岡野武志

第二東京弁護士会所属。刑事事件で逮捕されてしまっても前科をつけずに解決できる方法があります。

「刑事事件 法律Know」では、逮捕や前科を回避する方法、逮捕後すぐに釈放されるためにできることを詳しく解説しています。

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ストーカー規制法違反とは|逮捕はされる?ストーカー行為・罰則・対策を解説

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ストーカー規制法は平成12年に制定され、その後何度も改正が行われている法律です。

令和3年5月の改正では、相手方が現に所在する場所付近において見張るなどの行為や、拒否されたにもかかわらず連続して文書を送付する行為が、規制行為に追加されました。
また、相手方の承諾なくGPS機器等を取り付ける行為についても、「位置情報無承諾等」として規制行為に加えられました。

ストーカー規制法違反は平成24年から急増し、平成30年から2年連続で減少したものの、令和2年においてはふたたび急増したというデータが出ています。

また、ストーカー行為をきっかけに、他の犯罪にも該当するケースも見受けられます。
たとえば傷害事件に発展したケースや、つきまといによる住居侵入罪、そのほかわいせつ行為をしたことにより、強制わいせつ罪や迷惑防止条例違反に該当するケースです。

当記事では、ストーカー規制法違反について1つ1つ解説し、その行為や罰則、逮捕された場合の流れと対策についても解説していきましょう。

  • ストーカー規制法で規制される行為や罰則がわかる
  • ストーカー規制法違反で逮捕されるケースと逮捕の流れがわかる
  • ストーカー規制法違反の行為をした際の対策についてわかる

ストーカー規制法とは

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ストーカー規制法の目的

ストーカー規制法においては、ストーカー行為等について必要な規制をおこなうとともに、その相手方に対する援助の措置等を定めることを目的としています。(ストーカー規制法第1条

ストーカー行為とは

ストーカーの定義・ストーカー行為について解説します。

ストーカー行為とは

同一の相手に対し、つきまとい等の行為反復しておこなうこと

同一人であれば、被害者の性別は問いません。
また、複数人の特定されていない相手につきまとい等をしても、同法に抵触しない可能性があります。
また、反復しておこなうことが要件ですので、1度きりのつきまとい等でストーカー規制法違反の適用を受けることはないでしょう。

つきまとい等」については、以下のとおり定められています。

(定義)第二条 

この法律において「つきまとい等」とは、特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し、次の各号のいずれかに掲げる行為をすることをいう。

 つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、住居、勤務先、学校その他その現に所在する場所若しくは通常所在する場所(以下「住居等」という。)の付近において見張りをし、住居等に押し掛け、又は住居等の付近をみだりにうろつくこと。
 その行動を監視していると思わせるような事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。

 面会、交際その他の義務のないことを行うことを要求すること。

 著しく粗野又は乱暴な言動をすること。

 電話をかけて何も告げず、又は拒まれたにもかかわらず、連続して、電話をかけ、文書を送付し、ファクシミリ装置を用いて送信し、若しくは電子メールの送信等をすること。

 汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又はその知り得る状態に置くこと。

 その名誉を害する事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。

 その性的羞恥心を害する事項を告げ若しくはその知り得る状態に置き、その性的羞恥心を害する文書、図画、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下この号において同じ。)に係る記録媒体その他の物を送付し若しくはその知り得る状態に置き、又はその性的羞恥心を害する電磁的記録その他の記録を送信し若しくはその知り得る状態に置くこと。

ストーカー規制法第2条

ストーカー規制法違反の罰則

ストーカー規制法の罰則、つまり「刑罰」については、以下3つに分類されます。

  1. ストーカー行為をした
  2. 禁止命令に違反してストーカー行為をした
  3. 禁止命令に違反した(2以外の場合)

(罰則)

第十八条 

ストーカー行為をした者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

第十九条 禁止命令等(第五条第一項第一号に係るものに限る。以下同じ。)に違反してストーカー行為をした者は、二年以下の懲役又は二百万円以下の罰金に処する。

 前項に規定するもののほか、禁止命令等に違反してつきまとい等又は位置情報無承諾取得等をすることにより、ストーカー行為をした者も、同項と同様とする。

第二十条 前条に規定するもののほか、禁止命令等に違反した者は、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

ストーカー規制法第18条第19条第20条

禁止命令とは、ストーカー被害者の申し出・または職権によって都道府県公安委員会が出せる命令です(ストーカー規制法第5条)。

平成28年改正により、ストーカー行為が重大事件に発展することをふまえ、規定されたものです。

警告とは

ストーカー行為をし、被害者から警察に申し出があった場合、ただちに逮捕される可能性はあまり高くありません。

ただし、警察から注意を促す電話があったり、文書警告を受けたりすることがあります(ストーカー規制法第4条)。

警告は、ストーカー行為を反復するおそれがあると認められるときに、警察署長などがおこないます。

ストーカー規制法違反をし、警告を受けたにもかかわらず再度ストーカー行為を繰り返した場合、つぎにご説明する逮捕にいたる可能性が高まります。

ストーカー規制法違反で逮捕されたら?

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ストーカー規制法違反で逮捕される場合とは

ストーカー規制法違反で逮捕されるきっかけには、以下が考えられます。

  • 被害者から刑事告訴された
  • 被害者から被害届が出された
  • ストーカー行為の最中に警察に取り押さえられた
  • 加害者が警告に違反した

なお、ストーカー規制法違反は、現在親告罪ではありません(非親告罪)。

親告罪とは、被害者の告訴を要件として検察官が起訴できる犯罪であり、告訴がない場合は刑事事件に発展しません。
ストーカー行為はこのような犯罪に該当しないため、告訴がなくても起訴および逮捕されることがあります。

刑事告訴と被害届の違いとは、加害者への処罰を希望するかしないかにあります。
被害届とは、単に被害に遭ったことを申告するものであり、告訴とは、処罰を求める意思表示が備わったものをさしています。

なお、犯罪捜査規範第63条によると、警察官は原則、告訴は受理しなければならないことになっています。
受理された場合、かならず捜査の対象になることも特徴です。
仮に、ストーカー行為の反復性がないにもかかわらず告訴された場合、受理されないケースもあるでしょう。

告訴できる人(告訴権者)とは、被害者本人や親族である法定代理人などです。

第二百三十条 

犯罪により害を被つた者は、告訴をすることができる。

刑事訴訟法第230条

なお、告訴があったからといってかならず逮捕されるとも限りません。
告訴された後、ストーカー加害の内容に事件性があり、加害者を身体拘束する必要がある場合にはじめてされるものです。

次章において、逮捕の要件および逮捕の流れについて解説します。

逮捕とは?逮捕の流れ

逮捕とは、取り調べのための身体拘束です。
以下の要件が備わると、通常逮捕にいたります。

逮捕の要件

逮捕は、犯人である可能性が高く、逃亡や証拠隠しのおそれがある場合に原則限られているのです。

ストーカー規制法違反の被疑者が逮捕されると、以下の流れをたどります。

刑事事件の流れ

逮捕から72時間は、誰とも面会できません。

弁護士接見を利用し、弁護士と面会することをおすすめします。
取り調べにおけるアドバイスも聞くことができます。

警察・検察による取り調べの流れは、以下の図のとおりです。

取り調べの流れ

供述時調書に記載された内容は、原則取り消すことはできません。
ストーカー行為がない場合や一部否認したい場合などは、あらかじめ弁護士に相談しておきましょう。

逮捕された被疑者は、事実でない供述書を作成されたり、供述内容とは違う警察の言葉に書きかえられたりすることもあるのです。

取り調べ後、検察官によって勾留請求されなければ被疑者は釈放され、勾留請求後、裁判官による勾留決定がなされた場合は、起訴・不起訴の判断が下るまで最大20日間の身体拘束が続きます。

なお、逮捕されずに捜査が進行することもあり、このことを在宅捜査といいます。
通常、ストーカー行為が捜査機関に明るみになっても、ただちに起訴され有罪になるというよりは、先述の警告禁止命令となる可能性が高いです。

ストーカー規制法違反でお悩みの方は弁護士へ

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弁護士相談はお気軽に

ストーカー規制法違反でお悩みの方は、まずは弁護士相談しましょう。

弁護士相談は、ただちに弁護士依頼をするものではありません。
弁護を依頼するには、別途委任契約を交わしますので、弁護士相談は気軽に受けることが可能です。

弁護士に相談する方は、被疑者本人でなくても問題ありません。
ご家族のみでも大丈夫です。

また、逮捕前であっても逮捕中であっても相談可能です。
ストーカー規制法違反に該当するのかどうかすらわからない・刑事事件に発展していないという場合であっても相談できます。

ストーカー規制法違反には示談が重要

刑事事件における示談は、情状弁護の1つであり非常に重要です。

示談の成否により、今後の処分がおおきく変わる可能性があります。

ストーカー規制法違反をはじめとする刑事事件の示談とは、被害者が加害者を許し、そのうえで示談金を支払う方法がほとんどです。

示談とは

示談の効果には以下があげられます。

  • ストーカー規制違法違反があっても逮捕されない
  • ストーカー規制違法違反があっても起訴されない(不起訴になる)
  • ストーカー規制違法違反があっても実刑を免れる

示談書に被害者の宥恕文言があれば、そもそも民事的な解決は図られていると考えられます。
よって刑事事件としても起訴せず、ただちに釈放されたり事件終了となったりする可能性が高まるのです。

示談は早期に交渉しておくことが重要です。
弁護士相談時には、優先してアドバイスを得るようにしましょう。