岡野武志

第二東京弁護士会所属。刑事事件で逮捕されてしまっても前科をつけずに解決できる方法があります。

「刑事事件 法律Know」では、逮捕や前科を回避する方法、逮捕後すぐに釈放されるためにできることを詳しく解説しています。

被害者との示談で刑事処分を軽くしたい、前科をつけずに事件を解決したいという相談は、アトム法律事務所にお電話ください。

アトムは夜間土日も受け付けの相談窓口で刑事事件のお悩みにスピーディーに対応いたします。

大麻で未成年が逮捕されたら?大麻取締法の解説と未成年逮捕の流れ

gakusei 10

薬物事件の当事者は依存症になりやすく、また、若ければ若いほど安易に手を染めがちです。
警視庁の発表によれば、大麻取締法違反で摘発された未成年者は、2021年時点で過去最多だということです。

一般的に薬物と言われるものには、覚せい剤・大麻・麻薬などがありますが、それらの大きな違いは取り締まる法律にあります。
覚せい剤であれば「覚醒剤取締法」、大麻であれば「大麻取締法違反」、麻薬であれば「麻薬及び向精神薬取締法」が適用されます。

大麻は乾燥大麻・大麻樹脂・液体大麻に分類され、乾燥大麻には通称「マリファナ」と呼ばれるものもあり、耳にしたことがある方も多いかもしれません。

ところで、大麻は合法だ、などと聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実際大麻は、医療や産業の現場で用いられており、合法で安全だと誤解をしている方が多いのも事実です。
たしかに海外では一部「合法」として取り扱いがありますが、日本では使用自体に規制はないものの、その他の目的であれば違法となる可能性があります。

当記事では、大麻のどの行為が違法になるのか、「大麻取締法違反」について解説し、近年増加している未成年の大麻事件について載せております。
また、未成年大麻事件の「対処法」についても解説していますので、ぜひ最後までお読みください。

  • 大麻はなぜ違法?大麻取締法違反とは?
  • 未成年が大麻で逮捕されるとどうなる?前科はつく?
  • 大麻事件を起こした子どもに対し親は何ができる?
  • 大麻事件を弁護士に依頼したら何をしてもらえる?

大麻事件とは

まずは大麻を取り締まる法律、「大麻取締法」についてみていきましょう。

大麻取締法違法となる行為

大麻取締法では、以下の行為を禁止しています。
なお、規制される行為は成人でも未成年でも同様です。

  1. 大麻をみだりに栽培すること
  2. 大麻を日本もしくは海外に輸入・輸出すること
  3. 大麻をみだりに所持すること
  4. 大麻をみだりに譲り受け・譲り渡すこと

    大麻取締法第24条・24条の2参照

なお上記の行為に加え、営利目的だったのかそうでなかったのかによって、罰則内容が変わってきます。

大麻取締法では、「使用」についての直接的処罰は存在しません。
しかし、仮に使用についてのみ警察に発覚したとしても、使用に至るまでの栽培や所持・第三者への譲渡が同時に発覚して逮捕されることがあるでしょう。

「使用」がなぜ規制対象ではないかというと、違法性がない場合もあるからです。
先述したように、大麻は実際に産業などでも使用されており、そのような行為まで規制してしまうと現場の人が吸ってしまう可能性もあるからです。
では吸っていいのでは?となるかもしれませんが、あくまで有害な薬物であることに変わりはありません。

上記の現場などで使用する人ではない人が、大麻は合法だと主張しても、それは大麻使用の目的が異なるというわけです。

「大麻取扱者」は合法

大麻取扱者になろうとする者は、厚生労働省令の定めるところにより、都道府県知事の免許を受けなければならない。

大麻取締法 第5条

大麻取扱者とは、大麻の繊維や種子を栽培する目的で大麻草を栽培する者および、大麻を研究する目的で栽培・使用する者をいいます。
いずれも知事の免許が必要です。

大麻事件で科せられる刑罰

刑罰は、基本的に成人に適用されます。
未成年の大麻事件の流れについては後述することにいたします。

大麻事件が営利目的でなかった場合の刑罰

大麻を、みだりに、栽培し、本邦若しくは外国に輸入し、又は本邦若しくは外国から輸出した者は、七年以下の懲役に処する。

大麻を、みだりに、所持し、譲り受け、又は譲り渡した者は、五年以下の懲役に処する。

大麻取締法 刑罰

栽培・輸出入は7年以下の懲役です。
個人間でのやり取りを想定している、所持・譲り受け・譲渡は、5年以下の懲役となっています。
栽培や輸出入は、より大麻を流通させる可能性が高いため、比較的刑罰が重くなっているのです。

大麻事件が営利目的だった場合の刑罰

営利目的だった場合は、所持・譲り受け・譲渡は、7年、栽培や輸出入は10年以下の懲役です。
また、営利目的である場合は、上記懲役刑に加え、罰金も併科される可能性があります。

罰金は、所持・譲り受け・譲渡の場合で200万円以下、栽培・輸出入であれば300万円以下と規定されています。

大麻で未成年が逮捕されたら?

前章では、大麻取締法についての解説と、成人が逮捕起訴された場合の刑罰についてお話ししました。
本章では、大麻事件の本人が未成年だった場合について言及していきましょう。
未成年の大麻事件の場合、大きく捜査後に成人との違いが出てきます。

未成年が大麻事件で逮捕されたケースについて、以下順番に解説していきます。

未成年の大麻事件|逮捕直後

まず、未成年が大麻事件で逮捕されると、その段階では成人と同じ手続きがとられます。
成人の刑事事件は、逮捕などの手続き面では刑事訴訟法に沿って進行しますので、それと同様ということです。
なお、逮捕直後の流れについてはのちほど言及します。

刑罰などの具体的な内容においては、成人であれば刑法や大麻取締法などの特別刑法にて処罰されることになりますが、未成年ですと基本的に少年法が適用されることになります。

未成年の逮捕の流れ

逮捕された未成年は、逮捕直後は警察で取り調べを受けることになります。
その間は、ご家族との面会もできませんし、ご家族は事件の詳細についても知ることができないでしょう。

逮捕後、警察は48時間以内に検察官に送らなければなりません。
その後検察官は、被疑者(未成年)を勾留するかどうか判断し、勾留請求する場合は24時間以内におこなう必要があります。

未成年であっても、勾留請求後勾留が確定すれば最大20日間の勾留がつくことになり、その場合は警察署内にある留置場などで生活することになります。
ここまでが、成人同様の「刑事訴訟法」にのっとった手続きです。

逮捕後、勾留請求前に情状酌量の余地があれば、勾留されずに釈放される可能性もあります。
その場合は検察官に意見することになりますが、意見書の作成などは弁護士に依頼する必要があるでしょう。

未成年の大麻事件|少年法の流れ

未成年の大麻事件、つまり少年事件は、一定の嫌疑がない場合を除き、全件家庭裁判所に事件が送られる決まりとなっています。
このことを、「全件送致主義」といいます。

未成年が仮に勾留された場合であっても、その後はよほどの重罪事件でない限り、検察官によって起訴されることはありません。
さきほどの図にあるように、事件が家庭裁判所に送られたあとは、調査に付されることになるのです。

少年法は、少年の健全育成・更生を目的としています。

よって、成人のように起訴して裁判にするのではなく、家庭裁判所に送致し、少年法特有の所定の手続きがとられることになります。

少年の場合、成人のように不起訴処分となり釈放されることはありませんが、家庭裁判所に送致されても、基本的に前科がつくわけではありません。

未成年であっても、捜査の途中で誕生日を迎え成人した場合は、成人と同じ手続きがとられることもあります。

「調査」とは、家庭裁判所にて調査官がおこなうものです。
調査官との面接は複数回おこなわれ、通常自宅から呼び出しを受ける形でおこなわれます。
調査では、事件内容や家庭のこと、友人などの取り巻く環境や生活歴についてなどが聴かれます。

調査官との面接内容は、今後の未成年の処遇に関する重要な材料になります。
調査の後は、審判に付されるか審判不開始になるかが判断されます。

未成年の大麻事件が審判に付されることになった場合は、少年審判が開始されることになります。
なお、審判不開始となった場合は釈放です。
また、裁判所による教育的な働きかけにより、今後再非行のおそれがないと判断された場合は、「不処分」といって処分に付さないという判断もあり得ます。

大麻事件を起こした未成年にできること・対処編

逮捕の流れや処分についてはご説明しました。
ここでご説明したいのは、未成年の大麻事件やその他刑事事件であっても、単に警察や検察、その後の家庭裁判所にすべてを委ねることが正しいとは言い切れないということです。
どういうことかといいますと、未成年の大麻事件を大人の力で防止することはもちろん、逮捕後であっても、ご家族や弁護士により有益な働きかけができるということです。

まずは弁護士に相談する

大麻事件を起こした未成年の子どもやそのご家族に対し、弁護士ができることはおもに以下のとおりです。

  • 逮捕後の身柄解放活動
  • 捜査やその後の処分に対してアドバイスをしたり裁判所に意見したりする
  • 再犯防止のための活動

大麻事件は個人の薬物違反であるため、被害者が存在しません。
よって示談などの概念は基本的にないため、示談交渉は上記活動には含んでいません。
しかし、逮捕前や逮捕後に弁護士に依頼することにより、環境や処遇が変わる可能性が期待できます。

以下、対処法の内容について具体的ににみていきましょう。

弁護士に逮捕後の身柄解放活動を依頼する

未成年の逮捕後、身柄解放の可能性があるタイミングは以下の図のとおりです。
初犯であれば、釈放なども認められやすくなるでしょう。

未成年の逮捕・釈放の流れ

勾留・観護措置に対する身柄解放

観護措置とは、家庭裁判所送致後、少年審判の円滑な進行や未成年の処分に向けて、一定期間少年鑑別所にて収監することをいいます。

勾留と観護措置の違いは、勾留は逮捕後、成人と同じように留置場などに収容されますが、観護措置はあくまで少年(未成年)の心身の鑑別が目的です。
未熟な少年(未成年)の特徴に沿った手続きであり、勾留が最大20日間なのに対し、観護措置は原則2週間とされています。
ただし、更新された場合は4週間になることもあります。

勾留は検察官の請求によってされますが、観護措置は家庭裁判所の送致後決定されるものです。

勾留であっても観護措置であっても、身柄拘束であることに変わりはありません。
そこで弁護士が介入し、身柄拘束の必要性について検討していくことになるのです。

なお、観護措置の必要性とは具体的に以下の3つです。
1.逃亡・罪証隠滅の可能性・住所不定
2.自殺や自傷行為のおそれがある
3.心身鑑別をおこなう必要性がある

これらの必要性が満たされないと思料するときは、家庭裁判所に訴えていくことになります。

勾留請求の阻止に対する意見は、検察官に申し出ます。

審判不開始や不処分・保護観察で釈放

つづいて、終局処分に関する身柄解放についてご説明します。
大麻事件で考えられる、少年(未成年)の終局決定の種類は以下のとおりです。

  1. 不処分
  2. 保護処分
  3. 児童福祉手続き

審判を開始するほどでもない事案である場合は、弁護士が調査官に意見書を提出します。
大麻事件を起こした未成年の反省の度合いもかねて、慎重に判断していくことになるでしょう。
あくまでも目的は、大麻事件を起こした少年の更生です。
弁護士と少年、保護者とも十分に話し合い、意見をまとめることで調査官に訴えます。

また、保護処分の中でも、保護観察に付されて釈放されるということもあります。

弁護士に捜査アドバイスや再犯防止のための活動を依頼する

捜査機関による不当な捜査を防止すべく、弁護士がアドバイスします。
大麻事件を起こした未成年本人に面会(接見)し、事件の詳細を聴いたり、具体的なアドバイスをしたりすることが可能です。
未成年のご家族からの依頼により弁護士面会が可能となり、一般面会と違って時間制限もありません。
また、逮捕直後であっても弁護士であれば面会可能です。

未成年の大麻事件は、早期に依存から抜け出すことが重要です。
刑事事件を扱う弁護士事務所では、依存症を克服するための医療機関などとも連携を取っています。
事件の途中であっても、在宅捜査であれば早期に治療に専念することも可能です。

未成年の大麻事件に関係のある保護者などご家族は、早めの弁護士相談を利用し、早期に手を打っておきましょう。