岡野武志

第二東京弁護士会所属。刑事事件で逮捕されてしまっても前科をつけずに解決できる方法があります。

「刑事事件 法律Know」では、逮捕や前科を回避する方法、逮捕後すぐに釈放されるためにできることを詳しく解説しています。

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ひき逃げとは|ひき逃げ事件の内容や罰則・逮捕の流れを解説

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令和2年の犯罪白書によれば、ひき逃げ事件の検挙率は、平成17年以降年々上昇しているとのことです。

ひき逃げとは、負傷者を救護しなかったことにより成立する犯罪です。

ひき逃げをした本人の心理的状態には、怖くて逃げてしまったなどというものもあります。
実際に交通事故を起こした人間でないとわからない心境でもあり、交通事故それ自体は、運転者であれば誰しもの身に起こりうるものといえるでしょう。

当記事では、実際にひき逃げを起こしてしまった方やそのご家族に向け、ひき逃げとは何か・ひき逃げをしてしまった場合の逮捕の流れ・刑罰などについて解説していきます。

  • ひき逃げしてしまったかもしれない
  • 家族がひき逃げ事件を起こした
  • ひき逃げの罪について誰かに相談したい

などの心配ごとをお持ちの方は、ぜひお読みください。

  • ひき逃げってそもそも何?行為や罰則はどうなっている?
  • ひき逃げ事件で逮捕されたらどうなる?逮捕後の流れが気になる
  • ひき逃げ事件(交通事故)の示談はどのようにしたらいい?

ひき逃げとは|運転者の義務や罰則など

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ひき逃げとは?行為と罰則

ひき逃げの定義・罰則について確認しましょう。

ひき逃げとは

ひき逃げとは、人の死傷をともなう交通事故において、現場で必要な措置を講じなかったことをいいます。
つまり、交通事故現場から負傷者を救護することなく(救護義務違反)逃げる行為をいいます。

以下が根拠条文です。

(交通事故の場合の措置)第七十二条 

交通事故があつたときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(以下この節において「運転者等」という。)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。
この場合において、当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員。以下次項において同じ。)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(派出所又は駐在所を含む。以下次項において同じ。)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならない。

道路交通法第72条

ひき逃げの罰則は、10年以下の懲役または100万円以下の罰金です。

ひき逃げで起訴され有罪になった際に、適用されます。

ひき逃げをしても不起訴処分で済んだ場合は、刑罰は適用されず前科もつきません。

さらには、ひき逃げで相手に怪我をさせたり死亡させたりした場合は、以下の罪名・罰則も適用されます。

過失運転致死傷罪

過失(不注意)により、他人を死傷させた場合に成立します。
過失は故意ではありませんが、罰則が適用され、有期懲役や罰金刑などに科されます。
具体的には、7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金刑です。
また、過失については重過失である必要はありません。
わき見運転や方向指示を出さなかったことも、本罪の過失にあたります。

危険運転致死傷罪

こちらは過失運転とは違い、運転者の危険な行為により相手を死傷させた場合に成立します。
つまり過失ではなく、「故意」が要件となるのです。
具体的には飲酒運転や幅寄せなどのあおり運転などが該当し、人を負傷させた場合の罰則は15年以下の有期懲役です。さらに人を死亡させると1年以上の有期懲役となります。
有期懲役の上限は、平成17年より15年から20年に引き上げされています。
つまり危険運転致死罪に問われた場合、刑務所で最大20年間過ごす可能性があるということです。

過失運転致死傷罪や危険運転致死傷罪は、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」に規定されています。

また、複数の罪名に該当し「併合罪」とされる場合でも、道路交通法違反の刑罰とその他の刑罰を単純に加算するわけではありません。
特殊な計算により量刑は定まりますが、交通事故の態様により一概に決まるものではない点については、どの犯罪においても同じです。

ひき逃げとは?当て逃げの違い

ひき逃げに似た違反に、「当て逃げ」があります。

当て逃げとは、おもに物損事故における違反です。

当て逃げとは

他人の車などに接触したにもかかわらず、車を停車させるなどせず、その場から走り去ることをいいます。

単に物損事故であれば、被害者に物の損害を賠償して解決を図ることになるでしょう。

しかし現場から逃げる行為をした場合は以下の規定が適用され、罰則を受けることになります。

第百十九条 

次の各号のいずれかに該当する者は、三月以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。

(中略)

 第七十二条(交通事故の場合の措置)第一項後段に規定する報告をしなかつた者

道路交通法第119条

「ひき逃げ」の項目で提示したように、道路交通法第72条では、交通事故を起こした者に対し、停止義務や警察への報告義務などを課しています。

それら項目に違反した者については、上記罰則が適用されることになるのです。
もちろん、被害者への賠償とは別問題であり、あくまで道路交通法の義務は刑事責任となります。

交通事故で加害者が取るべき責任には、刑事責任・民事責任・行政責任(行政処分)があります。

では次章において、引き続き交通事故の刑事責任について解説していきましょう。

ひき逃げとは|逮捕・起訴されたあとの流れについて

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ひき逃げで逮捕された場合の流れ

まずもって、ひき逃げを起こした加害者は、たとえ被害者への賠償を果たせる場合であっても逮捕される可能性があります。

ただし逮捕は刑事手続きですので、あくまで「犯罪」に該当する可能性がある場合のみされることになります。
犯罪の嫌疑がある場合、交通事故を起こした現場からパトカーなどに追われ現行犯逮捕されるケースも多いでしょう。

逮捕には要件があります。

そのうちの1つに、「逃亡のおそれがある」ことが挙げられます。

ひき逃げは、事故現場から逃走している時点で、逮捕要件を満たす可能性が高いでしょう。

では、ひき逃げで逮捕に至る例を挙げてみましょう。

ひき逃げで逮捕される例と罪名
  • 人を轢いてしまったとわかっていて現場から逃走し、相手に怪我をさせてしまった。
    過失運転致傷罪および道路交通法違反
  • 車対車の事故で相手に接触し、その場から逃走。相手は死亡した。
    過失運転致死罪および道路交通法違反
  • スピード違反(法定速度オーバー)で人を轢き、救護などの措置をとることなく逃走。相手は重傷を負った。
    危険運転致傷罪および道路交通法違反
  • 飲酒運転をし、人を轢いたがその場から逃走。相手は死亡した。
    危険運転致死罪および道路交通法違反

では、逮捕後の流れについてご説明します。

ひき逃げで逮捕されると、約2~3日自宅に帰れなくなる可能性があります。

逮捕の流れ

上の図は、逮捕されてから検察官に起訴されるまでの流れです。

逮捕後2~3日というのは、逮捕から約72時間をさしているのであり、その間はひき逃げについての取り調べをされる期間です。
その間は警察の留置場にて生活を強いられることになり、誰とも面会できません。

この期間に面会ができるのは、被疑者やご家族が弁護士面会を依頼した場合のみです。

1回限り無料の接見(面会)を依頼できる当番弁護士や、自分で選任できる私選弁護士を依頼することができます。

逮捕から2~3日、被疑者の外部接触の手段は、弁護士面会以外にありません。

逮捕から72時間は、検察官が勾留請求するかしないかを決定できる期間です。

勾留が決定した場合は、最大20日間身柄拘束期間が延長されます。
勾留請求されずに釈放されることもありますが、ひき逃げは悪質であると判断されやすく、勾留決定される可能性が高いといわれています。

その後起訴されてしまいますと、保釈された場合を除き、さらに1ヶ月から2ヶ月間拘束されることになるでしょう。

ひき逃げで起訴されたらどうすればいい?

起訴とは、検察官が公訴提起することをいいます。

起訴されると起訴状が手元に届きますので、内容を検討し、刑事裁判に臨むことになります。

起訴状が届いたら、弁護士に今後について相談しましょう。

起訴されてからでも、弁護士に依頼することは可能です。
刑事弁護を依頼することにより、刑を軽くするなどの効果が期待できます。

たとえば懲役刑でも執行猶予がつくなど、ただちに刑務所に収監されなくても済むような判決を獲得できる場合があるでしょう。

刑事弁護を依頼した場合、弁護士はまず被告人の保釈請求を検討するでしょう。
保釈されますと、自宅で裁判期日を待つことになります。

その後は弁護士と、裁判(公判)に向けた証拠集めや準備を進める段取りをします。

ひき逃げには示談が有効・示談については弁護士へ

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ひき逃げで逮捕後、弁護活動としては、加害者の処分・刑の減軽に重点を置くことになります。

処分や刑の減軽にもっとも有効なのは、被害者との示談です。

示談とは「和解」のことをいいます。

両者の話し合いでの解決を原則とし、形式は問いません。

車を運転する方のほとんどは、任意保険に加入しているかと思います。
任意保険には「示談代行サービス」がついていますので、民事的な示談交渉・示談金の支払いは、通常保険会社が加害者に代わっておこないます。

示談は一見、刑事事件とは何の関係もないように思えますが、示談が成立したという事実を捜査機関や裁判所に報告することによって、今後の処分や刑罰に影響が出るとされているのです。

任意保険に加入していない方は、弁護士による示談交渉を依頼しましょう。
特にひき逃げ事件の場合、被害者の処罰感情が大きいことが十分に想定されます。
細心の注意を払った第三者(弁護士)による示談交渉でなければ、決裂の恐れがあります。

また、刑事事件における裁判所などとのやり取りは、弁護士が間に入らなければ困難ですので、処分が確定する前にスムーズな準備を進めておくことが重要です。