜査機関に申告すること。

(自首等)第四十二条 

罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。

刑法第42条1項

自首のメリットには以下が挙げられます。

  • 逮捕を回避できる可能性がある
  • 刑の減軽が期待できる
  • 精神的な不安から解消される

自首には確かにメリットが発生することが考えられますが、犯罪の状況や余罪の有無、被害者の処罰感情なども処分には影響します。ご自身の犯した罪について、自首した方がいいのかどうかをまずは弁護士に相談するといいでしょう。弁護士は、捜査機関に情報を漏えいすることもありませんし、自首するかどうかを選択するのはあくまで犯罪をした本人です。

自首は弁護士同行も可能

自首することをご自身で選択した、あるいは弁護士に相談後自首を決意した場合、弁護士同行についても検討しましょう。弁護士同行には、以下のようなメリットがあります。

弁護士が自首同行するメリット
  • 捜査について今後弁護士が窓口になってくれる
  • 被害者との示談状況を都度捜査機関に連携できるため、逮捕回避に繋がる
  • 自首する際に証拠資料などを準備でき、周到な態勢で臨める

弁護士同行で自首する場合は、弁護士の作成した「上申書」や、その他必要な書類を持参します。自首の意向や、被害者との状況などを代わりに捜査機関に伝えてくれるため、スムーズに聴き取りが進行するでしょう。

児童ポルノ禁止法違反では早めの示談が重要

被害者のいる性犯罪において最も重要なのは、被害者と示談ができたかどうかという問題です。また、被害者対応は以下の要素から慎重におこなわなければなりません。

  1. 被害者が児童であるため、親の処罰感情が大きいことがある
  2. 性犯罪の特徴として、検察などが被害者の供述に依存することが多い

示談とは、当事者間の民事的な手続きです。

示談とは

被害者が未成年である児童の場合、まずは被害者家族との接触を試みます。加害者ひとりでは門前払いされる可能性が高いため、初動の段階から弁護士の力が必要です。弁護士が窓口になれば、加害者の謝罪や反省を代理で伝えてくれるため、示談交渉がスムーズに進行しやすいのです。

被害者対応は早期に開始し、交渉の段階でも捜査機関に報告しておくと有利になります。示談が成立した暁には、示談ができたことを証する内容、つまり示談書を、捜査機関や段階によっては家庭裁判所に提出することになるでしょう。

示談は、犯人が未成年である少年事件においても審判では有利に働きます。また、少年自身の更生という意味からも、謝罪や賠償により罪を償うことは心身の成長を促します。

ご自身あるいは親御さんが児童ポルノ禁止法違反で悩んでいる場合、まずは弁護士相談を視野に入れましょう。