岡野武志

第二東京弁護士会所属。刑事事件で逮捕されてしまっても前科をつけずに解決できる方法があります。

「刑事事件 法律Know」では、逮捕や前科を回避する方法、逮捕後すぐに釈放されるためにできることを詳しく解説しています。

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「間違えて持って帰った」は窃盗になる?備品・釣銭・他人の傘など

この記事では、落とし物や間違えて人の物を持ち帰ってしまった場合について、窃盗罪が成立するかどうかを例を交えて解説します。

また、窃盗罪についての法律的な定義や成立要件、刑罰についても詳しく説明します。具体的には、故意や不法領得の意思があった場合に窃盗罪が成立するということが分かります。

さらに、被疑者が取るべき対処方法や刑罰の範囲についても触れます。

間違えて持って帰ったケースが窃盗罪になるか

お店の備品などを間違えて持って帰ったら窃盗罪になる?

お店の備品などを間違えて持って帰ってしまった場合、窃盗罪が成立するかどうかは状況によって異なります。

窃盗罪の成立には、「窃取(物を盗む行為)」が必要ですが、その行為が故意であることが必要です。つまり、自分が盗んでいることを知り、かつ盗むことを意図していることが必要です。もし、備品を間違って持って帰った場合、その行為が故意であるかどうかが問題となります。

もし、備品を間違えて持って帰った行為が、本人が故意に盗んでいる行為ではなく、間違いであった場合、窃盗罪は成立しません。ただし、間違えたことをきちんと申告しなかった場合、別の犯罪に該当する可能性があるため、注意が必要です。

したがって、もしも備品を誤って持って帰ってしまった場合には、返却し、間違いであった旨を正直にお店側に申告することが望ましいといえます。

刑法第235条の窃盗罪の犯罪構成要件は、以下の4つの要素から成り立ちます。

  • 他人の財物
  • 窃取(物を盗む行為)
  • 故意(自分が盗んでいることを知り、かつ盗むことを意図していること)
  • 不法領得の意思(盗んだ財物を自分のものとして取り上げる意思)

これらの要件をすべて満たすと、窃盗罪が成立します。

窃盗罪の刑罰

窃盗罪の法定刑は、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金です(刑法235条)。

窃盗罪以外で成立しうる犯罪は?

間違えて持ち帰った商品を返さずに隠したり、偽りの意思表示をした場合、別の犯罪に該当する可能性があります。以下にその具体例を示します。

詐欺罪(刑法246条)

間違って持ち帰った商品を「自分が正当に購入したもの」と偽って販売した場合には、詐欺罪に該当する可能性があります。詐欺罪は、嘘や偽りの意思表示により他人を欺き、利益を得ることを目的とした罪で、詐欺の目的や方法に応じて刑罰が科せられます。

横領罪(刑法252条)

間違って持ち帰った商品を「自分のもの」として使用した場合には、横領罪に該当する可能性があります。横領罪は、他人の財産を、自分自身や第三者のために使用する行為によって不法に占有する罪で、5年以下の懲役が科せられます。

以上のように、間違って持ち帰った商品を返さずに販売したり、自分のものにしたりした場合には、詐欺罪、横領罪に該当する可能性があります。したがって、誤って持ち帰った場合には、正直に申告し、返却することが重要です。

窃盗・窃取の故意があったかどうかはどこで判断される?

窃盗罪においては、窃盗・窃取の故意が成立する必要があります。故意とは、本人がその行為の結果を予見し、それを望んでいたと認められる心的状態のことです。

つまり、お店の備品を持ち帰った行為が故意的に行われたかどうかは、その行為を行った人の意図や心理状態を判断することになります。そのため、警察や検察、裁判所などは、被疑者の供述や証言、行為の状況や周辺の証拠、行為の経緯などを総合的に判断し、故意の有無を判断します。

例えば、被疑者が品定めをしてから特定の商品を選んで盗む行為は、故意的な窃盗として処罰される可能性が高いとされています。一方、品定めのつもりで手に取った商品を見間違えて持ち帰ってしまった場合は、故意がないとされ、窃盗罪が成立しない場合があります。

ただし、被疑者が盗んだと認めた場合には、故意があったことが推定され、窃盗罪が成立することがあります。そのため、事前に備品を持ち帰ってしまった場合には、正直に店側に申し出ることが望ましいです。

備品を持って帰って窃盗・窃取の故意ありとみなされる具体例

以下は、お店の備品を持ち帰った場合に、「窃盗・窃取の故意があった」とみなされる事情の具体例です。

  • 価値が高く、自分が手に入れたいと思った場合
  • 被害者に気づかれないように、こっそりと取り出した場合
  • 以前からその商品に興味があり、持ち帰って試してみたかった場合

ただし、具体的な事情によっては、故意が認められない場合もあります。判断は個別の事案に応じてなされます。

間違え・うっかりで窃盗罪になるかケース別チェック

落とし物を交番に届けるつもりが間違えて持って帰ってしまった場合は窃盗罪が成立する?

落とし物を交番に届けるつもりが間違えて持ち帰ってしまった場合は、窃盗罪が成立しない場合がほとんどです。落とし物を拾った場合、持ち主が見つかるようにすぐに交番に届けることが望ましいですが、届ける手段が分からなかった場合や時間がなかった場合に、しばらく保管してから拾得物として届けることもできます。

ただし、届けるまでの間に拾得物を使ったり処分してしまうと、窃盗罪や横領罪に問われる可能性があるため注意が必要です。

両替機に忘れられていた釣銭をお店に届けるつもりで間違えて持って帰った場合は窃盗罪が成立する?

両替機に忘れられた釣銭をお店に届けるつもりであった場合、故意の要件が満たされないため、窃盗罪は成立しない可能性があります。ただし、判断には具体的な状況によって異なるため、被疑者の主張や証拠などを総合的に判断する必要があります。

例えば、釣銭の金額が大きく、被疑者がそれを知っていた場合や、釣銭を持って帰る行為が何らかの不当な利益を得る目的で行われた場合には、窃盗罪が成立する可能性があります。

お店の商品をうっかり店外に持ち出してしまった場合は、窃盗罪が成立しますか?

お店の商品をうっかり店外に持ち出してしまった場合には、窃盗罪は成立しません。窃盗罪の成立には、「故意」という要素が必要であり、うっかりとした行為には故意がないため、窃盗罪は成立しません。

ただし、うっかりとはいえ、商品を持ち出してしまった行為自体は不法行為であり、万が一被害者側から刑事告訴や民事訴訟を提起される可能性もあるため、注意が必要です。

他人の傘を自分の傘と間違えて持って帰ってしまった場合は、窃盗罪が成立しますか?

他人の傘を自分の傘と間違えて持って帰ってしまった場合、窃盗罪は成立しません。窃盗罪に必要な要件である「故意」が成立しないためです。

ただし、他人の傘を勝手に持って帰ってしまった場合には、傘を返さずに持ち逃げするなどの行為によって横領罪が成立する可能性があります。

間違えて持って帰ったケースで窃盗罪を避ける方法

お店の備品などを間違えて持って帰ったら警察に逮捕される?

お店の備品を間違えて持ち帰った場合、必ずしも警察に逮捕されるとは限りません。ただし、窃盗罪に該当する可能性があるため、被害者である店側に被疑者の行為が発覚した場合には、通報を受けた警察に逮捕される可能性があります。

また、窃盗罪は刑事事件として処理されるため、警察が被疑者を逮捕し、検察が起訴を決定することもあります。その際には、被疑者の供述や証言、証拠などを基に、窃盗罪が成立するかどうかが判断されます。

ただし、警察や検察は、刑法の規定や判例に基づき、訴追の必要性や社会通念上の合理性を考慮して、不起訴処分にすることもあります。被疑者が自主的に誠実に備品を返却し、謝罪や賠償を行うことで、刑事処罰を免れることもあります。

お店の備品などを間違えて持って帰った場合に起訴を回避するためにできることは?

お店の備品を間違えて持ち帰ってしまった場合に、起訴を回避するために被疑者ができることとしては、以下のようなことが考えられます。

  1. 状況を説明し、誠実に謝罪する
    被疑者が、備品を間違えて持って帰ってしまったことを誠実に謝罪し、状況を説明することで、被害者である店側の理解を得ることができる場合があります。
  2. 備品を速やかに返却する
    間違えて持ち帰ってしまった備品を速やかに返却することで、被害の回復に努めることができます。
  3. 弁護士に相談する
    被疑者が、自分が窃盗罪に該当するかどうかを正確に判断することは難しい場合があります。そのため、弁護士に相談し、適切な対応を行うことが重要です。
  4. 自己申告する
    備品を持ち帰ったことを自ら警察に申告することで、罪の軽減や不起訴処分を受ける可能性があります。ただし、自己申告を行う際には、弁護士のアドバイスを受けることが望ましいです。

なお、これらの方法が必ずしも起訴を免れることを保証するものではありませんので、まずは弁護士に相談することが重要です。

窃盗罪で逮捕・起訴を避けるために弁護士に相談

お店の物や落とし物を間違えて持って帰ってしまった場合に、窃盗罪で逮捕されるか・前科がついてしまうかはケースバイケースですので、窃盗罪に強い弁護士に相談することが重要です。

窃盗になる可能性が高いケースでは相手方との示談が重要になりますが、ご本人が示談交渉では進めづらいことが多く、弁護士の助けが必要になる場合がほとんどです。

窃盗罪で逮捕・起訴を避けたい方はなるべく早く弁護士に相談してください。アトム法律事務所では、警察から呼出しを受けたり逮捕されたケースを対象に無料相談を行っていますのでお気軽にご相談ください。