岡野武志

第二東京弁護士会所属。刑事事件で逮捕されてしまっても前科をつけずに解決できる方法があります。

「刑事事件 法律Know」では、逮捕や前科を回避する方法、逮捕後すぐに釈放されるためにできることを詳しく解説しています。

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自撮りの児童ポルノを送信させたら罪になる?罪の内容と逮捕の流れ・対策

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この記事にたどり着いた方は、以下のような経験をした方ではないでしょうか?

  • インターネットで知り合った中学生に、自撮りのわいせつ画像を送信させた
  • コミュニティサイトやSNSで知り合った高校生に、自撮りのわいせつ動画を送信させた

自己の欲求のまま、上記のような行為を中学生や高校生にさせた場合、取り返しのつかない結果になる可能性があります。

通常、中学生や高校生である男女は、各法律の「児童」にあたるケースが多いです。

また、児童にわいせつ行為をしただけでなく、わいせつ画像やわいせつ動画を通じてやり取りをしただけでも、罪になる可能性があります。

当記事では、児童ポルノ禁止法について解説し、警察などの捜査機関に発覚したあとの流れや、その後の対策について言及していきましょう。

  • 児童ポルノの被害とは?児童ポルノ禁止法では何が規制される?
  • 児童ポルノの自撮りを送信させ、逮捕されたらどうなる?
  • 児童ポルノの自撮りを送信させたが逮捕や起訴を免れたいときはどうすればいい?

自撮りの児童ポルノで逮捕される場合を解説

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児童ポルノ禁止法違反とは

児童ポルノ禁止法は、正式名称で「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」といいます(以下、児童ポルノ禁止法と略します)。

この法律は、18歳未満の児童に対する「性的搾取」や「性的虐待」から児童を守ることを目的としています。

児童への性的搾取などは、児童の心身に有害な影響を及ぼす可能性があるからです。

また、昨今コミュニティサイトやSNSなどをきっかけに児童と容易に知り合うことができ、そのやり取りのなかで起きる犯罪が増加傾向にあります。

では、児童ポルノ禁止法の根本的な違反についてみていきましょう。

この章では、以下順番に解説していきます。

  1. 児童ポルノ禁止法で規制されている「児童ポルノ」とは?
  2. 児童ポルノをどうしたら罪になる?規制行為について
  3. 児童ポルノの罰則は?

児童ポルノの定義は、児童ポルノ禁止法第2条にかかげられています。

何が児童ポルノにあたる?
  1. 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態
  2. 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
  3. 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、でん部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの

児童の性交に関する姿でなくとも、たとえば性器を撮影させた画像や動画というだけで、児童ポルノに該当するでしょう。

それら画像などを自己のスマホなどに送信させた場合は、以下ご説明する「禁止行為」に該当します。

児童ポルノ禁止法で規制される行為について、わいせつ動画や画像の自撮りに関する部分をみていきましょう。

第7条に規定されています。

児童ポルノの禁止行為(児童ポルノ所持、提供等

第七条 
自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持した者(自己の意思に基づいて所持するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る。)は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。自己の性的好奇心を満たす目的で、第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録を保管した者(自己の意思に基づいて保管するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る。)も、同様とする。
2 児童ポルノを提供した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供した者も、同様とする。
3 前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
4 前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。
5 前二項に規定するもののほか、ひそかに第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。
6 児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を不特定又は多数の者に提供した者も、同様とする。
7 前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
8 第六項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを外国に輸入し、又は外国から輸出した日本国民も、同項と同様とする。

児童ポルノの自撮り・自画が問題とされる場合、上記4項に該当するでしょう。

児童ポルノ禁止法では、児童ポルノをどのように利用したかによって罰則などを定めています。
4項は「児童ポルノ製造」とされるもので、1項の行為(所持・保管)より罰則が重くなっています。

自撮り画像などの児童ポルノを製造した場合の罰則は、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金刑と規定されています。

単純所持などと比較すると、以下のようになります。

児童ポルノ単純所持・保管1年以下の懲役又は100万円以下の罰金
児童ポルノ提供・製造・輸出入3年以下の懲役又は300万円以下の罰金
児童ポルノを公然と陳列5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金

上記罰則が適用されるのは、逮捕後起訴された場合です。

なお、児童ポルノ禁止法違反以外にも、児童とみだらな行為をした場合には、以下に該当するケースもあります。

  • 各都道府県で制定されている青少年保護育成条例(淫行条例)違反
  • 児童買春
  • 児童福祉法違反

条例・罰則は都道府県ごとに異なりますが、たとえば東京都青少年の健全な育成に関する条例18条の7によりますと、 児童ポルノに該当する自撮りを要求した場合、30万円以下の罰金刑を科せられる可能性があります。
児童ポルノの製造といえなくても、自撮りを要求しただけで罰則が適用されてしまうのです。

自撮りの児童ポルノで逮捕される?

先述のご説明どおり、自撮りの対象が18歳未満の児童である場合、逮捕される可能性があります。

また、逮捕後検察官に起訴されてしまった場合は、罰金刑や懲役刑が科せられる可能性があるのです。

逮捕の話に戻ります。

なんとなく犯罪の嫌疑があるからという理由で、逮捕されるわけではありません。
逮捕には一定の要件があります。

逮捕の要件

児童ポルノに関する罪のなかでも、児童に下着の中などを自撮りさせ、送信させるという製造行為は、逮捕の可能性が高いとされています。

単純所持などは、最終的に対象画像などを削除した場合逮捕されない可能性もあります。

児童ポルノ製造の場合、逮捕の要件である「証拠隠滅」の可能性を疑われることが考えられるのです。
また、無理矢理画像などを送信させた場合のみ逮捕されるのではありません。

わいせつ画像や動画の自撮り・送信をするよう指示したのみでも逮捕されることはあります。

児童ポルノで逮捕されたら?流れについて

では実際に、自撮り画像や動画を送信させたことが発覚したケースをみていきましょう。

児童ポルノ製造違反で逮捕にいたるまで、以下の流れをたどることが考えられます。

児童ポルノ製造の発覚から逮捕まで

  • 児童が保護者に相談し、事件に発展
  • 児童の保護者が警察に被害届を出す

被害届は、かならずしも警察の捜査を強制するものではありません。

しかし、昨今の児童に関する犯罪の増加につき、捜査態勢が厳しくなっているのが現状です。

被害届が出された場合、捜査のきっかけになる可能性があることは確かです。

つぎに、逮捕されてしまった場合の流れをみていきましょう。

逮捕の流れ

逮捕直後から72時間は、取り調べの期間であり誰とも連絡が取れません。

その後検察官の調べを受け、勾留請求されてしまった際には、さらなる身柄拘束が続きます。

児童ポルノ禁止法違反で勾留請求される可能性はけっして低くはなく、被疑者は長期間孤独な時間を過ごすことになるでしょう。

そのまま起訴までされてしまった場合には、無罪判決を獲得した場合を除き、前科がついてしまうことになります。

次章では、これら被疑者・被告人の不利益を解消するために必要な対策について解説していきましょう。

自撮りの児童ポルノで逮捕されたらすべきこと

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弁護士接見を依頼する

逮捕中、弁護士接見をする方法は以下のとおりです。

  • 当番弁護士を呼ぶ
  • 私選弁護人に接見依頼する

当番弁護士制度は、各弁護士会ごとに当番の弁護士を置き、被疑者本人や家族の依頼によって接見に応じてくれる制度です。

無料で弁護士接見を依頼できるのはメリットといえますが、一度きりの接見依頼であり、弁護士を選ぶこともできません。

そのぶん私選弁護士であれば、有料ですが信頼できる弁護士を選ぶことができます。

また、一度きりの依頼ではないため、その後の弁護活動も依頼できます。
私選弁護人であれば身柄事件(逮捕されている事件)でなくとも弁護活動をしてくれるため、被疑者にとって制限がありません。

では、身柄事件における弁護士接見のメリットについて解説いたします。

弁護士接見のメリット
  • 職場や学校に知られずに済む
  • 被疑者にとって不当な拘束を受けずに済む
  • 被疑者の取り調べが不利にならない

弁護士接見のメリットのひとつとして、長期の身柄拘束から解放される可能性があげられます。

弁護士による身柄解放活動により、逮捕を免れたり、逮捕後であれば勾留請求されなかったりする可能性が高まるのです。

無事に身柄解放が成功すれば、職場や学校に復帰できるため、逮捕の事実が明るみにならずに済みます。
また、不当な拘束は被疑者の権利侵害とされるケースがあります。
そのような状況から解放されるよう訴えることもできるでしょう。

逮捕前であれば警察に、逮捕後であれば、勾留請求・決定の権限がある検察官や裁判官に訴えていきます。

つづいて被疑者の取り調べにおけるメリットについて解説します。

弁護士接見により、被疑者の権利行使の手助けや、違法捜査を抑止することができます。

弁護士接見でできること内容
権利行使の手助け・説明黙秘権・供述調書署名・押印拒否権など
孤独と不安の解消立会人なし・時間制限なしの接見が可能
違法捜査の抑止取り調べのアドバイスなど

児童ポルノの被害者と示談する

被害者のいる犯罪において、被害者との示談は欠かせません。

また、示談締結にいたるまでの被害者との接近・交渉は弁護士しかできません。

弁護士接見でのアドバイスを受けたあとは、示談を急ぐことを検討しましょう。

示談は起訴前が鉄則です。

起訴前に示談をすることにより、検察官が起訴せず「不起訴処分」をくだす可能性が非常に高くなります。

くり返しになりますが、児童を対象とした犯罪は悪質な部類に判断されます。

よって、示談ができていない児童ポルノ事件の処分は、厳しいものが想定されます。

示談とは

示談により両者の和解が成立すれば、被害届の取下げ嘆願書の作成を被害者に依頼できるケースもあります。

嘆願書とは、被疑者の減刑などを求める旨、記載する書面です。

示談成立後、起訴前であれば、もろもろの資料は検察官に提出することになります。

児童ポルノの被害者について、児童本人ではなく、親権者である親御さんとの示談が想定されます。
よって処罰感情が大きくなりやすい傾向が考えられるため、とくに児童ポルノの示談に慣れた弁護士に依頼することが重要です。