岡野武志

第二東京弁護士会所属。刑事事件で逮捕されてしまっても前科をつけずに解決できる方法があります。

「刑事事件 法律Know」では、逮捕や前科を回避する方法、逮捕後すぐに釈放されるためにできることを詳しく解説しています。

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覚醒剤の懲役は1年6ヶ月?実際の相場と執行猶予がつく条件を解説

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  • 家族が覚醒剤の使用で逮捕されてしまった…
  • 覚醒剤で刑務所に入らない方法はないのだろうか…
  • 覚醒剤でまた捕まってしまった、今度こそ懲役刑だろうか…

覚醒剤の使用・所持は10年以下の懲役と定められていますが、実際の刑の相場はまた違います。

実際に家族が覚醒剤で逮捕されたときは、どのくらいの刑罰を覚悟すればよいのでしょうか。また、刑務所に行かずにすむ方法はないのでしょうか。

この記事では、覚醒剤の懲役について法定刑と実際の相場・執行猶予などについて解説していきます。

  • 覚醒剤の懲役刑の相場はそのくらい?
  • 覚醒剤で執行猶予は獲得できる?
  • 覚醒剤の再犯でも執行猶予はつく?

【罪名別】覚醒剤の法定刑と実際の懲役刑相場

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覚醒剤に関する違法行為は、覚醒剤取締法で定められています。

法律に定められた法定刑と、裁判の判決で下される実際の刑罰を比べてみましょう。

【覚醒剤使用】の懲役

次の各号の一(いずれか)に該当する者は、10年以下の懲役に処する。

一 第19条(使用の禁止)の規定に違反した者

覚醒剤取締法41条の3第1項1号

覚醒剤をみだりに使用した場合の法定刑は「10年以下の懲役」ですが、実際の刑罰の相場は懲役1年6ヶ月~2年(初犯であれば執行猶予3年程度)ほどです。

覚醒剤使用の懲役刑割合
懲役1年以上2年未満(全部執行猶予)27.8%
懲役1年以上2年未満(一部執行猶予)10.0%
懲役1年以上2年未満17.3%
懲役2年以上3年以下(全部執行猶予)8.6%
懲役2年以上3年以下(一部執行猶予)9.3%
懲役2年以上3年以下22.0%
懲役3年を超える4.9%
令和2年犯罪白書より

また、全体で見ると全部執行猶予が36.4%、一部執行猶予が19.3%、実刑が44.3%となっています。

覚醒剤の使用は初犯であれば、執行猶予がつくのが一般的です。

一方で再犯の場合は、適切な弁護活動なしで執行猶予を獲得するのは非常に難しくなっています。

【覚醒剤所持・譲渡・譲受】の懲役

覚醒剤を、みだりに、所持し、譲り渡し、又は譲り受けた者~は、10年以下の懲役に処する。

覚醒剤取締法41条の2第1項

覚醒剤所持の法定刑は「10年以下の懲役」ですが、実際の刑罰の相場は懲役1年6ヶ月~2年(初犯であれば執行猶予3年程度)・覚醒剤の没収です。

覚醒剤所持・譲渡・譲受の懲役刑割合
懲役1年未満(一部執行猶予)0.1%
懲役1年未満0.3%
懲役1年以上2年未満(全部執行猶予)27.6%
懲役1年以上2年未満(一部執行猶予)8.5%
懲役1年以上2年未満12.3%
懲役2年以上3年以下(全部執行猶予)17.3%
懲役2年以上3年以下(一部執行猶予)8.9%
懲役2年以上3年以下17.6%
懲役3年を超える7.4%
令和2年犯罪白書より

【営利目的の覚醒剤所持・譲渡・譲受】の懲役

営利の目的で前項の罪を犯した者は、1年以上の有期懲役に処し、又は情状により1年以上の有期懲役及び500万円以下の罰金に処する。

覚醒剤取締法41条の2第2項

「営利の目的」とは、覚醒剤の譲渡などの行為によって財産上の利益を得ることを動機としている場合を指します。

簡単に言うと、無償で第三者に譲った場合は単純譲渡罪となりますが、対価を得て売った場合は営利目的譲渡罪となります。

営利目的での覚醒剤所持の法定刑は「1年以上の懲役(情状により+500万円以下の罰金)」ですが、実際の刑罰では懲役5年前後・所持量に応じた罰金数十~数百万円となるのが一般的です。

営利目的の覚醒剤所持・譲渡・譲受の懲役刑割合
懲役1年以上2年未満1.1%
懲役2年以上3年以下(全部執行猶予)2.2%
懲役2年以上3年以下(一部執行猶予)1.1%
懲役2年以上3年以下27.5%
懲役3年を超え5年以下50.5%
懲役5年を超え10年以下17.6%
令和2年犯罪白書より

【営利目的の覚醒剤輸入・輸出・製造】の懲役

営利目的でない覚醒剤輸入等の罪も定められていますが、輸入等は営利目的を伴っているものがほとんどです。

覚醒剤を、みだりに、本邦若しくは外国に輸入し、本邦若しくは外国から輸出し、又は製造した者~は、1年以上の有期懲役に処する。

2 営利の目的で前項の罪を犯した者は、無期もしくは3年以上の懲役に処し、又は情状により無期もしくは3年以上の懲役及び1000万円以下の罰金に処する。

覚醒剤取締法41条

営利目的の覚醒剤輸入等の法定刑は「無期もしくは3年以上の懲役(情状により+1000万円以下の罰)」ですが、実際の刑罰は以下のようになっています。

営利目的の覚醒剤輸入・輸出・製造の懲役刑割合
懲役2年以上3年以下(全部執行猶予)0.9%
懲役3年を超え5年以下1.9%
懲役5年を超え10年以下84.3%
懲役10年を超える13.0%
令和2年犯罪白書より

覚醒剤で逮捕…懲役刑が決定するまでの流れは?

逮捕されてからは、3日間警察・検察で取り調べられ、その後も最大20日間拘束され、起訴されるかどうかが決定されるのが基本的な流れです。

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覚醒剤を使用・所持したら必ず逮捕される?

覚醒剤の使用後に尿検査で陽性が出た場合や、覚醒剤の現物を所持しているのが見つかった場合には、逮捕される可能性は非常に高いです。

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原則として被疑者を逮捕するには①嫌疑の相当性と②逮捕の必要性が必要ですが、覚醒剤をはじめとする薬物事件はこの2点を満たしやすい傾向があります。

覚醒剤の現物があれば違法行為をした疑いは十分であり、また覚醒剤はトイレに流したりすることで証拠隠滅が容易であるためです。

覚醒剤で逮捕されたら勾留される?

覚醒剤で逮捕されると、高い割合で勾留されます。

なぜなら釈放することで、覚醒剤使用者間で連絡を取り合ったり、まだ押収されていない覚醒剤が証拠隠滅されてしまうおそれがあるためです。

そのような恐れがないと考えられる場合は、準抗告を行い釈放を求めることもできます。

ただし薬物事件の場合、準抗告が認められることは現時点では非常にまれです。

実際に覚醒剤で起訴された者・不起訴となった者・家裁送致された者のうち、98.4%が勾留されていたという統計もあります(令和2年犯罪白書)。

覚醒剤で逮捕されたら必ず裁判になる?

覚醒剤で逮捕・送検されたあとに起訴される(裁判となる)割合は、75%となっています。

薬物事件では、以下のような事情が無ければ基本的に起訴となります。

覚醒剤事件が不起訴となるパターン
  • 覚醒剤使用の容疑だったが、尿検査が陰性だった
  • 尿検査の方法が不適切だった
  • 合法の薬物のつもりで購入しており、覚醒剤を所持しているという認識が無かった
  • 手に入れた薬の中に、たまたま覚醒剤が混入していた
  • 他者からの証言で逮捕されたが、覚醒剤の購入などを裏付ける証拠が無かった
  • 同居人が覚醒剤を所持していて共同所持が疑われたが、実際は関与していなかった

覚醒剤での懲役を避け【執行猶予】を得る弁護活動

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覚醒剤で逮捕されてしまった場合、勾留や起訴を避けるのは難しいケースがほとんどです。

ですので執行猶予の獲得を目指し、刑務所に入らず済むようにするのが基本的な弁護活動となります。

覚醒剤の【初犯】で懲役刑を避けるには?

覚醒剤の所持・使用で前科が無い場合、執行猶予がつくのが一般的です。

執行猶予とは

懲役刑の有罪判決を言い渡されてもすぐには刑務所に入らず、一定期間罪を犯さずに過ごせば、刑の言渡しの効力が失われる制度

例えば覚醒剤使用で懲役1年6ヶ月、執行猶予3年の判決を受けた場合、刑の言渡しから3年間犯罪を犯すことなく過ごせば、刑務所で服役することはありません。

なお営利目的があった場合、所持が1キロ以上など多量の場合は、執行猶予がつかない可能性が高いです。

執行猶予がつき、実際に刑務所に入っていなくとも、有罪判決を受けた時点で前科はつくことになるため注意が必要です。

もしも覚醒剤で即決裁判となると、必ず執行猶予がつきます。

即決裁判とは被告人本人の同意などの条件を満たしたうえで行われる、簡易的な手続きの裁判です。

覚醒剤の【再犯】で懲役刑を避けるには?

覚醒剤で再度有罪となっても、執行猶予がつく可能性はあります。

具体的に執行猶予がつくには、以下の要素が重要です。

覚醒剤で執行猶予がつくためのポイント
  • 家族や上司などの情状証人被告人を監督することを誓約した者がいる
  • 薬物依存を克服するため、病院に通院したり自助グループに参加している

弁護士と協力することで、情状証人や監督を宣誓する者から「釈放されたら自分が責任をもって監督する」という証言や誓約書が得られれば、執行猶予を獲得できる可能性があがります。

また、保釈されている間に薬物依存の治療に参加することで、有利な情状となります。

刑法上は、覚醒剤の懲役刑で出所したときから5年以内にまた罪を犯し有罪となることが「再犯」と定義されています。

覚醒剤所持・使用の「再犯」の場合、20年以下の懲役刑となります。

また「再犯」の場合、初犯よりも重い刑罰となる傾向があります。

覚醒剤の【執行猶予中の犯行】で懲役刑を避けられる?

執行猶予期間中に再度覚醒剤使用・所持などの罪を犯してしまった場合、執行猶予がつくことは非常にまれです。

再度の罪で執行猶予がつかないと、前の罪の執行猶予が取り消されてしまい、より長期間の懲役刑となります。

例えば前の罪「懲役1年6ヶ月、執行猶予3年」の執行猶予期間中に「懲役2年」の判決を言い渡された場合、合計3年6ヶ月の懲役刑に服することになります。

再度の執行猶予がつく条件に「1年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受け、情状に特に酌量すべきとき」というものがあり、覚醒剤の再犯でこれが満たされることはほぼありません。

起訴決定後、保釈してもらう方法は?

起訴が決定した後も勾留されている場合には、条件を満たしていれば被告人を保釈(一時的な身柄拘束からの解放)するよう請求できます。

保釈の効果
  • 弁護士と十分な打ち合わせの時間がとれる
  • 家族へのケアや、会社への連絡ができる
  • 保釈期間中に就労したり、薬物依存の治療プログラムに参加することができる
  • 薬物治療を受けていることが有利な情状として評価される場合がある

特に薬物依存の治療プログラムに参加することは、執行猶予を得るうえで非常に重要です。

起訴決定後、保釈に必要な保釈金は?

保釈をしてもらう条件の1つに保釈金の支払いがあり、覚醒剤事件の保釈金の相場は、およそ150~200万円です。

もっとも、実際の保釈金は犯罪行為の悪質性や被疑者の資産状況などによって大きく変化します。

保釈金は裁判が終了した後に返ってきます。

まとまった金額が用意できない場合は、日本保釈支援協会など、保釈金の立替システムを利用することもできます。

覚醒剤の懲役刑を避けたいなら弁護士にご相談を

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覚醒剤は繰り返し罪を犯してしまう方が多く、また再犯の場合は高確率で懲役刑となってしまいます。

ですが社会復帰のため大切なのは、長期間の実刑よりも根本から薬物を断ち、治療を行っていくことです。

そのためには弁護士が積極的に活動を行い執行猶予を得ること、そしてご家族の方がその後の生活をサポートしていくことの両方が必要です。

もしも覚醒剤で家族や知人が逮捕されたとご連絡があれば、まずはLINEやお電話でご相談ください。

皆様のご相談をお待ちしております。