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刑事事件の弁護士を変える方法|弁護士制度や注意点・メリットも解説
刑事事件で弁護士を選任したが、依頼後に相性が合わないなどという理由で解任を希望する方もいます。
当記事では、刑事事件の途中で弁護士を変えることができるのかどうか、またその方法などについて解説していきましょう。
刑事事件は民事事件と違い、資力基準などに応じて、国選弁護人を選任することが可能です。
弁護士を途中で変えることができるかできないかは、選任している弁護士が、国選弁護人か私選弁護人かによって変わってきます。
弁護人解任について、国選弁護人を選任している場合、自由な理由にもとづいてすることはできません。
その理由についても、本章で詳しく解説しましょう。
また、弁護士を変えることのできる場合において、その際の注意点およびメリットについても言及していきましょう。
- 国選弁護人と私選弁護人の違いがわかる
- 弁護士を変える方法が依頼中の弁護士ごとにわかる
- 刑事事件の途中に弁護士を変える際の注意点・メリットがわかる
目次
国選弁護人・私選弁護人とは
まずは、国選弁護人と私選弁護人についてご説明します。
国選弁護人・国選弁護制度とは
貧困などの事情により、私選弁護人を選任できない場合、国の費用で弁護人を選任できる制度を国選弁護制度といいます。
国選弁護人が事件を請け負うには、弁護士と法テラスとが国選弁護人契約を締結しておく必要があり、弁護人は裁判所または裁判官が選任します。
国選弁護人といっても、弁護士が国選弁護人だけを専任しているわけではありません。
普段私選弁護人として活躍している弁護士も、別事件で国選弁護人として事件を担当していることがあります。
被疑者または被告人が、国選弁護人を選任できる基準・条件については以下のとおりです。
被疑者国選弁護人を選任できる基準・条件
- 国選弁護制度は国の費用でまかなわれているため、被疑者の資力が原則50万円未満であること
(刑事訴訟法37条の3) - 被疑者に勾留状が発せられていること・勾留請求された段階での選任も可能
(刑事訴訟法37条の2)
預貯金などを含む資力が50万円を上回る場合には、原則私選弁護人制度を利用します。
また、勾留中であることが条件ですので、釈放された場合や逮捕直後は、国選弁護人を選任することができません。
つづいて、被告人にかかる国選弁護人の選任基準です。
被告人とは、被疑者が検察官に起訴された段階での呼び方です。
被告人国選弁護人を選任できる基準・条件
- 被告人の資力が原則50万円未満であること(刑事訴訟法36条の3)
- 以下の場合には職権による選任が可能(刑事訴訟法37条)
一 被告人が未成年者であるとき。
二 被告人が年齢七十年以上の者であるとき。
三 被告人が耳の聞えない者又は口のきけない者であるとき。
四 被告人が心神喪失者又は心神耗弱者である疑があるとき。
五 その他必要と認めるとき。
私選弁護人・私選弁護制度とは
被疑者・被告人またはその親族等の依頼により、選任された弁護士を私選弁護人といいます。
国選弁護人とは違い、当事者の自由な契約にもとづいています。
裁判所は選任に関与しません。
ではつぎに、いったん選任した弁護士を、変えることができるのかについて解説していきましょう。
刑事事件の弁護士は変えることができる?
刑事事件の弁護士を変える場合において、その弁護士が、国選弁護人なのか私選弁護人なのかによって条件が変わります。
よって、弁護士を変えることそれ自体は可能です。
以下、その方法を確認していきましょう。
国選弁護人を解任・私選弁護人に変える方法
先述のとおり、国選弁護人を選任するのは裁判所です。
国選弁護人は、原則、裁判所からの解任のみ認められています。
ただし、国選弁護人から、私選弁護人に変えるということであれば解任は可能です。
国選弁護人を解任できる理由は5つ定められており、そのうちのひとつに、「私選弁護人を選任したとき」という理由があるのです(下記第一号に規定)。
第三十八条の三
裁判所は、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、裁判所若しくは裁判長又は裁判官が付した弁護人を解任することができる。
一 第三十条の規定により弁護人が選任されたことその他の事由により弁護人を付する必要がなくなつたとき。
二 被告人と弁護人との利益が相反する状況にあり弁護人にその職務を継続させることが相当でないとき。
三 心身の故障その他の事由により、弁護人が職務を行うことができず、又は職務を行うことが困難となつたとき。
四 弁護人がその任務に著しく反したことによりその職務を継続させることが相当でないとき。五 弁護人に対する暴行、脅迫その他の被告人の責めに帰すべき事由により弁護人にその職務を継続させることが相当でない
刑事訴訟法38条の3
国選弁護人を解任したいという理由のなかには、以下のような意見が見受けられます。
- 国選弁護人は私選弁護人と違い、テキパキ動いてくれないような気がする
- 国選弁護人は頻繁に連絡をくれず不安になる
- 国の費用で弁護活動しているため、弁護人は手を抜いているのではないか
実際、国選弁護人として選任された弁護人も、弁護士としてやるべき業務は同じです。
私選弁護人と異なるところはありません。
しかし選任する側の先入観などから、選任者と弁護士とで信頼関係を深く築けないケースもあるようです。
また、国選弁護人は、刑事事件に慣れている弁護士が選任されるとは限りません。
そのため、実際に刑事事件を多く扱っている国選弁護人または私選弁護人にくらべ、業務に不慣れな弁護士もすくなからず存在します。
そもそも、国選弁護人は被疑者・被告人に弁護人を選任する権利はありません。
また、私選弁護人を選任する以外の方法で、国選弁護人を変えたり、解任させたりすることは実際に容易ではないでしょう。
私選弁護人を選任する以外での解任手続としては、裁判所に上申する必要があります。
なお、私選弁護人を選任した場合、国選弁護人は自動で解任されます。
よって、選任した者が「国選弁護人解任届」を裁判所に提出する必要はありません。
私選弁護人から別の私選弁護人に変える方法
私選弁護人から他の私選弁護人に変えることはいつでも可能です。
ただし目次「刑事事件で弁護士を変える前に」で後述するように、一定の留意すべき事項はあるでしょう。
私選弁護人はあくまで、被疑者・被告人もしくはその親族が選任した弁護人であり、私的な委任契約にもとづいています。
当委任契約は、民法651条1項によりいつでも解除できるとされているのです。
私選弁護人から他の私選弁護人に変えるには、「弁護人辞任届」を各所に提出する必要があります。
事件が検察官にあるのであれば検察庁、起訴後であれば裁判所に提出します。
また、私選弁護人を選任できるのは被疑者・被告人本人だけではありません。
刑事訴訟法30条2項により、被疑者または被告人の直系親族や兄弟姉妹なども選任が可能です。
ではつぎに、実際に国選弁護人または私選弁護人から別の私選弁護人に変える場合において、注意点などについて解説していきましょう。
刑事事件で弁護士を変える前に
弁護士を変える際の注意点・メリットなどについて解説します。
刑事事件の途中で弁護士を変える際の注意点
国選弁護人から私選弁護人・私選弁護人から私選弁護人に変えることは、比較的容易にできる旨ご説明しました。
私選弁護人の選任は原則として自由ですが、いくつかの注意点があることも念頭に置いておいたほうがいいでしょう。
刑事事件の弁護士を変える際の注意点をまとめると、以下のとおりです。
刑事事件の弁護士を変える際の注意点
(国選弁護人から私選弁護人に変える場合)
- 私選弁護人選任後、再度の国選弁護人選任ができない
- 私選弁護人に変えると、接見費用含む弁護士費用が発生する
(私選弁護人から私選弁護人に変える場合)
- 弁護人交代による引き継ぎに時間がかかる場合がある
- 弁護士費用が重複する場合がある
- 弁護士による被害者対応中は慎重に
順番に解説しましょう。
国選弁護人をいったん解任すると、その後私選弁護人に不満を持っても国選弁護人を再度選任することはできません。
私選弁護人は費用も発生するため、変更は慎重におこないましょう。
国選弁護人制度では弁護士費用を国が負担するため、選任する側の費用は原則無料0円です。
一方、私選弁護人となると、事件の規模によっては数百万円かかるケースも珍しくありません。
また、私選弁護人から私選弁護人に変える場合であっても、注意しなければならない点はあります。
上記のとおり、引き継ぎに時間がかかるケースがあります。
刑事事件の弁護は、スピード勝負な面があります。
たとえば、身柄解放のための活動や、被害者対応です。
迅速な刑事弁護が、よりよい結果に結びつくことが多いのです。
国選弁護人からであっても私選弁護人からであっても、弁護士を変える際の引き継ぎは欠かせません。
刑事事件においては、以下図のとおり、時間制限があるのが特徴です。
逮捕時点から計算しても、検察官の起訴・不起訴の判断がくだるまでの期間は、最大でも23日間です。
重罪事件には被害者がいることも多いため、被害者対応を急がなければ検察官の判断までに間に合わない可能性があるのです。
刑事事件の途中で被害者と示談ができれば、検察官に起訴されなかったり、起訴後の刑事処分が軽くなったりすることが期待できます。
検察官に起訴されず、不起訴処分となれば、被疑者に前科はつきません。
私選弁護人から私選弁護人に変える場合の「費用重複」について、おもに考えられるのが「着手金」の重複です。
着手金とは、いわばファイトマネーであり、事件に着手する際はかならず発生する弁護士費用のひとつです。
弁護士は基本的に、着手金の受領後に弁護活動を開始します。
また、弁護士を変える場合であっても、着手金は基本的に返還されません。
最後の注意点として、現時点でついている弁護士が被害者対応中である場合、変更のタイミングは特に注意しましょう。
被害者示談の成否は、刑事事件の被疑者・被告人の運命をおおきく左右します。
示談交渉は、基本的に弁護士と被害者(もしくは被害者の法定代理人など)のみの話し合いです。
示談交渉中の被害者は、依頼中の弁護士に信頼を寄せている場合があります。
そのような交渉の最中に無理やり弁護士を変更してしまうと、被害者の信用がくつがえることもあるのです。
いくら相性の合わない弁護士だとしても、事件の進捗について、話し合う機会をもうけるようにしましょう。
刑事事件の途中で弁護士を変えるメリット3選
刑事事件の途中で弁護士を変えることについては、注意点やデメリットだけではありません。
弁護士を変えるメリットとしては、以下が考えられます。
刑事事件の途中で弁護士を変えるメリット3選
- 刑事事件が迅速に動き出すことがある
- 被害者からの信頼を得られ、事件の処分が軽くなることがある
- 私選弁護人選任の場合、勾留中以外であっても弁護依頼が可能
刑事事件を弁護士に依頼する目的には、上記にあげた「迅速な事件解決」や「刑事処分の軽減」などがあげられます。
その点で不満を持っている場合は、弁護士を変えることによって好転する可能性があるでしょう。
刑事事件では、逮捕から刑事処分確定まで、おもに以下の弁護活動が可能です。
- 釈放に向けた活動
- 被害者との示談交渉
- 身柄拘束中の接見(面会)
刑事事件においては、弁護士との1対1の接見を大切にし、身柄を早期に開放することに注力します。
その後の被害者対応・刑事処分軽減においても、迅速な弁護活動が求められます。
私選弁護人制度においては、いつなんどきでも選任することができるというのもメリットです。
国選弁護人の選任は、勾留中や起訴後に限定されるのに対し、私選弁護人の選任時期には制限がありません。
早期の弁護士選任により、より依頼者の希望に応じた活動ができます。
上記ご紹介したメリットのすべては、刑事事件に慣れている弁護士を選任することが前提です。
弁護士の扱う事件や、得手不得手は弁護士・弁護士事務所によって違います。
私選弁護人を選任する際は、刑事事件を多く扱う弁護士事務所から検討しましょう。
私選弁護制度においては、選任する側の制限は基本的にありません。
弁護する側としても、弁護士報酬においては自由な設定が可能です。