第二東京弁護士会所属。刑事事件で逮捕されてしまっても前科をつけずに解決できる方法があります。
「刑事事件 法律Know」では、逮捕や前科を回避する方法、逮捕後すぐに釈放されるためにできることを詳しく解説しています。
被害者との示談で刑事処分を軽くしたい、前科をつけずに事件を解決したいという相談は、アトム法律事務所にお電話ください。
アトムは夜間土日も受け付けの相談窓口で刑事事件のお悩みにスピーディーに対応いたします。
息子が盗撮した|盗撮事件の流れと処分・保護者が取るべき対策を解説
2023年7月13日以降の事件は「撮影罪」に問われます。
この記事にたどり着いた方は、以下のような状況に置かれ不安を感じていませんか?
- 息子が盗撮で現行犯逮捕されたと警察官から連絡があった
- 19歳の息子は前科はつかないと言われたけど本当?
- 息子が盗撮で逮捕後釈放されたが今後の処分が心配
- 息子が盗撮で逮捕されたが学校や職場への影響はある?
盗撮は犯罪であり、20歳以上であれば最悪の場合前科がつく可能性もあります。ただし、初犯である場合や、罪状や犯行態様、被害者の処罰感情などにより、比較的軽い処分が決定される犯罪でもあります。
しかし油断してはならないのは、盗撮は性犯罪であるということです。社会一般的に性犯罪は厳しく取り締まる傾向にあり、社会復帰に影響を及ぼす可能性もあるのです。
そこで当記事では、盗撮犯となってしまった息子が心配な保護者の方に向け、盗撮事件の流れや処分、息子の年齢に応じた事件の行方について解説します。
また、盗撮事件の処分に関わる重要な対策についてもお話しましょう。
- 盗撮の処分内容や罰則がわかる
- 盗撮した息子の年齢に応じた事件の流れがわかる
- 息子に前科がつく可能性や退学・解雇の可能性がわかる
- 息子の盗撮を弁護士に相談するメリットがわかる
- 息子の盗撮被害者に対する対応方法がわかる
目次
息子の盗撮は何罪?罪の内容
まずは盗撮で考えられる罪名と、犯人が20歳未満だった場合の事件内容についてお話しします。
盗撮で考えられる犯罪名
盗撮行為は、おもに条例違反に該当します。
条例は都道府県ごとに制定されており、各地域により内容が異なります。
当記事では、東京都の迷惑防止条例(公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例)を例に解説しましょう。
第5条
何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない。(1) 公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れること。
(2) 次のいずれかに掲げる場所又は乗物における人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること。
イ 住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所
ロ 公共の場所、公共の乗物、学校、事務所、タクシーその他不特定又は多数の者が利用し、又は出入りする場所又は乗物(イに該当するものを除く。)
東京都 迷惑防止条例違反第5条
撮影に至った場合の罰則は「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」です(8条2項1号)。ただし常習だった場合は、刑罰は2倍程度重くなります。
公共の建物で盗撮したのであれば、建造物侵入罪にも該当する可能性があります。
たとえば、ショッピングモールなどの店舗で盗撮したケースです。
(住居侵入等)第百三十条
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
刑法第130条
そのほか、刑法や条例に抵触しない「のぞき行為」であった場合、軽犯罪法違反となることもあります。
刑法よりも刑罰は軽く、拘留又は科料とされています。
2023年7月以降の盗撮事件は新設される「撮影罪」で処罰されることになる
撮影罪で取り締まられる盗撮は以下のような行為です。
第二条 次の各号のいずれかに掲げる行為をした者は、三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する。
一 正当な理由がないのに、ひそかに、次に掲げる姿態等(略)を撮影する行為
イ 人の性的な部位(性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部、臀部又は胸部をいう。(略))又は人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるものに限る。)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分
ロ イに掲げるもののほか、わいせつな行為又は性交等(略)がされている間における人の姿態
(性的な姿態を撮影する行為等の処罰(略)関する法律2条)
息子が20歳未満なら少年事件になる
では、逮捕された息子が20歳未満だった場合はどうでしょうか。
犯人が20歳未満であった場合は「少年事件」として扱われ、「少年法」という法律が適用されます。
(この法律の目的)第一条
この法律は、少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに、少年の刑事事件について特別の措置を講ずることを目的とする。
少年法第1条
(定義)第二条
この法律において「少年」とは、二十歳に満たない者をいう。
少年法第2条
少年事件であっても、逮捕されてから勾留されるまでの流れは、20歳以上の場合と変わりありません。
20歳未満の少年と20歳以上の者の適用についての大きな違いは、後者は罪を犯したことに対する責任が科せられるのに対し、前者は再非行を防止することを目的としている点です。
少年は更生の余地があるとされるため、刑罰によって責任を科すわけではないということです。
息子が盗撮で逮捕されたらどうなる?
では、息子が盗撮で逮捕された際の流れについて解説しましょう。先述の通り、息子が20歳未満かそうでないかで流れが異なるため、それぞれについて説明します。
一般的な刑事事件と少年事件の違い
犯人が20歳以上の場合、基本的に事件は検察庁に送られます。対して少年の場合、事件は基本的に家庭裁判所へ送られます。
では、両者の違いについて図で確認しましょう。まずは一般的な刑事事件の場合です。
一般的な刑事事件の場合、検察官の起訴・不起訴の判断が下り、起訴された場合は正式裁判となり刑罰が確定します。
なお、起訴されず不起訴処分となった場合は事件終了です。
以下は、犯人が20歳未満である場合の事件の流れです。
図中の、「留置場」までの流れは一般的な刑事事件と同じだということです。その後家庭裁判所で審判を開始するのが相当と認められた場合は審判が開かれ、処分が確定する流れです。審判不開始となったり、審判が開始されても不処分となった場合は、事件は終了します。
なお、逮捕後72時間は取り調べ期間となるため、被疑者とご家族は面会ができません。面会(接見)は弁護士に依頼しましょう。
息子には前科がつく?
これまでお話しした通り、20歳未満の盗撮事件であれば前科はつきません。仮に家庭裁判所送致後、審判に付され処分が確定した場合であってもです。
それに対し、20歳以上で起訴された事件の場合、高確率で前科がついてしまいます。なお、起訴されなかった場合は不起訴処分となり、前科はつきません。起訴後は公判請求され有罪判決が下るか、略式起訴となり罰金刑になるのが主な流れです。
つまり一般的な刑事事件の場合、起訴されないような弁護活動を行うことが重要になります。
息子の職場や学校への影響は?
まず、逮捕や勾留が長期間に及ぶと、職場や学校にある程度の事情を説明する必要性が出てきます。
学校に通っている場合、親御さんであれば退学などの不安がよぎることでしょう。退学や停学などの学校処分に関しては、学校規則により異なります。学校に確認することが優先です。なお、学校対応については、弁護士に依頼できる可能性もあります。
仮に学校の教師や生徒を盗撮した事例の場合、校内立ち入り禁止などを言い渡され、退学になるケースも考えられます。
次に職場の影響ですが、解雇はよほどの事情がない限り会社側はすることができません(労働契約法第16条)。
基本的には前科がついていない、つまり有罪となっていないのにもかかわらず解雇となることは考えにくいです。ただし学校処分同様、仮に職場の同僚などを盗撮したような場合、解雇の可能性も考えられます。盗撮は性犯罪という点から、今後の職場への影響を懸念して処分が下される可能性もあるのです。
逮捕後釈放されている場合
盗撮事件で逮捕されたのも束の間、現時点で息子が在宅捜査に切り替わっている場合はどうでしょうか。親御さんはじめ、加害者家族からすれば、今後の捜査はどうなるのか・被害者への対応は必要なのかなど、不安や迷いが生じていることでしょう。
在宅捜査は、逮捕後釈放されたケース、もしくは逮捕されずに自宅から捜査に協力するものとがあります。捜査機関から呼び出し連絡を受け、期日に出頭し、事情聴取されるという流れです。
在宅捜査であっても、身柄事件のような時間制限・勾留期間の適用がないだけであり、検察官の起訴・不起訴の判断がなされるところは共通です。
また、少年事件であっても、家庭裁判所に捜査書類だけが送られることになり、その後の処分などについては少年の身柄事件と同じ手続きです。家庭裁判所へ事件が送られた後は、少年や保護者が調査官と直接面談をする流れになります。
逮捕後釈放されている場合であっても、処分が確定するまでは事件は係属しています。
やはり重要なのは、処分確定前の対策です。次章で詳しく解説します。
息子が盗撮したら弁護士へ相談
弁護士相談や依頼は必要?
弁護士相談と弁護士依頼は別物です。弁護士依頼は委任契約や弁護士費用が必要になりますが、弁護士相談の段階においては、相談料すら無料の場合もあります。
まずは気軽に相談してみましょう。
結論、今後の処分について不安な場合、弁護士相談は必要であるといえます。なお、弁護士相談には以下のメリットがあります。
- 本人の身柄拘束中におけるアドバイスが聞ける
- 今後の事件の見通しがあらかじめ分かる
次に、刑事弁護を依頼した方がいいのかどうかということですが、性犯罪である以上被害者がいることを考えれば、弁護士を通じた示談交渉を行った方がいいでしょう。また、弁護活動により早期釈放が可能になるケースもあります。示談については次章で解説します。
被害者への対応はどうすればいい?不起訴処分獲得の方法は?
盗撮の被害者が明らかになっている場合、警察に被害届が出ている可能性があります。被害者の処罰感情が大きい場合、今後の処分が重くなるという結果も考えられます。
実は盗撮事件や痴漢事件、強制わいせつ罪などの事件の場合、被害者との示談交渉・示談成立が非常に重要になってくるのです。そこでまず、示談交渉がそもそもできるのかが問題となりますが、弁護士を介さない限り、示談交渉のきっかけを作ることは困難です。
通常弁護士による示談交渉においては、捜査機関などから被害者の連絡先を入手し、弁護士から被害者に連絡を取ります。
被害届の取り下げも被害者の処罰感情が治まったとされる基準になり得ます。そのためには、示談に加え、まずは被害者に謝罪の意を伝えましょう。もっともこの場合であっても、加害者が被害者に直接手渡しすることは事実上不可能です。弁護士を介し、被害者の手に渡るようにしましょう。
弁護士を介した被害者対応を行う場合、被害者本人だけでなく、捜査機関へも示談書や謝罪文などの証拠を提出します。捜査機関へは反省文を提出することもあります。
弁護士からの示談書(証拠)により、被疑者が不起訴処分になる可能性が高まるのです。
なお、被疑者が20歳未満であれば、審判不開始となったり、審判後の処分が有利に働く可能性があります。また、現時点で逮捕されていない事件に至っては、逮捕回避できる可能性もあります。
今後の再犯防止やお子様の大切な日常生活を守るため、まずは弁護士相談などのサポートを受けるところから始めてみてください。
東京都においては、「公の場所」や「通常衣服の全部または一部を着けない状態でいるような場所」での撮影を禁止しています。
また、カメラの設置のみであっても、盗撮目的であれば東京都では条例違反となります