岡野武志

第二東京弁護士会所属。刑事事件で逮捕されてしまっても前科をつけずに解決できる方法があります。

「刑事事件 法律Know」では、逮捕や前科を回避する方法、逮捕後すぐに釈放されるためにできることを詳しく解説しています。

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強盗罪で逮捕されたらどうなる?強盗罪の内容と具体例・逮捕後の流れを解説

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典型的な強盗のパターンとして、コンビニ強盗や、人の住居に侵入する住居強盗、通りがかりの人に強盗する路上強盗などがあげられます。

強盗罪にはいくつかの種類があり、刑罰も異なる規定が置かれています。
さらに強盗罪は、別の犯罪と両立する可能性もあり、その結果が人の死傷に繋がれば、死刑や実刑判決を免れないこともあるでしょう。

当記事では、強盗の種類と内容、刑罰、具体例、さらには今後の対策についても解説します。

なお、強盗罪で至急弁護士対応が必要な方、逮捕されたばかりの方などは、ひとまず弁護士相談をすることをおすすめします。

  • 強盗罪の種類と刑罰・具体例がわかる
  • 強盗罪で逮捕されたらどうなるのかがわかる
  • 強盗罪で弁護士に相談するメリットと対策についてわかる

強盗で逮捕されたら?強盗罪の種類と時効

強盗罪の種類と、その内容について解説します。
強盗罪で逮捕された場合、これから説明する罪名や刑罰に問われる可能性があります。

強盗罪

(強盗)第二百三十六条 

暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。

 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

刑法第236条

1項強盗罪の客体は、財産上の価値を持つ有体物(かたちのあるもの)です。

2項強盗罪は、債務の免除など形のないものが客体です。
2項の強盗罪は「強盗利得罪」と呼ばれます。

5年以上の有期懲役とは、最大20年の懲役刑です。

1項強盗罪の例

  • 被害者の腕をつかんで脅し、抵抗できない状態にして所有している財布を強取した
  • 被害者のハンドバッグをつかんだまま、車やバイクで路上を引きずり回した

2項強盗利得罪の例

  • タクシーの料金を免れようと、運転手に暴行を加え逃走した
  • 商品の精算をおこなわず店を出ようとした際、呼び止めた店員を押し倒して逃走した

強盗罪の構成要件は以下のとおりです。

強盗罪の構成要件5つ
  1. 他人の財物を強取するという「実行行為」があったこと
  2. 財物や利益が移転するという「結果」を生じさせたこと
  3. 実行行為と結果のあいだに「因果関係」があったこと
  4. 故意があったこと
  5. 不法領得の意思があったこと

強取とは、相手の反抗を抑圧する程度の暴行や脅迫を加え、財物や利益を奪い取る行為です。

相手の反抗を抑圧する程度とは、社会通念上そのような行為があったといえるものであればよく、ナイフ(包丁)を突きつける行為も、反抗を抑圧するに足りるものだとされています(最高裁判決昭和23年11月18日)。
また、被害者の反抗を抑圧する程度にいたらないものは、その他の罪に振り分けられることになります。

暴行とは、不法な有形力の行使です。

殴る蹴るなどの行為だけでなく、押したり突き飛ばしたりする行為も含まれます。

また、強盗の実行行為(強取)と結果には、因果関係がないといけません。

さらに犯罪である以上、強盗をする意思があるという故意が認められる必要があります。

不法領得の意思とは、権利者を排除し、他人の物を自己の所有物として勝手に利用する行為をいいます。

強盗予備罪

(強盗予備)第二百三十七条 

強盗の罪を犯す目的で、その予備をした者は、二年以下の懲役に処する。

刑法第237条

強盗予備罪とは、強盗をする目的で準備行為をしたときに成立する犯罪です。

条文上の「強盗罪を犯す目的」については、確定的な意思があることが求められます。
単に計画を練っていただけでは足りず、外部にもその意思が表現されるような行動があったことが必要です。

強盗予備罪の例

  • 強盗をする目的で包丁を購入し、被害者に接する準備をしていた
  • 強盗をする目的で、購入した凶器や現金を隠すためのバッグを購入した

強盗の準備行為として、どの程度までが求められるかについては見解が難しいとされています。

過去の判例では、凶器を購入するなど強盗の準備をしただけであっても、強盗の意思が明確であれば強盗予備罪を認めたものがあります(最高裁判決昭和24年12月24日)。

事後強盗罪

(事後強盗)第二百三十八条 

窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる

刑法第238条

事後強盗は、暴行や脅迫のあとに財物を奪う流れとは異なります。

事後強盗は、先に窃盗がおこなわれ、その犯人が財物を取り返されることや、逮捕されることを免れるために暴行などをおこなったときに成立する犯罪です。

事後強盗の例

  • コンビニで万引き(窃盗)をした際、商品の取り返しを防ぐため、店員に暴行を加え逃走した
  • 窃盗を店員に通報され、逮捕を免れる目的で、かけつけた警察官に暴行した

窃盗罪の法定刑は、10年以下の懲役または50万円以下の罰金刑です。
事後強盗は、窃盗の罪に強盗の罪を重ねるため、刑罰が重くなります。
そのため、事後強盗が成り立つためには、先におこなわれた窃盗と後の暴行等との間に、時間的・場所的関連性がなければいけません。

昏睡強盗罪

こん酔強盗)第二百三十九条

 人をこん酔させてその財物を盗取した者は、強盗として論ずる

刑法第239条

昏睡強盗罪とは、相手を昏睡させ、財物を奪ったときに成立する犯罪です。

昏睡強盗罪の例

  • 相手に麻薬等をかがせ、意識を失わせて財布を盗んだ
  • 相手が泥酔状態で意識が混濁しているなか、バッグから財布を盗んだ

意識を失わせた手段が暴行等であれば強盗罪が、麻薬等を手段に使ったのであれば昏睡強盗が成立します。

強盗致死傷罪

(強盗致死傷)第二百四十条 

強盗が、人を負傷させたときは無期又は六年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。

刑法第240条

強盗致死傷罪とは、強盗により、人を負傷させたとき、もしくは死亡させたときに成立する犯罪です。

強盗致死罪は、死刑が想定されている非常に重い犯罪です。

強盗致死傷罪での怪我とは、強盗によって直接受けた暴行が原因でなくても成立します。

たとえば被害者が加害者に抵抗する際、自分自身で転倒した場合であっても、強盗致傷罪は成立しえます。

強盗が強制性交と同時におこなわれた場合

最後に、強盗罪と強制性交等罪が同時に成立する罪および、両罪によって死傷させた際の罪について解説します。

(強盗・強制性交等及び同致死)第二百四十一条 

強盗の罪若しくはその未遂罪を犯した者が強制性交等の罪(第百七十九条第二項の罪を除く。以下この項において同じ。)若しくはその未遂罪をも犯したとき、又は強制性交等の罪若しくはその未遂罪を犯した者が強盗の罪若しくはその未遂罪をも犯したときは、無期又は七年以上の懲役に処する。

 前項の場合のうち、その犯した罪がいずれも未遂罪であるときは、人を死傷させたときを除き、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思によりいずれかの犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。

 第一項の罪に当たる行為により人を死亡させた者は、死刑又は無期懲役に処する。

刑法第241条

強制性交等罪とは、暴行や脅迫を用い、13歳以上の人に性交、肛門性交・口腔性交をし、または13歳未満に性交等をした際に成立する犯罪です。
13歳未満であれば、暴行や脅迫がなくても成立します(刑法第177条)。

強制性交等罪が、強盗と同じ機会でおこなわれたのであれば、本罪が成立します。

さらに相手を死亡させた場合には、死刑も想定されます。

強盗罪の時効は何年?

強盗罪の時効は以下のとおりです。

  • 強盗罪の公訴時効は強盗が終わったときから10年
  • 民事の時効は、被害者が損害および相手を知ったときから3年、相手を知らなかった場合は20年

公訴時効とは、検察官が起訴できるまでの期間をいいます。
公訴時効を過ぎれば、捜査や逮捕、起訴をされることはありません。

民事の時効とは、被害者が加害者に損害賠償請求できる期間です。
20年の時効は「除斥期間」と呼ばれ、損害および加害者を知らなくとも、この期間を経過すれば権利が消滅します。

強盗罪で逮捕されたら?

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強盗の逮捕の流れ・勾留される可能性

強盗罪の逮捕の流れについて説明します。

強盗の証拠が捜査機関に明るみになった際は、後日逮捕されます。
もしくは、犯行中または犯行直後に、現行犯逮捕されることもあるでしょう。

現行犯逮捕と後日逮捕の違い

逮捕後は、警察署の留置場で生活することになります。
警察の取り調べを受け、その後は検察官の調べを受けます。

刑事事件の流れ

逮捕から検察官送致までは48時間、検察官が勾留請求するまでは24時間の時間厳守です。

これらの手続きは、刑事訴訟法に定められている厳格な時間です。

また、強盗で逮捕後、勾留される可能性は非常に高いといえます。
その根拠は、勾留の要件にあります。

勾留の要件

勾留の要件は、上図のいずれかに該当することにより満たされます。

前述のとおり、強盗の刑罰は比較的重く規定されており、5年以上20年以下の有期懲役になるか、最悪の場合死刑もありえます。
そのため、勾留要件である罪証隠滅や逃亡の可能性が高くなる傾向にあり、加害者を捕まえておく必要があるのです。

勾留決定後は、検察官の起訴不起訴の判断が下るまで、最大20日間の身体拘束が続きます。

強盗は起訴されやすい

強盗罪は、起訴される可能性が高い犯罪でもあります。

強盗罪は刑法上でもとりわけ重い犯罪に該当するため、仮に被害金額が少なく初犯であっても起訴されることがあるのです。

起訴・不起訴の判断は検察官の専権とされており、起訴は、有罪かつ刑罰に科せられるべきだと判断されたときにされます。

強盗罪で起訴されると正式裁判となり、やがて判決を迎えることになります。

強盗罪・逮捕で心配なら弁護士へ相談

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強盗罪を弁護士に依頼するメリット3選

  1. 窃盗罪や恐喝罪など、その他の犯罪に当てはまるかを検討できる
  2. 弁護士接見を通じ、不当な取り調べを回避できる
  3. 弁護士を介し、被害者と示談できれば罪が軽くなることがある

強盗罪とだけ聞けば、重罪かつ実刑が免れない犯罪であるととらえる方は少なくありません。

強盗罪であっても、最初から強盗を企てていたケースから、窃盗犯が逃走の際、被害者を思わず突き飛ばしてしまったケースまで様々でしょう。

また、強盗の手段である暴行によって、かすり傷を負わせたケースから、重い怪我を負わせてしまったケースまで多様な事案が存在します。

強盗罪で弁護活動をする際、これらについて、強盗罪以外の犯罪に該当する余地がないかを検討することがあります。
強盗罪での実刑判決を回避するために、重要な弁護活動です。

つぎに、不当な取り調べの回避についてです。

弁護士接見には、時間制限や立会人制限がありません。
つまり、弁護士と被疑者のみで、時間制限なく面会をすることが可能なのです。
取り調べの内容を弁護士と共有し、不当な内容があれば早期に発見できます。
また、取り調べのアドバイスについても聞いておきましょう。

強盗事件においては、被害者との示談がもっとも重要です。

強盗罪は財産犯であるため、被害弁償をおこなったうえ、示談をします。

被害者と示談をする際は、被害弁償とは別に示談金を支払うことがほとんどです。
金銭支払いに代えて、強盗事件について許してもらえるよう交渉します。

被害者からの宥恕(ゆうじょ)が得られれば、刑事事件としても重い刑罰に発展しないことが多いです。
事案によっては、不起訴処分を獲得できるケースもあるでしょう。