岡野武志

第二東京弁護士会所属。刑事事件で逮捕されてしまっても前科をつけずに解決できる方法があります。

「刑事事件 法律Know」では、逮捕や前科を回避する方法、逮捕後すぐに釈放されるためにできることを詳しく解説しています。

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名誉毀損はTwitterでも成立する|誹謗中傷のツイートは注意が必要

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名誉毀損がTwitterでも成立するのかどうか、また、成立した場合はどのような流れになるのかについて解説しています。

まず、刑法上に規定されている名誉毀損罪は、TwitterなどのSNS上であっても成立しえます。
しかし、Twitterなどは投稿や削除が容易であるという特徴があり、加害者側は投稿の削除後どうなるのかについても気になるのではないでしょうか。

また、Twitterのリツイート機能においては、第三者の投稿内容を拡散することが容易となっています。
そのような間接的な操作で、名誉毀損が成立するかどうかも懸念されるところです。

当記事では、これらの疑問について以下の流れで解説しています。

  • 名誉毀損がTwitterで成立するための要件とは?
  • 名誉毀損と思われる投稿をしたが削除したら大丈夫?
  • リツイートで誹謗中傷を拡散しても名誉毀損で訴えられる?
  • 名誉毀損罪で実際に訴えられてしまったらどうすればいい?

Twitter上で他人の名誉を毀損してしまった方や、Twitterでの投稿が名誉毀損に該当するのかどうか気になる方についても参考にしてください。

名誉毀損はTwitterでも成立する

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名誉毀損がTwitterでも成立する根拠とは

名誉毀損罪が成立する要件は以下のとおりです。
以下を満たせば、刑法上の「名誉毀損罪」に該当することになります。

  1. 公然性が認められること
  2. 事実を摘示したこと
  3. 人の名誉を毀損したこと

これら各要件は各事案ごとに検討され、最終的に決定されます。

名誉毀損罪の成立要件(構成要件)を検討するにあたり、内容を書き込んだ対象がなにかについては特定されていません。
過去の判例や事件では、週刊誌新聞記事に表現した事実について名誉毀損を肯定するものが多いですが、最新の判例では、TwitterなどのSNS上の誹謗中傷が、名誉毀損であるとする事件も多くなっています。

Twitterで名誉毀損が成立するのかどうか、順番に要件を整理してみましょう。

Twitter(ツイッター)における「公然性」とは?

Twitterに問題のある投稿をした際、不特定または多数のフォロワーなどが認識できる状態であれば、名誉毀損にあたる可能性があります。
判例は「不特定または多数」・「認識できる状態」について、2~3人に対して事実を告知した場合であっても、伝播可能性があれば公然性を認めています。

Twitter(ツイッター)における「事実の摘示」とは?

具体的な事実をいいます。
たとえば、ある人の犯罪事実や、私生活上の内容を具体的に示したものです。
なお、具体的事実は真実かどうかについては問われません。
嘘やデマのツイートであっても、問題ある投稿になりうるでしょう。

Twitter(ツイッター)における「名誉毀損」とは?

名誉毀損といえるための要件は、Twitterの投稿でおこなった「事実摘示」が、その人の社会的評価を低下させたこととしています。
たとえば投稿内容が、その人の立場を危うくしたり、その人の印象が著しく悪くなるような影響を与えたりした場合、名誉毀損と判断される可能性があります。

名誉毀損罪や侮辱罪がTwitterで成立しうる誹謗中傷とは?

名誉毀損罪や侮辱罪に該当する「誹謗中傷」についてみてみましょう。
なお、侮辱罪とは単なる悪口を言いふらしたような場合をいい、具体的事実の摘示を要件とする名誉毀損とは異なります。

「誹謗中傷」の誹謗とは、他人をののしり悪く言うことをいい、中傷とは、根拠のないことを言いふらし、他人の名誉を傷つけることをいいます。

以下は、Twitterで名誉毀損・侮辱とされうる「誹謗」・「中傷」の例です。

  1. 侮辱罪
    被害者名指しの上、死ね・きもい・気持ち悪い・バカなどと投稿
  2. 名誉毀損罪
    被害者名指しの上、その人が不倫した・犯罪者であるなどと根拠のないデマや噂を投稿

名誉毀損とされるTwitter(ツイート)投稿を削除したら大丈夫?

自身でツイートした投稿が、名誉毀損や侮辱罪に該当しそうになりあわてて削除した・・・
といったケースについて検討しましょう。

実際に投稿を削除した場合、完全に消えるものなのでしょうか?

まず、投稿内容が名誉毀損や侮辱罪として問題になるかどうかという点において、いくら投稿が削除されたとしても、証拠としてフォロワーなどの被害者に保存されていれば逃げきれない場合があるでしょう。

たとえば、スクリーンショット機能です。
削除後更新された後であっても、当時の書き込みなどをスクリーンショットで保存されていた場合、証拠として採用される可能性があります。

とはいっても、匿名の書き込みなどで、被害者が加害者を特定できていない場合、サイトによっては投稿削除後IPアドレスの開示が不可能な場合もあります。
IPアドレスの開示ができず、被害者が加害者を特定できない、もしくは証拠として採用できなかった場合は、名誉毀損で訴えられない可能性が高いです。

IPアドレスとは、インターネット上割り当てられている、通信先の番号のことです。
パソコンやスマートフォンなど、ネットワーク上機器を識別するために割り当てられており、いわばインターネット上の「住所」のような役割を果たしています。
自分のIPアドレスが開示されると、どのパソコンからアクセスされたかなどが判明します。

なお、IPアドレスの開示はTwitter社に直接言ってすぐにできるわけではありません。
通常は、被害者が裁判所の仮処分という手続きを経て、発信者情報開示請求をおこなうことになるでしょう。

また、プロバイダの通信記録(ログ)が保存されている期間もポイントです。
ログに保存されている内容には、IPアドレスや接続日時などがあり、経由するプロバイダによって保存可能な期間も異なります。
大体平均で3~6ヶ月となっており、被害者が万全の訴訟準備をしていない限り、名誉毀損などで訴えることは難しいということもあります。

つづいて、Twitterのアカウントや投稿削除のシステムそのものにおいてですが、投稿自体は削除後すぐに画面上から消すことが可能です。
削除後は基本的に、誰からも見られることはないでしょう。

名誉毀損はTwitter機能のリツイートでも成立しうる

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次に、リツイート機能でも名誉毀損や侮辱罪は成立するのかについて解説いたします。

結論、リツイート機能でも名誉毀損罪や侮辱罪は成立することがあります。
リツイート機能とは、第三者の投稿をそのまま引用する形で、自分の投稿画面で拡散することをいいます。
その行為が、名誉毀損罪としての成立要件とされることがあるのです。

2020年(令和2年)、大阪高裁で、リツイート機能が名誉毀損に当たるとされた判例があります。

Twitterのリツイート機能で名誉毀損罪が成立した裁判例

原告:元大阪府知事
被告:フリージャーナリストA氏

A氏は自己のTwitter投稿にて、府知事時代の原告について「幹部を自殺に追い込んだ」などと書き込みされた第三者のツイートを、コメントをつけずに拡散(リツイート)しました。
元々のTwitter投稿は被告の文章ではありませんが、大阪高裁は、コメントをつけないリツイートについて「元ツイートの表現が他人の社会的評価を低下させるものだと判断される場合、経緯、意図、目的、動機などを問わず不法行為責任を負う」と判示しました。

当該判決につき、被告は原告である元府知事に対し慰謝料の支払いを命じました。
なお、この事件は名誉毀損について、民事上の不法行為責任民法709条)を負ったものになります。
慰謝料請求、つまり損害賠償請求に応じ、金銭的な責任を負ったということです。

次章では、刑法の名誉毀損罪が成立した場合についての対策についてご説明しましょう。

名誉毀損罪がTwitterで成立|対策や刑罰・流れは?

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刑事告訴に対応する方法と刑罰

刑法上の名誉毀損罪について、本章では流れや対策を言及していきましょう。

Twitterで他人の誹謗中傷を書き込みすることは、名誉毀損以前にれっきとした嫌がらせであり、いじめに発展することも懸念されます。
近年悪質な犯罪の1つとも言われており、SNSが普及するさなか、数々の事件・裁判も起きています。
ついつい悪気なくツイート・リツイートしてしまった場合であっても、調子に乗っていると刑事事件に発展し、取り返しのつかないことになるでしょう。

ツイート・リツイートした本人が名誉毀損罪として訴えられる経緯は、被害者が捜査機関に「刑事告訴」したことがきっかけとなります。
なお、名誉毀損罪の刑罰は、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金です。

名誉毀損罪や侮辱罪は「親告罪」といわれるものです。

親告罪とは、刑事告訴なしでは捜査の対象とされず、その後検察官によって起訴されない犯罪の種類をいいます。

つまり、被害者が刑事告訴をしなかった場合は、いくら名誉毀損に当たるツイート・リツイートをしても捜査にかかることはありません。

名誉毀損罪は、被害者の処罰感情によって起訴されるかされないか、捜査されるかされないかが決まります。
よって、被害者に刑事告訴を取り消してもらうことができれば、事件に発展することはありません。

刑事告訴の取り消しについては、被害者と交渉する必要があります。
名誉毀損罪で逮捕される前に、弁護士への相談を検討しましょう。

名誉毀損で逮捕されるとどうなる?示談を検討しましょう

前述のとおり、被害者側が告訴した場合は警察の捜査対象になります。

告訴状を受理した警察は、必要に応じて加害者を逮捕します。
できれば逮捕されてしまう前に、弁護士相談を済ませておくと安心です。

なお、実際に刑事事件となった場合、以下のような流れをたどります。

刑事事件の流れ

図のように、名誉毀損罪で逮捕後は、勾留がついてしまう可能性も否定できません。
軽い気持ちで他人に嫌がらせをしただけであっても、身柄を拘束される可能性があるのです。

ただし、逮捕されてしまってからでも、対策するのに遅くはありません。
逮捕前・逮捕後にできる対策と効果は以下のとおりです。

逮捕後の対策で重要なこと
  1. 被害者との示談を優先しましょう
    →釈放されたり、処分が軽くなることがあります
  2. 被害者に刑事告訴を取り消してもらいましょう
    →仮に逮捕されてしまっても、その後不起訴処分が確定します

上記の対策と効果については、弁護士の力が必要不可欠です。

また、Twitter上の名誉毀損など、刑事事件の相談・依頼は、刑事事件そのものや示談交渉の実績のある弁護士事務所を選ぶようにしましょう。