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関税法違反の事例|密輸の裁判例・関税法違反の内容と罰則も解説
財務省では、全国の税関や空港で摘発された密輸入の内容調査をしています。
令和においては、大麻リキッドを含む大麻樹脂や、MDMAの押収量が増加しているとのことです。
最近のニュースだと、米国から大麻リキッドを密輸した容疑で逮捕された事件や、大麻リキッドをお菓子に紛れ込ませ税関から告発されたという事件も明るみになりました。
これら密輸は関税法違反となり、最悪の場合は刑事事件に発展します。
刑事事件になれば、懲役刑や罰金刑などの刑罰を受ける可能性があるでしょう。
実際令和4年に判決が下った大麻密輸の事件では、被告人に懲役2年罰金50万円が言い渡されています。
当記事では関税法違反の基礎知識をはじめ、事例と罰則、弁護士相談のメリットなどについて解説します。
- 関税法・関税法違反とはそもそも何かわかる
- 関税法違反のよくある事例・裁判例がわかる
- 密輸の罰則についてわかる
- 弁護士相談のメリットや弁護活動の内容がわかる
関税法違反とは
関税法違反の基礎知識
関税法とは、税関手続きについて定めた法律のことです。
税関とは、関税の徴収や、輸出入貨物の通関や密輸の取り締まりなどをおこなう行政機関です。
税関での手続きに違反してしまうと、税関から検察庁などに告発され、逮捕にいたる可能性があります。
関税法において規制されている行為は、おもに以下のとおりです。
- 密輸
- 関税の支払い回避
- 申告不備
- 密輸ほう助
- 関税の支払い回避ほう助
密輸とは
密輸とは、関税法に規定されている正規の手続きを経ずに、物の輸出入をおこなうことをいいます。
輸出入が禁止されている物や、その他規制がかかった物品を密に輸出入した場合、罪に問われます。
関税法には、輸出入してはならないものについて明確に規定されており、その内容は以下のとおりです。
輸出が禁止されている物
- 麻薬及び向精神薬、大麻、あへん及びけしがら並びに覚醒剤
- 児童ポルノ
- 特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、著作隣接権又は育成者権を侵害する物品
- 不正競争防止法第二条第一項第一号から第三号まで、第十号、第十七号又は第十八号(定義)に掲げる行為を組成する物品
輸入が禁止されている物
- 麻薬及び向精神薬、大麻、あへん及びけしがら並びに覚醒剤
- 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第二条第十五項(定義)に規定する指定薬物
- 拳銃、小銃、機関銃及び砲並びにこれらの銃砲弾並びに拳銃部品
- 爆発物
- 火薬類
- 化学兵器の禁止及び特定物質の規制等に関する法律に規定する特定物質
- 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律に規定する一種病原体等及び同条第二十一項に規定する二種病原体等
- 貨幣、紙幣若しくは銀行券、印紙若しくは郵便切手又は有価証券の偽造品、変造品及び模造品並びに不正に作られた代金若しくは料金の支払用又は預貯金の引出用のカードを構成する電磁的記録をその構成部分とするカード
- 公安又は風俗を害すべき書籍、図画、彫刻物その他の物品
- 児童ポルノ
- 特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、著作隣接権、回路配置利用権又は育成者権を侵害する物品
- 不正競争防止法第二条第一項第一号から第三号まで、第十号、第十七号又は第十八号(定義)に掲げる行為を組成する物品
たとえば、海外から覚醒剤を密輸入した場合、覚醒剤取締法違反に問われます。
その後税関手続きの際に密輸が発覚し、逮捕された場合、関税法については未遂にとどまります。
しかしそのようなケースであっても、関税法違反の罪について罰せられるということです。
関税法違反の事例
この章では、関税法違反のなかでも「密輸」について紹介します。
実際に税関に告発された事件では、とくに麻薬などの薬物・拳銃などの密輸は、手口が巧妙だといいます。
薬物においては、下着の中に隠す、衣類等に縫い込んだり染み込ませたりする、あるいは体内に飲み込むなどの手法などが報告されています。
以下は、関税法違反における裁判例です。
営利目的で覚醒剤を密輸入した事件
被告人が共犯者と共謀のうえ、覚醒剤約3.1キログラムを密輸入した事件です。
本件では、密輸の対象になった物品が、覚醒剤であることを知っていたかどうかが争点になりました。
結果、未必の故意があったにとどまりましたが、覚醒剤の量や本人の反省度が低かったことなどから、「懲役9年および罰金400万円」の判決が下されました。
(令和元年9月2日 札幌地方裁判所)
営利目的で覚醒剤を密輸入した事件
密輸の態様や、被告人が大勢と共謀し、首謀的な立場にあったことなどから「無期懲役および罰金1000万円」の判決が下された事件です。
被告人が密輸の対象が覚醒剤であることを知っていたこと・組織的な犯行であったこと・密輸した覚醒剤がきわめて大量(約586キログラム)だったことなどが、量刑の決め手となりました。
(令和3年3月17日 福岡地方裁判所判決)
暴力団と共謀で覚醒剤を密輸入した事件
営利目的で、きわめて大量(約100キログラム)の覚醒剤を密輸入した事件です。
被告人の立場が中心的な運び屋であったことや、社会に甚大な害悪を拡散させる危険性もあったこと、暴力団組織が犯行によって得た利益も大きかったことなどから、「懲役17年および罰金600万円」との判決が下りました。
被告人らには、監督する身内がいること、本人らが暴力団との絶縁を誓い、反省しているなどの情状も一部考慮されました。
しかし、本件が社会経済的に見合わない事件であることを示すため、厳しい量刑が下されたものといえます。
(平成29年11月22日 福岡地方裁判所)
うなぎの稚魚の密輸出を継続しておこなっていた事件
計2回にわたり、うなぎの密輸出をおこなっていた事件です。
被告人は、以前通告処分により罰金相当額を支払っていたにもかかわらず、第二の犯行に及びました。
本件には共犯者がいましたが、被告人が中心的不可欠な存在・立場であり、輸出したうなぎの量も多かったこと、継続して犯行に及ぶ意思が十分にあったことなどから、「懲役2年および罰金200万円」とされました。
(令和2年10月27日 大阪地方裁判所)
関税法違反の罰則
関税法違反のなかでも、不正薬物など、輸出入が禁止されている物を扱った際の罰則について説明します。
前章の裁判例でも紹介したように、密輸入・密輸出した場合の罰則は厳しくなっています。
不正薬物などを不法に輸出入(密輸)した場合、10年以下の懲役もしくは3000万円以下の罰金刑に処せられます。
第百九条
第六十九条の十一第一項第一号から第六号まで(輸入してはならない貨物)に掲げる貨物を輸入した者は、十年以下の懲役若しくは三千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
関税法第109条
第百八条の四
第六十九条の二第一項第一号(輸出してはならない貨物)に掲げる貨物を輸出した者(本邦から外国に向けて行う外国貨物(仮に陸揚げされた貨物を除く。)の積戻し(第六十九条の十一第二項(輸入してはならない貨物)の規定により命じられて行うものを除く。)をした者を含む。)は、十年以下の懲役若しくは三千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
関税法第108条の4
関税法で密輸入が禁止されている物であると知っていた(故意)のであれば、責任が問われます。
よくある事例に、不法薬物(覚醒剤・MDMAなどの麻薬・大麻など)を運搬する役割を、報酬付きで担うケースがあります。
いわゆる「運び屋」も、故意であれば起訴され有罪となる可能性があるでしょう。
また、不法薬物の犯罪と、関税法違反の両罪に問われた場合、懲役刑と罰金刑が併科されることが多いです。
罰金刑は、300万円から500万円までのあいだで併科されることが多いですが、納付できない場合には労役場に留置されることになります。
関税法違反の事例・流れについては弁護士に相談
関税法違反を弁護士相談するメリット
以下のようなお悩みのある方は弁護士相談しましょう。
- 関税法違反の罪に関与した可能性がある
- 関税法違反で現行犯逮捕された
- 関税法違反の罪に加担してはいないが、首謀者などから依頼を受けた
関税法違反の事例などについて、弁護士相談するメリットは以下のとおりです。
- 密輸に関する諸問題について、有益なアドバイスを受けられる
- 関税法違反の各違反行為について、刑事事件の可能性や事件の行方を知ることができる
- 関税法違反で刑事事件に発展しそうな場合、減軽について対策が可能
まずは、事件性・事件後の対策について弁護士相談しましょう。
逮捕された場合など、今後についてあらかじめ知っておくことで不安を和らげることができます。
関税法違反で逮捕される事例と弁護活動
関税法違反で逮捕にいたるきっかけには、税関からの告発や、現行犯逮捕などがあります。
逮捕後であっても、弁護士相談・弁護士依頼が可能です。
関税法違反で逮捕されると、まずは警察の取り調べを受けます。
逮捕から48時間は、ご家族であっても面会できません。
面会を希望するときは、面会制限のない弁護士に依頼しましょう。
逮捕後、弁護士に依頼することにより、以下の弁護活動が可能です。
- 弁護士接見
- 釈放に向けた身柄解放
逮捕から起訴されるまでの流れは以下図のとおりです。
逮捕後、検察官に勾留請求されてしまうと、逮捕から起訴・不起訴の判断が下るまで、最大23日間身柄拘束されます。
勾留前など身柄拘束が確定している段階や、勾留請求前など、釈放のタイミングを弁護士に相談しましょう。
不正薬物などの密輸事件においては、関税法違反のほか、覚醒剤取締法違反や大麻取締法違反の罪に問われ、量刑もけっして軽いものではありません。
ただし弁護活動を通し、減軽や不起訴処分の獲得が可能な事件もあります。
不起訴処分とは、検察官が起訴しないことをいいます。
不起訴となる要因には、嫌疑が不十分だった場合や、嫌疑は認められるものの、起訴を猶予する情状などが認められた場合があります。
関税法違反で逮捕されても、以下のようなケースでは不起訴処分となる可能性があります。
- 覚醒剤などの不正薬物を密輸したが微量だった
- 初犯である
- 関税法で輸出入が禁止されている物だと知らなかった
あくまで不起訴処分の可能性がある要素であり、上記が満たされたからといってかならずしも不起訴処分となるわけではありません。
弁護士が介入し、不起訴処分を獲得するためには、以下の活動を重要視します。
- 被疑者に有益な証拠を収集する
- 被疑者に有益な情状弁護をおこなう
たとえば逮捕された被疑者が、違法な薬物の存在などについて知らなかった場合、そのことを証明する証拠を検察官に提出します。
起訴・不起訴の判断は検察官の専権ですので、検察官と証拠争いをする流れとなります。
情状弁護とは、犯情や本人の反省など、被疑者・被告人に有利になる弁護活動のことです。
情状弁護の内容は事例ごとに異なるため、個別に弁護士に相談することが重要です。
密輸出入は、未遂罪でも罰せられます。
罰則は、既遂罪と同様です。