岡野武志

第二東京弁護士会所属。刑事事件で逮捕されてしまっても前科をつけずに解決できる方法があります。

「刑事事件 法律Know」では、逮捕や前科を回避する方法、逮捕後すぐに釈放されるためにできることを詳しく解説しています。

被害者との示談で刑事処分を軽くしたい、前科をつけずに事件を解決したいという相談は、アトム法律事務所にお電話ください。

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痴漢で公務員が逮捕されたらどうなる?公務員の懲戒処分やリスク・対策を解説

公務員の痴漢事件について解説しています。

近年警察官など、公務員による性犯罪の報道を目にする機会も多くなりました。
公務員の場合、立場上大きく報道されてしまうことも珍しくありません。

実際に痴漢事件の被疑者になってしまった場合、逮捕後の流れや刑事処分については特に、今後について不安が多い要素ではないでしょうか。

また、公務員は民間の会社員と違い、在職中の懲戒処分の内容などが異なります。
国家公務員または地方公務員の立場上重要視されるリスクや対策、痴漢事件そのものについての疑問を解決していきましょう。

  • 「痴漢」とは?罪名や刑罰・逮捕の可能性は?
  • 痴漢事件の被疑者が公務員だった場合の流れや処分はどのようになる?
  • 公務員という立場上、重要視したい痴漢事件の対策とは?

痴漢とは

痴漢の罪名・刑罰

痴漢で成立しうる罪名と刑罰について解説いたします。

痴漢とは、相手の意に反し、卑猥な行為などをおこなう性的な嫌がらせをいいます。
例えば満員電車などの公共交通機関で、被害女性(男性)の胸や臀部を触る行為です。
また、行為が行き過ぎたものになると、罪名が変わることもあります。

迷惑防止条例に該当するケース

迷惑防止条例は、各47都道府県、および一部の市町村で規定されています。
迷惑防止条例で禁止されている行為には、痴漢行為のほかに盗撮などがあります。

各都道府県により条例の名前は異なりますが、痴漢「行為」の内容については基本的に同じです。
「卑猥な行為」のみをおこなった場合、すなわち被害女性(男性)の身体を触るなどした場合は、迷惑防止条例が成立することになります。

東京都の迷惑防止条例違反の刑罰は、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金刑とされています。

なお、常習性が高いと判断されたケースですと、1年以下の懲役または100万円以下の罰金刑に処されることもあります。

初犯かそうでないか、またその他の事情によって、量刑も変わってくるでしょう。

つぎに、「行き過ぎた痴漢行為」に及んだ場合の罪名について言及いたします。

強制わいせつ罪に該当するケース

強制わいせつ罪は、刑法に規定された犯罪です。

迷惑防止条例より重い刑罰が科せられる上、一定の要件も加わります。

(強制わいせつ)第百七十六条 

十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

刑法176条

強制わいせつは、暴行または脅迫を要件としています。

脅すなどしてわいせつ行為に及んだ場合、強制わいせつ罪が成立しえます。

被害者が13歳未満だった場合は、暴行または脅迫の要件を必要としません。
なくても成立します。

強制わいせつ罪は、電車内の痴漢行為にも該当することがあります。
たとえば被害者の意に反して、下着の中に手を入れ陰部を触った場合などは、条例違反でなく刑法上の犯罪に該当することがあるのです。

強制わいせつ罪は、痴漢行為のなかでも悪質なケースに該当するといえます。

痴漢行為から逮捕まで

痴漢行為から逮捕までの流れについてご説明します。

逮捕の流れ

痴漢行為で逮捕された場合、まずは警察署に連行されます。
その後は留置場などに収監されることになり、2~3日はご家族と連絡を取ることも許されません。

また公務員の場合、逮捕時点で報道されることも珍しくありません。
痴漢事件は公務員であっても逮捕後勾留請求される可能性が高く、勾留期間は、最大20日間もの長期に及びます。

逮捕の対策についてですが、逮捕直後であっても、弁護士による面会(接見)を利用することが可能です。
接見では、依頼された弁護士が直接逮捕された公務員の元へ行き、留置場などで時間制限なく面会をすることができます。
今後の立場について不安な場合、大きなリスク回避のためにも、逮捕後は真っ先に弁護士相談を検討しましょう。
ご家族からの接見依頼も可能です。

痴漢行為をした場合の刑事上の罰則、逮捕の規定は、公務員であっても会社員であっても同じです。
つづいて、会社員との違いがある公務員の懲戒処分などについて言及していきましょう。

痴漢行為をしたのが公務員だったら?

痴漢行為をしたら公務員は懲戒処分される?

まず大前提としていえるのは、公務員であっても会社員であっても、逮捕後ただちに懲戒処分を受けるというわけではありません。
懲戒処分の対象となるのは、基本的には有罪となった場合です。

刑事裁判によって有罪判決を得るまでは、犯罪事実の存否が明らかになっていないためです。

有罪になるまでの流れについて、図で確認してみましょう。

刑事事件の流れ

痴漢事件の被疑者となった場合、公務員であっても起訴されるタイミングは会社員と同じです。
身柄事件の場合、逮捕後、捜査・勾留期間を経て勾留満期を迎えると、検察官の判断により起訴されるか不起訴処分になるかが決まります。

起訴されてしまった場合は、99.9%有罪になるといわれており、その後刑事裁判に移行します。
なお、起訴後は、被疑者から「被告人」へと呼び方が変わります。
不起訴処分になれば事件は全て終了し、被疑者に前科がつくことはありません。
逆に、起訴されて有罪判決を経た後は前科がつくことになり、公務員の職を失う可能性が出てくるのです。

起訴されても無罪判決を得た場合は別ですが、有罪となり前科がついてしまうと、公務員という職務上の立場が危うくなってしまいます。

公務員の立場を守るためには、起訴されないことが重要です。

痴漢をした公務員の懲戒処分

それでは次に、痴漢事件で公務員が起訴されてしまった場合の処分をみていきましょう。

公務員と会社員が痴漢行為をした場合、処分についてはどのような違いがあるのでしょうか。

民間企業の会社員の懲戒処分には、労働契約法が適用されるのに対し、公務員の懲戒処分には、国家公務員法や地方公務員法の規定が適用されます。

国家公務員の懲戒処分について確認してみましょう。

(懲戒の場合)第八十二条 

職員が、次の各号のいずれかに該当する場合においては、これに対し懲戒処分として、免職、停職、減給又は戒告の処分をすることができる。

 この法律若しくは国家公務員倫理法又はこれらの法律に基づく命令(国家公務員倫理法第五条第三項の規定に基づく訓令及び同条第四項の規定に基づく規則を含む。)に違反した場合

 職務上の義務に違反し、又は職務を怠つた場合

 国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合

国家公務員法82条

国家公務員の痴漢行為は、上記3号の「非行」に該当します。

また、国家公務員は憲法上で「国民全体の奉仕者」と位置付けられており、痴漢事件で有罪になった場合の処分は、免職や停職、減給、戒告と規定されています。
なお、戒告とは「厳重注意」のことであり、もっとも軽い懲戒処分です。
免職はもっとも重い懲戒処分であり、即時解雇などをさしています。

停職の期間などの詳細については、「人事院規則」に従い定めることとなっています。

人事院規則は、国家公務員の職階制・任免・給与・職員団体など広範囲にわたり規定している規則です。

また、懲戒処分をおこなうかどうかを判断するのも人事院です。

人事院規則では痴漢について、「公共の場所又は乗物において痴漢行為をした職員は、停職又は減給とする。」と定めています。

国家公務員・地方公務員の「欠格事由」とは?

国家公務員または地方公務員が痴漢事件で有罪となった場合、欠格事由に該当することもあります。
国家公務員法における欠格事由は、以下のとおりです。

なお地方公務員法においても、以下については同様に規定されています。

(欠格条項)第三十八条

 次の各号のいずれかに該当する者は、人事院規則で定める場合を除くほか、官職に就く能力を有しない。

 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者

 懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から二年を経過しない者

(以下略)

国家公務員法38条

欠格とは、公務員となる資格を有さなくなることです。
痴漢事件を在職中に起こし、欠格事由に該当した場合は、当然に職を失うこととされています(国家公務員法76条)。

痴漢をしても公務員を続けるためには?

すでにご説明のとおり、痴漢事件を起こしたからといって直ちに欠格事由や懲戒処分になるわけではありません。
痴漢事件を起こした公務員本人が罪を認めた場合を除き、基本的には有罪が確定したのちに処分が決まるでしょう。

刑事事件の処分は、痴漢行為の態様によって変わります。
その内容にともない、公務員としての懲戒処分の内容も変わります。

まず第一に、痴漢事件が起訴されないことが重要です。
公務員としての立場を守る最低限の処分として、不起訴処分獲得を目指すことが目標になるでしょう。

不起訴処分となる流れについては、次章で詳しく解説しましょう。

公務員の痴漢事件については弁護士に早期相談を

公務員が痴漢で逮捕された段階から刑事処分確定まで、公務員の立場を守るという観点からお話しします。

まずは逮捕された段階です。

逮捕時は、弁護士接見を依頼しましょう。
1回かぎりの接見を取り急ぎ依頼できます。
警察からの連絡を受けたご家族の方からの依頼が多いでしょう。

弁護士接見でできることは以下のとおりです。

  • 取調べに対する総合的なアドバイス
  • 被疑者に認められた権利など有利な情報を伝えられる
  • 痴漢事件の詳細・事件の方向性について相談できる
  • 痴漢事件の態様や常習性などを加味した今後のアドバイスが可能

つづいて、弁護活動についてです。

逮捕が続いている場合、身柄解放活動を依頼しましょう。
早期釈放が実現できれば、職場に多大な迷惑をかけずに済みます。

逮捕後の流れは以下のとおりです。

逮捕・釈放の流れ

痴漢事件の場合、逮捕後は初犯であっても、勾留がつくことが多い傾向にあります。
検察官送致後、勾留請求前・勾留請求後に身柄解放活動をおこなうことが多いでしょう。

釈放されると、被疑者はもとの生活に戻ることが可能です。
その後は警察や検察の捜査機関に、自宅から通うことになります。

つづいて、不起訴処分を獲得するためもっとも重要なことについてお話しします。

痴漢事件においては、被害者との示談を優先しましょう。

被疑者本人での示談交渉は通常できませんので、弁護士に依頼する必要があるでしょう。

示談とは、裁判外の和解をいいます。
刑事事件の示談においては、加害者が示談金を支払うなどして、被害者からの許しを得ることをいいます。

示談とは

被害者から許しを得たことを、示談書に記載します。
そのような文言を「宥恕文言(ゆうじょもんごん)」といい、宥恕文言を得られるかどうかで今後の処分が変わる可能性もあります。

また、示談金の金額についての交渉も重要です。
痴漢事件の示談金の相場は、10万円ほどからですが、強制わいせつ罪にあたる場合は100万円単位になることもあるでしょう。
また、公務員という立場上、金額が相場より上回ることも考えられます。
被害者の納得のいく限りで、交渉していかなくてはなりません。

以上、公務員の痴漢事件について、その内容や規定、不起訴処分獲得に向けてご説明しました。

公務員の痴漢事件では、早期の弁護士相談や弁護活動が重要視されます。
ご自分の立場から被害者対応まで、刑事事件公務員の痴漢事件に詳しい弁護士に協力を依頼しましょう。