岡野武志

第二東京弁護士会所属。刑事事件で逮捕されてしまっても前科をつけずに解決できる方法があります。

「刑事事件 法律Know」では、逮捕や前科を回避する方法、逮捕後すぐに釈放されるためにできることを詳しく解説しています。

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出し子でも逮捕される?弁護士依頼や被害者との示談が有効な理由も解説

振り込め詐欺(オレオレ詐欺)などの特殊詐欺で、逮捕される被疑者は後を絶ちません。

振り込め詐欺の場合、被害者宅に電話をかける役割をする「かけ子」・被害者と実際に会い、金銭等を受け取る役割をする「受け子」・現金をATMから引き出すなどの末端の役割である「出し子」とがあります。

かけ子や受け子が詐欺で逮捕されたというのはよく聞く話ですが、出し子であった場合も逮捕されてしまうのでしょうか?
出し子と聞くと、単に現金を引き出しただけなので罪に問われないのではないか?と思われますが、後述するように、出し子であっても逮捕される可能性は極めて高いといえます。

  • 出し子は何の罪に問われるの?
  • 出し子で逮捕されたらどうなる?
  • 出し子が未成年だった場合逮捕後はどうなる?

当記事では、上記の疑問に添って解決していきます。
出し子といえど、組織犯罪に絡んでいたことは間違いなく、場合によっては初犯であっても起訴される可能性があります。
まずは出し子の罪名などについて知っていただき、身柄拘束が長期になりそうな場合は、弁護士相談を視野に入れておきましょう。

出し子で逮捕される場合とは?

出し子は窃盗罪で逮捕されることが多い

出し子であっても、逮捕される可能性は十分にあります。

比較的量刑の重い特殊詐欺の末端の役割を担っていたわけですから、逮捕そのものを免れることは難しいでしょう。
また、出し子の逮捕がきっかけで、受け子やかけ子などがひもづる式で逮捕されることもよくある話です。

特殊詐欺の役割のひとつである「出し子」ですが、かけ子や受け子のように詐欺罪で逮捕されるわけではありません。
なぜなら詐欺の要件を満たさない可能性があるからです。

出し子で逮捕される場合、以下の「窃盗罪」として罪に問われることが大半です。

(窃盗)第二百三十五条 

他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

刑法235条

窃盗罪の構成要件は以下です。

  1. 他人の財物を
  2. 不法領得の意思をもって
  3. 窃取した

構成要件とは犯罪を成立させる要件をいいます。
窃盗罪は「財産罪」にあたります。

出し子の場合、他人のATMから勝手に金銭を引き出す行為に当たりますので、上記の窃盗罪に該当する可能性があるのです。

他人の占有する財物」とは、他人の占有下にあるものという意味です。
ちなみに、行為の客体が他人の占有下にあるものでなく、自分の占有下にあるもの(預かっていたものなど)であれば窃盗罪でなく横領罪に該当するでしょう。
また、他人が所持・管理している財産であることが要件となります。

不法領得の意思」とは、上記他人の占有下にあるものを移転させる意思(盗取)です。
少し難しいですが、簡単にいえば「不法に他人の所有物を自分のものにした」ということです。
判例上の表記では、「権利者を排除して他人の物を自己の所有物として」「その経済的用法に従い、利用、処分する意思」とされています。

窃盗罪は被害者の意思に反したものであればよく、手段が何かについては問われていません。

出し子と受け子の違い

さきほど少し触れたとおり、単に金銭を引き出す役目の出し子と違い、かけ子や受け子であれば詐欺罪で逮捕されることになるでしょう。
受け子も金銭を受け取る役割を担いますが、そもそも警察や市役所の人物を装ったり、被害者の親族を装ったりするケースが多く、そのような行為自体が以下に言う「人を欺く行為」となるのです。

(詐欺)第二百四十六条 

人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。

 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

刑法246条

ATMから金銭を引き出すだけの行為であれば、相手を欺いたことにはならず詐欺罪は成立しません。
詐欺罪は欺く行為(欺罔(ぎもう)行為)のほか、故意性や被害者が錯誤に陥るなどの構成要件を必要とします。

出し子で逮捕された場合の流れ

逮捕から勾留決定まで

刑事事件の流れ

警察官は、被疑者逮捕後48時間以内に検察官に送致しなければなりません。
ただし、送致の必要がなければ釈放される場合もあります。
その場合被疑者の身柄は解放されますが、送致されてしまえば検察庁での取り調べがなされるでしょう。

検察官は、送致から24時間以内に被疑者を勾留するか釈放するのかを決めなければなりません。
勾留は、以下の要件を満たしたときに決定されます。

  1. 罪証隠滅を疑うに足りる相当な理由があるとき
  2. 逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき
  3. 勾留の必要性があるとき

勾留は被疑者の身柄を拘束し、一挙手一投足を厳しく監視するものです。
よって勾留の必要がない場合は、速やかに身柄解放の必要があると考えます。
たとえば被疑者の心身の状態が悪いときは、診断書などを提出することによって、弁護士による身柄解放活動ができる場合があります。

勾留決定されると、被疑者の身柄は10日間留置場などで拘束されます。
勾留延長されてしまえば、さらに最大10日間の身柄拘束が続くことになります。

勾留延長の満期日から起訴・不起訴の判断まで

検察官により勾留延長の請求をされた場合は、裁判官に対して「(勾留延長をするような)やむを得ない事由」がないことを訴えることで身柄解放されるケースもあります。
たとえば10日間の勾留中、一度も取り調べがないなど、捜査機関が漫然と捜査していた場合などは「やむを得ない事由」があるとは考えにくいでしょう。

勾留請求前・勾留決定後は刑事事件の段階が異なります。
各段階に応じて身柄解放活動ができることも多いですので、出し子で逮捕された場合は早めに弁護士に相談しておくと安心です。

つづいて、勾留延長後についてです。

勾留延長の満期日は、延長が10日間であれば、1回目の勾留満期日の翌日からカウントして10日目です。
その日に決裁がおこなわれ、被疑者を起訴するのか不起訴にするのか検察官による判断がなされます。

不起訴になれば事件は終了ですが、起訴された場合は前科がつくことが避けられません。
なお、出し子つまりは窃盗罪であれば、起訴後は正式裁判となるか罰金刑となるかで分かれます。
罰金刑となれば「略式裁判」となり、被疑者の身柄はまもなく解放されるでしょう。
罰金刑となっても、すでに起訴されているため前科はつきます。

出し子で逮捕されたらまずは弁護士に接見依頼

出し子で逮捕されたら、弁護士への相談がおすすめです。
その理由は以下です。

  1. 出し子は組織犯罪の末端であるため真っ先に逮捕されて捜査されることも多い。
    →出し子だけの役割であっても、周辺捜査がおこなわれ、共犯者が割り出されるまで捜査が続く可能性が高い。
  2. 出し子が組織犯罪がらみである以上、接見禁止がつきやすい。
    →接見禁止がつくと弁護士以外面会ができず、家族は被疑者に会うことも事件の詳細を知ることもできない。

上記1については、弁護士に相談・依頼することで早期の身柄解放活動が可能です。
2について、弁護士であれば、接見禁止の一部解除申し立てをすることが可能です。
なお、接見禁止の解除申し立ては、接見禁止の決定をおこなった裁判所となります。

否認事件(自分は出し子をしていないと主張すること)であれば接見禁止はつきやすくなります。
もっとも、自白事件であっても、振り込め詐欺などの特殊詐欺犯罪の場合接見禁止がつくことは珍しくありません。

接見禁止がついてしまうと、勾留中の不安感に加え、被疑者の精神はさらに追い込まれることになるでしょう。
被疑者のご家族は、初回の接見だけでも弁護士に依頼しておくと安心です。
初回の接見だけを弁護士に依頼することは可能であり、その後の受任とは切り離して依頼することも可能です。

逮捕された出し子が未成年だった場合は?

出し子で逮捕された人の大半は、比較的年齢が低いのが特徴です。
質の悪い求人などで出し子のアルバイトを募集していることもあり、小遣い稼ぎでついつい犯罪と知らずに手を出してしまうこともあるのです。

先述のとおり、出し子が成人である場合、逮捕後は最終起訴か不起訴かの判断がおこなわれます。
ただし未成年の出し子が逮捕された場合は、起訴不起訴の根拠となる刑事訴訟法が適用されません。

未成年は、成人のように検察官による判断が下されません。
その代わりに、どのような事件であっても全件家庭裁判所に送致されるやり方が採用されています。
このことを、「全件送致主義」といっています。

刑事事件において、成人である場合と少年(未成年)とを区別する根拠は、少年の精神が発達途上な点にあります。
成人のように処罰対象とするのではなく、「教育」という観点から、改善更生を目指す考え方が採用されているのです。
よって、出し子が未成年である場合は、その処遇は家庭裁判所にゆだねられています。

少年事件のPoint

少年事件であっても、捜査段階では成人と変わりありません。
よって、捜査段階では刑事訴訟法が適用されます。
成人同様、逮捕後は勾留要件を満たせば勾留されてしまいますが、少年の場合最大10日間の「勾留に代わる観護措置」がとられることもあります。

出し子でも示談が有効な理由

示談がポイント

これまで、振り込め詐欺などの出し子であっても罪に問われることについてはお話ししてきました。

いくら組織犯罪の末端であっても、犯罪であることには変わりなく、そのかたわらで詐欺の被害者もいます。
出し子であれば被害者と直接顔を合わすことも少ないですが、それでも逮捕後は被害者との示談成立が有効です。

出し子で逮捕された場合であっても、被害者と示談ができた場合は、身柄解放活動や不起訴に向けた活動が可能になります。

身柄が拘束されている間、被疑者にとっては以下のような要素が不安となるでしょう。

  • 身柄拘束期間が長くなると、会社をクビにならないかが心配
  • 長期間学校に行けなくなると、周りに噂されたり進学に響いたりするのが心配

被害者との示談書などが証拠として存在していれば、捜査機関である警察や検察官に提出することにより、不起訴になる可能性は高くなります。
なぜなら示談は、当事者間でその事件が解決している要素となりえるからです。

逮捕後、在宅捜査にならない限りは、起訴後さらに身柄拘束が続きます。
出し子で逮捕されてしまったら、なるべく早く弁護士に相談しましょう。