岡野武志

第二東京弁護士会所属。刑事事件で逮捕されてしまっても前科をつけずに解決できる方法があります。

「刑事事件 法律Know」では、逮捕や前科を回避する方法、逮捕後すぐに釈放されるためにできることを詳しく解説しています。

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過失運転致死罪は実刑になる?実刑の確率と刑罰・逮捕の可能性や判例も紹介

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2019年、世間をにぎわせた東京都池袋で起こった暴走事故につき、被告人に禁錮5年の判決が言い渡されました。

罪名は、「過失運転致死罪」です。

被告人の過失を認めたことを前提に、事故の態様なども考慮し、実刑判決が相当だとされた事件です。

過失運転致死罪は、過失(不注意)により、被害者である相手方を死亡させた場合に適用されます。

当記事にたどり着いた方は、過失運転致死傷罪はかならず実刑になってしまうのかと疑問を持たれた方ではないでしょうか。
過失運転致死傷罪の基礎知識から、可能性のある判決・対策などについて解説していきましょう。

以下の疑問をお持ちの方は、ぜひ参考にしてください。

  • 過失運転致死罪は「過失」であったにもかかわらず、実刑になってしまうのか
  • 過失が原因の死亡事故は逮捕されるのか?
  • 過失運転致死罪で実刑判決を回避する方法とは何か?

過失運転致死罪は実刑になる?

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実刑とは、執行猶予のつかない懲役刑・禁錮刑をいいます。

過失運転致死罪で起訴された場合、実刑となる可能性はあります。

ただ、過失運転致死罪では、被害者対応の有無被害者の被害感情の大きさにより、実刑となる確率は変わってくるでしょう。

令和2年の犯罪白書によれば、令和元年度の過失運転致死罪につき、約5%の確率で実刑判決になったとのデータが出ています。
なお、上記は単なる過失運転で検挙された人員のみのデータであり、無免許運転などは含みません。

これに対し、危険運転致死罪でみてみると、100%の確率で実刑判決というデータが出ています。
故意性のない過失運転致死罪に比べ、圧倒的に実刑となる可能性が高いです。

では以下、過失運転致死罪の法定刑からみていきましょう。

過失運転致死罪の法定刑

過失運転致死傷罪(過失運転致死罪)の法定刑は、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」第5条に規定されています。

(過失運転致死傷)第五条 
自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

自動車運転死傷行為処罰法第5条

従来、過失運転致死罪の規定は刑法に置かれていました。

しかし近年重大な事故が多発していることにかんがみ、平成26年5月より「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」が独立して制定されたのです。

従来の刑法に規定されていた過失運転致死傷罪は、比較的軽い刑罰でした。
自動車運転死傷行為処罰法は、実際に起こる事故と刑罰内容のかい離から、厳罰化を願う国民の声によって実現された法律です。

なお、この法律には危険運転致死傷罪にかかる規定も存在し、昨今類型を追加するなど改正を重ねています。

過失運転致死傷罪の法定刑は、条文後段により情状が考慮されます。

ただし、かならずしも刑が免除されるわけではありません。

また、上記法定刑は過失のみが認められた場合のものとし、無免許運転や飲酒運転などの事情は考慮しないものとします。

過失の内容としては、たとえば前方不注視わき見運転などがあります。

過失運転致死罪で起訴され、有罪判決となった場合でも、執行猶予付き判決を得られれば刑務所にはいかなくてよくなります。

次章では、執行猶予の条件などについてみてきましょう。

執行猶予付判決になる条件とは

執行猶予とは

起訴され、正式裁判で有罪になったとしても、情状により刑の執行を猶予する制度。
執行猶予期間中何事もなく過ごせば、刑の言い渡しの効力は失われる。

執行猶予の条件については、以下に規定されています。

(刑の全部の執行猶予)第二十五条 

次に掲げる者が三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から一年以上五年以下の期間、その刑の全部の執行を猶予することができる。

 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者

 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者

 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあってもその刑の全部の執行を猶予された者が一年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受け、情状に特に酌量すべきものがあるときも、前項と同様とする。

ただし、次条第一項の規定により保護観察に付せられ、その期間内に更に罪を犯した者については、この限りでない。

刑法第25条

まずは大原則として、判決で言い渡された刑が3年以下もしくは50万円以下の罰金刑でなければなりません。

過失運転致死罪の場合ですと、自由刑(懲役刑・禁錮刑など)については、「 7年以下の懲役若しくは禁錮」とされています。
たとえば、最大年数である7年の懲役刑もしくは禁錮刑に付された場合、執行猶予はつきません。

前に禁錮以上の刑に処せられていた場合にも、原則執行猶予はつきません。
しかし、刑に服したあと、もしくは刑の免除から5年以内に再度禁錮刑に付されていなければ、執行猶予の可能性は出てきます。

執行猶予がつく条件①

ただし本条2項により、前に禁錮刑に付された場合であっても、執行猶予中であり、言い渡された刑が1年以下の懲役刑または禁錮刑であって、特に情状酌量の必要があるときは、執行猶予となる可能性があります。

執行猶予がつく条件②

以上が、条文上の執行猶予の条件です。

なお、執行猶予付き判決を獲得するには被害者側との示談が有効です。
詳細については、目次「過失運転致死罪で実刑を回避するためには?」で解説いたします。

過失運転致死罪で実刑になった裁判例とは

以下、過失運転致死罪で実刑となった裁判例をご紹介します。

判決:禁錮1年4月

スマホゲームに夢中になりながら運転した結果、前方左右の注視を怠り、被害者を轢いて死亡させた事故です。

被告人の不注意な運転で突如命を奪われたという実情、遺族の受けた悲しみが大きいことなどをふまえ、重大な事故であるとされました。

ただ、被告人には前科がなく、任意保険にも加入していたため、適正な補償がなされることは見込まれていました。

最終的に、上記のような被告人の酌むべき事情はあるものの、被害者遺族に厳しい処罰感情があったことなどもあり、実刑は免れないと判断された事件です。

令和元年(わ)第526号 過失運転致死被告事件

判決:禁錮2年

アクセルとブレーキを踏み誤り、歩行者2名を死亡させた事故です。

死亡者が2名出ていることから結果の重大さは否定できないものの、無謀な運転や悪質な危険運転はなかったとのことです。

また、被告人が当該事故を心から悔いていること・被告人の年齢が85歳という高齢であることなどを考慮し、禁錮2年にとどまりました。

被害者遺族は厳罰を望んでいたとのことです。

平成30年(わ)第280号 過失運転致死被告事件

判決:禁錮3年

運転中スピードメーターに気を取られ、被害者車両の運転者および子供2名を死亡させた事故です。

被告人の前方不注視が原因で生じた追突加害事故であり、結果は重大でした。

また、被害者である子供2名は、それぞれ2歳と生後3か月でした。
被害者遺族も厳罰を望んでいたとのことです。

他方、被告人の過失についてはことさら危険なものとはいえないこと、保険会社より適正な賠償が見込まれることなどから、禁錮3年にとどまりました。

令和元年(わ)第549号 過失運転致死被告事件

これら実刑判決となった裁判例を見てみても、被害者の処罰感情が、刑罰の決定要素となっていることがわかります。
やはり、弁護士を介した被害者対応は重要といえるでしょう。

過失運転致死罪(死亡事故)で逮捕はされる?流れは?

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死亡事故は明らかに重大な事故ですが、事故の原因はあくまで「過失」です。
そのような場合であっても逮捕され、身柄拘束されてしまうのでしょうか?

結論を申し上げますと、死亡事故など「被害が重大」なケースにおいては逮捕されることがあります。
逆に、被害者が死亡していない過失事故などの場合は、逮捕を含む身体拘束はされない可能性が高いのです。

過失運転致死罪などの逮捕要件とは

事故の原因が過失ではなく、故意性が前提とされる「危険運転致死傷罪」やひき逃げ事故の場合、逮捕される可能性はさらに高まります。

そもそも逮捕とは、捜査機関が犯罪の捜査をおこなう間、被疑者を逃がさないために身体拘束するものです。
逮捕には法律上要件があり、以下を具備した場合に実行されます。

危険運転致死傷罪に該当するケースでは、事故現場で現行犯逮捕されるケースもあるでしょう。

逮捕の要件

過失運転致死の逮捕後の流れは?

事故の被害が重大である場合などで、実際に逮捕されたあとの流れについてみてみましょう。

刑事事件の流れ

逮捕後は、刑事訴訟法の手続きにのっとり進行します。
逮捕から48時間以内は警察の取り調べ、その後24時間は検察の捜査となります。

逮捕後釈放されない場合、上記72時間は家族とも面会できません。

その後勾留請求されてしまった際はさらに最長20日間の勾留となりますが、釈放された場合には帰宅できます。

勾留満期をむかえますと、検察官による起訴もしくは不起訴処分の判断があり、起訴された場合は刑事裁判となります。

この先に用意されているのが、刑罰です。
ただし、無罪判決を得た場合を除きます。

この章の内容をまとめたものは、以下のとおりです。

  • 交通事故で逮捕される可能性が高いのは、重大な事故とされる死亡事故や、危険運転致死傷罪などの悪質な事故
  • 逮捕は、嫌疑・罪証隠滅や逃亡のおそれがあるときにされる
  • 逮捕後の流れは刑事訴訟法にのっとり進行するが、釈放される場合もある

過失運転致死罪で実刑を回避するためには?

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最後に、実刑を回避するために、交通事故加害者がやっておきたいことについて触れていきましょう。

過失運転致死罪の実刑回避のために|第一に弁護士相談

まずは何より、刑事事件に詳しい弁護士に相談しましょう。
死亡事故について、実績のある弁護士であれば安心です。

弁護士相談のうえ、ご自分の事故について処分の可能性を見極めてもらうことが重要です。
また、処分の見通しから、刑の減軽の可能性・対策についても把握しておきましょう。

過失運転致死罪の実刑回避のために|起訴後の弁護であっても示談を

弁護士依頼のタイミングは早いにこしたことはありませんが、起訴後であっても可能です。

また、起訴前であっても起訴後であっても、被害者との示談は最重要項目といえます。

その理由はまさに、起訴後弁護であったとしても、執行猶予がつくかつかないかの分かれ道となる可能性が高いからです。

また、かりに実刑判決が予想されていた場合であっても、示談の成立により被告人の刑事責任の軽減が認められます。

示談に加え、被告人の謝罪文を添付することも有効です。

単に反省の気持ちを口頭で話すのではなく、書面にしたためる準備をしましょう。

謝罪文の文面については、弁護士のアドバイスも可能です。

示談が受け入れられなかった場合は?

死亡事故の場合、被害者の被害感情・処罰感情が大きいケースが容易に想定されます。
そのようなケースでは、被害者に示談金を受領してもらえない場合もあるでしょう。

弁護活動においては、以下の方法をとることもあります。

  • 被害者の受領拒否を理由として、法務局に供託する
  • 贖罪寄付する

被害者の感情は、実際に示談交渉してみないことにはわかりません。

過失運転致死罪の疑いがある・過失運転致死罪として起訴された方は、早期の被害者対応について弁護士相談しましょう。