岡野武志

第二東京弁護士会所属。刑事事件で逮捕されてしまっても前科をつけずに解決できる方法があります。

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盗撮は迷惑防止条例違反になる?|軽犯罪法との定義の違いや改正点も解説

2023年7月13日以降の事件は「撮影罪」に問われます。

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どんな盗撮行為が迷惑防止条例違反になる?

東京都の迷惑防止条例は盗撮に関わる部分が改正されたってホント?

ご覧のページでは盗撮を取り締まる迷惑防止条例について徹底解説していきます。

盗撮による迷惑防止条例違反の構成要件

迷惑防止条例は各都道府県がそれぞれ制定している条例です。

条例とは言っても罰則規定があり、違反すれば刑法に違反したときと同じように罰せられます。

注意

迷惑防止条例は昨今改正の動きが活発になっている条例です。

このページでは、2018年9月現在での情報をお届けしています。

今回は主に東京都の条例を参照しながら解説していきます。

迷惑防止条例における盗撮の定義とは?

まずは、

東京都の迷惑防止条例は、どのような盗撮行為を規制しているのか

を見ていきます。

盗撮にかかる部分についての条文をご覧ください。

何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない。

(略)

二 次のいずれかに掲げる場所又は乗物における人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること。

 イ 住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所

 ロ 公共の場所、公共の乗物、学校、事務所、タクシーその他不特定又は多数の者が利用し、又は出入りする場所又は乗物(イに該当するものを除く。)

(略)

引用元:公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例5条1項(東京都)

上記の条文について、要素をわけて解説していきます。

迷惑防止条例違反となる場所

迷惑防止条例において盗撮の規制の対象となる場所は、

  • 人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所
  • 不特定または多数の者が利用し出入りする場所や乗物

です。

前者については、トイレや風呂のほか、住居やホテルの寝室居間なども含まれると解されるでしょう。

後者については、会社商業施設店舗なども対象です。

東京では、性的な目的における盗撮は、ほとんどがこの迷惑防止条例に該当し得ます。

迷惑防止条例違反となる行為

迷惑防止条例違反となる盗撮行為は、

  • 通常衣服で隠されている下着や身体を撮影する行為
  • 上記の目的でカメラなどを差し向けたり設置したりする行為

です。

衣服の上からでも違反になり得る

服の上からの盗撮行為であっても、場合によっては迷惑防止条例違反となる場合があります。

迷惑防止条例は

卑わいな言動

をすることも禁じています。

前二号に掲げるもののほか、人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、卑わいな言動をすること。

引用元:公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例5条1項3号(東京都)

この「卑わいな言動」というのは、判例上

社会通念上、性的道義観念に反する下品でみだらな言語または動作

と定義されています。

過去、以下のような態様の事件について、迷惑防止条例違反が認められた事例があります。

ショッピングセンターにおいて、女性客の後ろを執ようにつけねらい、携帯電話でズボン越しの臀部を近い距離から複数回にわたり撮影した行為

社会通念上、性的道義観念に反する下品でみだらな動作」だと認められるような盗撮行為であれば、着衣のうえからでも罪に問われる可能性はあるのです。

まとめ

迷惑防止条例の構成要件(盗撮)

場所・人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所
・不特定または多数の者が利用し出入りする場所や乗物
行為①・通常服で隠されている下着や身体を撮影する
・上記目的でカメラなどを設置したり差し向けたりする
行為②・社会通念上、下品でみだらな動作だと認められるような盗撮をする

東京都の迷惑防止条例を参照

迷惑防止条例は親告罪?時効は?

迷惑防止条例違反は非親告罪

誤解されがちなことなのですが、迷惑防止条例は非親告罪です。

被害者の告訴がなくても、犯罪の事実が立証されれば罪に問われます。

迷惑防止条例違反の罰則

盗撮における迷惑防止条例違反の罰則

  • 1年以下の懲役または100万円以下の罰金
  • 常習の場合2年以下の懲役または100万円以下の罰金

となります。

迷惑防止条例違反の時効

実は一口に時効と言っても色々な種類があります。

一般に刑事事件において時効と言ったときには、「公訴時効」のことを指します。

公訴時効とは

事件発生から一定の年数が過ぎると、起訴することができなくなる時効

盗撮による迷惑防止条例違反の公訴時効は

3年

です。

盗撮における東京都迷惑防止条例の改正点

現行の東京都の迷惑防止条例は、平成30年3月に旧来の条文を改正する形で公布され、同年7月から運用が始まりました。

迷惑防止条例はいま全国的に改正の機運が高まっている条例で、盗撮に関しては、とくに盗撮を禁じる場所の拡充が図られています。

迷惑防止条例って改正されたの?

東京都の、改正前の迷惑防止条例を見てみましょう。

何人も,正当な理由なく,人を著しく羞恥させ,又は人に不安を覚えさせるような行為であつて,次に掲げるものをしてはならない。

(略)

二 公衆便所,公衆浴場,公衆が使用することができる更衣室その他公衆が通常衣服の全部若しくは一部を着けない状態でいる場所又は公共の場所若しくは公共の乗物において,人の通常衣服で隠されている下着又は身体を,写真機その他の機器を用いて撮影し,又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け,若しくは設置すること。

(略)

引用元:旧・公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例5条1項(東京都)

改正前の規定では、

  • 公衆が通常衣服の全部若しくは一部を着けない状態でいる場所
  • 公共の場所、公共の乗物

における盗撮だけが規制されていました。

あくまで「公衆の利用する場所や公共の場所における盗撮」が禁じられていただけなので、自宅などの私的な空間はもちろんのこと、

  • 会社内
  • 学校内
  • ホテル内

などの盗撮について、迷惑防止条例に問えないケースも多かったのです。

旧規定では軽犯罪法などとどう区別されてたの?判例は?

私的な空間での盗撮も罪に問えるように迷惑防止条例を改正する」といった潮流は最近になって生まれたものです。

2018年9月現在、全国30の都道府県においてはいまだ改正がされておらず、私的な空間での盗撮を迷惑防止条例に問うことはできません。

公衆の利用する場所や公共の場所における盗撮のみを規制する地域では、私的な空間での盗撮は

  • 軽犯罪法
  • 刑法住居侵入罪建造物侵入罪

に問われることになります。

軽犯罪法とは

軽犯罪法には、「のぞき見」を規制する罪が規定されています。

左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。

(略)

二十三 正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者

(略)

引用元:軽犯罪法1条

判例上、盗撮はこの「のぞき見」に該当するとされています。

(略)

本条号所定の場所を視認し得る場所に撮影機能のある機器をひそかに置いて当該場所を撮影録画する行為は,「のぞき見行為」の中核的部分を既に実現しているものということができる

(略)

引用元:福岡高等裁判所 平成27年4月15日判決 事件番号平成27年(う)第1号

軽犯罪法に問われた場合、その罰則

拘留または科料

です。

これは、それぞれ禁錮刑、罰金刑の軽い版となります。

刑罰の種類

住居侵入罪(建造物侵入罪)とは

また、盗撮行為は住居侵入罪建造物侵入罪にも問われ得ます。

正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。

引用元:刑法130条

住居侵入罪は、正当な理由なく人の住居や建造物に進入した場合に問われる罪です。

盗撮は当然のことながら正当な理由にはなり得ないため、この罪が成立するのです。

罰則は、

3年以下の懲役または10万円以下の罰金

です。

盗撮における軽犯罪法と住居(建造物)侵入罪
 軽犯罪法住居(建造物)侵入罪
内容通常人が衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見る正当な理由なく、住居や建造物に進入する
罰則拘留または科料3年以下の懲役または10万円以下の罰金

各都道府県の迷惑防止条例の内容

通常、これらの罪は、

迷惑防止条例が公衆の利用する場所や公共の場所における盗撮のみを規制している地域

において、私的な空間での盗撮が行われたときに適用されます。

ここで、迷惑防止条例が

  • 私的な空間もふくめ「人が通常衣服を身につけない場所」も規制している都道府県
  • 公共の場所や乗り物、公衆の利用する場所のみを規制している都道府県

をそれぞれ一覧で見てみましょう。

各都道府県の迷惑防止条例における盗撮の規制範囲(2018年9月現在)
 ○:私的な空間も含めて「人が通常衣服を身につけない場所」を規制
×:公共の場所や乗り物、公衆の利用する場所のみを規制
北海道
青森県×
岩手県×
宮城県
秋田県
山形県×
福島県×
茨城県×
栃木県×
(ただし特定かつ多数の者の用に供される場所、特定かつ多数の者の用に供される乗物は規制)
群馬県
埼玉県×
千葉県×
東京都
神奈川県
新潟県
富山県×
(ただし特定又は多数の者が利用するような場所、乗物は規制)
石川県
福井県×
山梨県×
長野県×
岐阜県×
静岡県
愛知県×
三重県×
滋賀県×
(ただし特定多数の者が集まり、もしくは利用する場所は規制)
京都府×
大阪府×
(ただし不特定又は多数の者が出入りし、又は利用するような場所又は乗物は規制)
兵庫県
奈良県
和歌山県
鳥取県×
島根県
岡山県×
(ただし不特定又は多数の者が出入りし、又は利用するような場所のうち、通常人が衣服を身につけないでいるような場所は規制)
広島県×
山口県×
徳島県
香川県×
愛媛県×
(ただし特定かつ多数の者が利用するような場所は規制)
高知県×
福岡県×
佐賀県×
(ただし特定多数の者が使用する場所等において人が通常衣服等の全部又は一部を着けない状態でいる場所は規制)
長崎県×
熊本県
大分県
宮崎県×
鹿児島県×
(ただし特定かつ多数の者が利用するような場所は規制)
沖縄県

各都道府県の迷惑防止条例条文を参照

ただこの表の中には、「今まさに改正に向けて本格的に動き出している」都道府県も存在します。

数か月のうちに条例の内容が変わっている、といったケースも考えられます。

迷惑防止条例でお悩みの方は、実際にお住まいの地域の条例を調べてみることをおすすめします。

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