岡野武志

第二東京弁護士会所属。刑事事件で逮捕されてしまっても前科をつけずに解決できる方法があります。

「刑事事件 法律Know」では、逮捕や前科を回避する方法、逮捕後すぐに釈放されるためにできることを詳しく解説しています。

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少年事件の流れ|少年の身柄拘束・処分についてわかりやすく解説

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当記事は、少年事件の流れについて解説しています。

少年事件の流れは、少年法という成人とは異なる法律・その他規則に従って進行します。
少年は成人と違い、短期間で更生できる可能性を秘めた未熟な人間です。
それゆえ少年事件では、処罰とは違う保護処分や、刑事事件においても特別な措置を講ずることになっているのです。

少年法の目的条文に書かれた内容には、少年事件の特殊性が凝縮されています。

(この法律の目的)
第一条 
この法律は、少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに、少年の刑事事件について特別の措置を講ずることを目的とする。

少年法1条
  • そもそも少年とは?少年と成人では何が違う?
  • 少年事件の流れとは?逮捕されたらその後どうなる?
  • 少年事件独自の観護措置とは?
  • 少年事件の処分にはどのような種類がある?
  • 少年事件を弁護士に依頼するメリットとは?

少年事件の流れを知る前に

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少年とは

少年事件でいう「少年」とは、20歳未満の者をいいます。

また、少年の中でも、家庭裁判所の審判に付される可能性のある者として、以下のように区別されています。

犯罪少年罪を犯した14歳以上の少年
触法少年14歳未満で刑罰法令に触れる行為をした少年
ぐ犯少年以下のような事由があり、将来罪を犯す可能性のある少年
 保護者の正当な監督に服しない性癖のあること。
 正当の理由がなく家庭に寄り附かないこと。
 犯罪性のある人若しくは不道徳な人と交際し、又はいかがわしい場所に出入すること。
 自己又は他人の徳性を害する行為をする性癖のあること。

なお、「少年」とは文字通り男性に限りません。
少年法に規定されている少年には、女性である少女も含んでいます。

また、当記事に書かれている内容は、上記のうち14歳以上の犯罪少年を想定しています。

成人の刑事事件との違い

少年事件の身柄拘束は成人と違う場合がある

少年が逮捕された場合、捜査過程においては基本的に成人と同じ手続きがとられます。
しかし少年事件においては、少年に与える影響に配慮し、以下のような成人と異なる規定が置かれています。

  1. 勾留に代わる「観護措置」をとることができる
  2. 勾留状は原則「やむを得ない場合」でなければ発することができない
  3. 少年鑑別所」を勾留場所とすることができる

単に身柄拘束される成人とは扱いが違い、少年の場合は、資質の鑑別をおこなう少年鑑別所に収容することができます。
なお、成人の収容先は、警察署の留置場や、場合によっては拘置所などです。

成人の刑事事件の場合、上記のような特則はありません。
通常の勾留請求をされた場合、少年でも勾留期間は最大20日間になりますが、勾留に代わる観護措置がとられた場合、最大でも勾留期間は10日間です。
しかし実際、少年が通常の勾留請求(最大20日間)をされることは珍しくありません。

少年事件は全件家庭裁判所に送致される

成人と違い、少年事件の最終目的は「非行少年の保護」です。
少年に適切な保護をおこなうことによって、少年の更生を図り、罪を犯さないようにさせることが目的なのです。

少年は成人と違い、基本的に逮捕後、検察官に送致されるわけではありません。

少年は家庭裁判所送致後、少年事件についての「調査」をされることになるのです。

家庭裁判所の調査は、非行事実に関する法的調査と、要保護性に関する社会調査とがあり、後者は調査官がおこないます。
調査官は少年や保護者と面会し、学校や被害者に関する内容を照会するなどして処遇意見をまとめます。

少年法には刑罰規定がない

少年は未熟ですので、更生することにより、新たな人生をスタートできる可能性を秘めています。
よって、基本的に刑罰が科されることはありません。

あくまで家庭裁判所の審判に付されるのみで、犯罪をしても保護処分にとどまるというのが少年法の考え方です。
よって前科もつきません。

目次「少年審判開始から保護処分まで」で後述いたしますが、一部の事件においては刑罰が科されることもあります。

少年事件の一般的な流れ

少年逮捕から勾留まで

少年の身柄事件の流れは、おもに以下のとおりです。

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少年の捜査過程は成人と同じですので、刑事訴訟法が適用されます。
よって勾留請求をするかどうかの判断も、検察官がおこないます。

逮捕後、勾留決定が出れば最大23日間身柄拘束されます。

弁護士に少年事件を依頼した場合、勾留や観護措置にならないような弁護活動を積極的にすることが可能になるでしょう。

少年が家庭裁判所送致されてから観護措置まで

少年事件は、嫌疑があると判断された場合、全件家庭裁判所に送致されます(少年法41条・42条)。

また、家庭裁判所に送致されたあとは、観護措置がとられることがあります。
観護措置は、少年法だけに規定されている身柄拘束の名称です。

少年は家庭裁判所に送致後、検察官に逆送される場合を除いて勾留されるということはありません。

家庭裁判所送致後、身柄拘束は観護措置というかたちでされることがあり、その収容場所は少年鑑別所というところになります。

観護措置の期間は、通常4週間です。

また、観護措置は更新されることがあります。
2週間ずつ更新し、最大で8週間の身柄拘束が続くこともあります。

成人の起訴後勾留は、罪証隠滅や逃亡の恐れなどが勾留要件とされますが、少年の場合はそれだけではありません。
少年の犯した罪が軽微であっても、心身の鑑別をおこなう必要性があれば観護措置がとられることもあるのです。

観護措置の目的をもうすこし詳しく

少年事件の目指すところは「少年の更生」です。
よって観護措置は逮捕や勾留と違い、少年の心情や環境に配慮した措置であることが理想です。
拘束期間は4週間と長いものの、単に身柄拘束するのみでなく、さまざまな検査や心身の鑑別をおこなうことが目的となっています。
少年事件の発端は、家庭環境や外部との交友関係であることがおおいに考えられます。
そのような状況に配慮しつつ、少年に適切な環境を提供する役目もあるのです。

とはいえ、観護措置が適当でないケースも中にはあるでしょう。
弁護士が少年事件に関わっていれば、そのような観護措置が不必要だと意見することもあります。

少年審判開始から保護処分まで

少年事件における審判の特徴

少年事件の処分が少年院送致であったとしても、それは刑事処分ではありません。
あくまで少年事件の場合は「保護処分」です。

少年審判は成人と違い、以下の原則が規定されています。

少年審判は非公開

成人のように、公の裁判は開かれません。

少年審判は、以下の理由により非公開とされているのです。

  • 成長発達途上にある少年の情操を保護し社会復帰を円滑にする
  • 少年やその家族のプライバシーに関わる要保護性の心理を適切におこなう
併合審理でなければならない

1人の少年について複数の事件が存在するときであっても、なるべく併合して審理(処分決定)しなければならないとされています。

どういうことかといいますと、少年事件で審判の対象とされる「要保護性」に関連してきます。
事件が複数あったとしても、少年の要保護性は1つです。
つまり、要保護性は少年の資質や性格、家庭環境などに由来するものであるため、1人の少年ごとに1つであるとされているのです。

非行事実によって、要保護性が異なるわけではないという原則をいいます。

直接審理でなくてはならない

少年が審理の期日の出頭しない場合、審理をおこなうことができません。

少年事件の審判は刑事裁判と違い、少年の教育的効果を図る目的を含んでいます。
よって、刑事手続以上に本人出頭の必要性が高まるのです。

保護処分の種類

保護処分とは、審理期日で言い渡される処分結果の一種であり、以下の3種類があります。

  1. 保護観察
  2. 児童自立支援施設または児童養護施設送致
  3. 少年院送致

保護処分以外ですと、審判不開始、不処分、検察官送致、都道府県知事または児童相談所送致の5種類があります。

保護処分のそれぞれの流れは以下のとおりです。

保護観察

在宅事件でない場合、保護観察の決定が出るまで少年は身柄拘束されています。
よって、保護観察は身柄拘束解放のタイミングです。
保護観察のその後については、家庭裁判所の書記官や調査官から説明がなされますが、今後の出頭方法については各家庭裁判所により異なります。

保護観察となれば、通常はそのまま帰宅が許されます。

児童自立支援施設または児童養護施設送致

少年は審判後、児童福祉機関の職員に連れられ、施設に移動します。
児童養護施設は開放施設であるため、非行の進んだ少年が入所することはありません。
児童養護施設には、たとえば虐待児童や親のいない児童などが入所しているため、非行少年の入所については消極的なのです。

対して児童自立支援施設では、非行少年の自立をおもな目的をしています。
ただ、こちらにおいても施設自体は開放的ですので、非行が進んだ少年は対象外とされることもあります。

少年院送致

審判後、少年はいったん少年鑑別所にもどり、審判翌日か遅くとも数日後には少年院に送致されます。

どれくらい収容されるかについては家庭裁判所が勧告しますが、特段勧告がなければ大体1年程度です。
非行が常態化しておらず、心身の障害や著しい性格の偏りなどがなければ、1年未満の収容期間で出られることもあるでしょう。

少年院に収容できる年齢は原則20歳までです。
また、年齢によって初等少年院から特別少年院まで区分されており、心身に著しい故障のある場合は、医療少年院に収容されることもあります。

検察官に送致される場合(検察官逆送)とは?

少年事件が、死刑・懲役又は禁錮に当たる罪の事件で刑事処分が相当である場合や、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた事件で、罪を犯したときに16歳以上である場合、原則として検察官に送致されます(少年法20条1項・2項)。

家庭裁判所に送致後、保護処分でなく刑事処分が相当であると判断される場合、そのような措置がとられることもあるのです。

少年事件を弁護士に依頼するメリット

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弁護士が少年と接する際、弁護士は少年の味方です。
よって、弁護活動の過程において、少年が精神的に楽になったというケースもあるでしょう。

弁護士が少年事件の弁護をする際は、「弁護人」ではなく「付添人」として活動することになります。
弁護士が付添人として活動するメリット・内容は、おもに以下のとおりです。

  • 少年逮捕後、勾留請求されないための活動ができる
  • 少年と直接警察署や少年鑑別所で接見ができる
  • 少年の保護者とも面談をし、少年事件の流れについて理解してもらえる
  • 被害者がいる場合には、示談や被害弁償の準備が並行してできる
  • 観護措置を避けるための活動ができる
  • 家庭裁判所送致後、調査官と少年事件についての意見交換ができる

少年事件が家庭裁判所に送致されると、少年と調査官との面会が繰り返されます。
面会を通じて調査官がまとめる処遇意見は、少年審判に大きな影響をもたらします。

弁護士が調査官と面会をし、意見や報告をすることによって、当初の調査官の意見を変えさせることができる場合があるのです。

付添人としては、少年更生の兆しがあることや、被害者と示談が済んでいる場合はその旨を調査官に報告します。

少年の今後を支えるキーパーソンは、周囲の大人です。
そのため、保護者が少年事件についての流れを知ることは非常に大きな意味を持ちます。

お子様が逮捕された・非行についてお悩みの方は、まずは少年事件・刑事事件に詳しい弁護士に相談しましょう。