岡野武志

第二東京弁護士会所属。刑事事件で逮捕されてしまっても前科をつけずに解決できる方法があります。

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事故の加害者とは?加害者家族はどこまで責任を負う?事故の責任別に解説!

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事故を起こした加害者本人には、以下3つの責任が生じます。

  1. 刑事責任
  2. 民事責任
  3. 行政責任

まず事故の加害者とは、基本的に事故の当事者のみをさしています。

当事者である家族が1人で起こした事故であれば、その家族本人です。
車の事故であれば、運転者本人ということになるでしょう。
よって、事故の責任を負わなければならないのは、事故を起こした本人のみということになります。

ただし、そうとは一概にいえないケースもあります。
上記3つの責任のうち刑事責任・民事責任においては、加害者(本人)の家族にも責任が発生することがあります。
それはおもに、家族も行為者であった場合です。
さらに当記事においては、家族が事故に直接関与していない場合でも責任が発生するケースについて、言及していきましょう。

  • 事故の加害者本人と家族が当然に負う責任とは?
  • 事故に関与していない加害者家族が負う責任とは?
  • 事故の加害者家族になってしまった場合にすべきこととは?

事故に加害者家族が関与した場合の責任

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事故の加害者本人と家族が、当然に負う責任内容についてご説明します。

刑事責任について

刑事責任とは、「刑罰」のことです。

刑罰は、各犯罪行為ごとに「刑法」に規定されており、裁判で有罪判決を受けたときのみ受けるものです。
つまり、かりに交通事故の加害者が逮捕にいたっても、起訴され有罪判決を得ていないのであれば、刑事責任は負わなくていいということになります。

刑事責任(刑罰)の例
  • 懲役刑 
    自由刑の1つ。刑務所に入り、一定の強制労働をおこなう。
  • 禁錮刑
    自由刑の1つ。刑務所に入るが強制労働は義務ではない。
  • 罰金刑
    財産刑の1つ。
    上記2つと違い、正式裁判によらずに決定する場合のある刑罰で、罰金を国庫に納付することで償う。

交通事故の罪名でよくある、「過失運転致傷罪」であれば事故の過失に対して、「危険運転致死傷罪」であれば危険運転の行為に対して、罰(責任)が問われます。

この刑事責任(刑罰)は、加害者本人にしか問いようがありません。
ただし、加害者が1人であるとはもちろん限らず、以下のケースでは共犯者も罰せられることになります。

  • 飲酒運転した運転者に同乗していた人物がいた場合
  • 危険運転に加担した運転者とは別の人物がいた場合

上記人物が加害者本人の家族だった場合、その家族は責任を負うでしょう。

刑法においては、共犯者の違法性は連帯してとることになっています。
ここでいう共犯者とは、「共同正犯」のことです。
刑法第60条に規定されています。

民事責任について

民事上の責任とは、加害者が被害者に対して負う、「損害賠償責任」をいいます。

損害賠償責任規定については、幅広い事案を対象に、民法に規定されています。

(不法行為による損害賠償)第七百九条 

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

民法第709条

事故の加害者が負う損害賠償責任とは、たとえば以下の損害に対する責任です。

  • 治療費や文書料などの積極的損害
  • 休業損害・逸失利益などの消極損害

これらは通常金銭で賠償します。

なお、事故の民事責任は被害者本人に対して負う責任です。
事故を起こした加害者が、被害者に直接負うのが原則ですが、例外としては任意保険に肩代わりしてもらうケースがあります。
死亡事故などは特に、莫大な損害金が発生します。
そこで任意保険の補償により、加入の保険会社に損害を支払ってもらうことが一般的です。

民事責任も、事故の加害者本人のみが原則負います。

ただし以下のように、家族の行為が共同不法行為に該当したケースでは、やはり加害者家族も責任を負うことになるでしょう。

共同不法行為は民法第719条に規定されています。

刑事責任の章でお話ししたのと同様、あくまで家族が行為者であれば一緒に責任をとるという流れです。
たとえば家族が運転者である本人に対し、飲酒運転を黙認していた場合や、危険運転を助長していた場合などです。
このようなケースにおいて、運転者とその家族は、共同して不法行為責任を負うことになります。

行政責任について

事故による行政責任とは、免許の停止処分や取り消し処分・反則金の支払いをさす行政処分と、各違反に対して所定の点数を加算する点数制度をいいます。

点数が一定の基準に達すれば、免許停止や免許取り消しの処分がなされます。

行政処分は、道路交通法違反をした本人が直接負う責任です。
違反者のご家族が、連帯して責任をとることはありません。

事故に加害者家族が関与していない場合の責任

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ではつぎに、事故の加害者家族が当然には責任を負わないケースについて言及していきましょう。
つまり、加害者家族が事故現場に登場しない場合です。

まず結論としては、以下が挙げられます。

  • 事故に関与していない家族刑事責任をとることはない
  • 事故に関与していない家族であっても民事責任はとることがある

事故の加害者が自分の子どもだったケース

事故の当事者が、未成年である自分の子どもだったケースではどうでしょうか?

刑事責任・民事責任と区別して解説していきましょう。

運転免許は18歳から取得可能です。

しかし18歳以上20歳未満の未成年が運転していた場合、刑法(刑罰)が原則適用されません。

その代わりに、「少年法」が適用されます。

加害者が未成年の場合、適用される法律が変わるだけで、責任主体が本人から家族に変わることはありません。

つぎに民事責任です。

未成年者の民事責任については、以下に規定されています。

(責任能力)第七百十二条 

未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。

民法第712条

この規定では、責任能力のない未成年者は、損害賠償義務を負わない旨かかれています。

さらに、責任無能力者の責任は、監督義務者が負う旨の記載があります。
また同条但し書きにおいて、監督義務者がその義務を果たしたような場合には免責されるとかかれているのです。

(責任無能力者の監督義務者等の責任)第七百十四条 

前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。

 監督義務者に代わって責任無能力者を監督する者も、前項の責任を負う。

民法第714条

「責任能力がある」とはどの程度なのかということですが、過去判例では、大体小学校を終える12歳くらいには責任能力を有するとされています。

12歳前後では車の運転ができませんので、たとえば12歳くらいの子どもが自転車事故を起こしたケースを想定してみてください。

自転車対歩行者の事故であれば、とくに自転車にスピードが出ていた場合、被害者が死亡するということも十分ありえます。
また、自転車事故とはいえ、莫大な損害金が発生することも想定されるでしょう。

実際に、小学5年生の男の子が運転した自転車事故において、被害者が重体となった事例では、約1億円の損害賠償金を認めた判例がありました。
つまりこの事故では、責任能力をその家族である親に認め、親が全額賠償義務を負ったのです。

そのほか、高齢者や認知症の人が事故を起こした場合、本人の責任性の有無が問題となることがあります。

加害者が単に高齢者というだけで、その家族に責任が発生することはありません。

認知症においても重度でない限り、家族に責任を問えないでしょう。
その事実をご家族が知っていた場合であってもです。

高齢者ドライバーの運転は確かに危険が伴います。
ですが、かりに運転を控えるよう医者から診断されていた場合であっても、それだけでご家族にまで責任が発生することは考えにくいです。
また刑事責任においても、高齢者の運転であったことのみをもって、刑罰が重くなることもありません。

車社会において、すべての危険に対して事故を予期しうる要素として認めてしまうと、誰も車に乗れなくなるからです。

運行供用者責任が発生するケース

自動車損害賠償保障法(自賠法)第3条においては、運行供用者責任について定めています。

(自動車損害賠償責任)第三条 

自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。

(中略)

自賠法第3条

たとえば家族の所有する車で事故をした場合、その所有者である家族に責任が発生します。

運行供用者とは、「自己のために自動車を運行の用に供する者」とされています。

自動車の運行を支配し、その車の運行により利益を得ている者のことです。

親子で車を共有している場合など、車の運転者と所有者が一致しないことは珍しくありません。

車の所有者は、運行供用者にあたります。
そのため運転者同様、所有者にも責任が発生するのです。

また、先述のとおり、民事責任は加入の自動車保険(任意保険)でまかなえることが多いです。

自動車保険は、運転者にではなくその車に対してかけられています。
そのため事故を起こした際には、その車の所有者の保険を利用し、賠償責任を果たすことが通常なのです。

交通事故の加害者家族が責任なくてもすべきこととは

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これまで、加害者家族の責任についてみてきました。

最後に、責任の所在に関係なく、ご家族ができること・すべきことについてまとめてみましょう。

事故の加害者家族ができること
  • 事故について弁護士に相談
  • 加害者本人の会社などに連絡
  • 死亡事故の場合は謝罪など(必要な場合のみ)

まずは弁護士相談です。

刑事事件に発展しそうな場合は、とくに刑事弁護の可能性を含めて相談しましょう。
被害者との示談交渉などについても、弁護士相談が必須です。

事故の加害者が刑事事件の被疑者になっているケースでは、長期間自宅に帰れないこともあります。
そのような場合には、本人の希望を考慮したうえで、会社対応なども必要になってくるでしょう。

また、家族が起こした事故について、本人の代わりに謝罪などを検討することもあるかと思います。

しかし、死亡事故など、被害者の被害感情が強い場合は注意が必要です。
のちのトラブルの可能性を考え、加害者側家族の判断で行動すると危険な場合があります。

被害者対応についても、第一に弁護士に相談しましょう。