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「刑事事件 法律Know」では、逮捕や前科を回避する方法、逮捕後すぐに釈放されるためにできることを詳しく解説しています。
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ひき逃げで会社はクビになる?懲戒解雇の可能性と弁護対策を解説

ご自分やご家族がひき逃げ事件を起こし、会社をクビになるのでは?と不安になっていませんか?
まず、ひき逃げ事件を起こした被疑者・被告人は、以下の点について今後注力していく必要があります。
- 刑事事件の対策(正当な処分を求める)
- 民事的な対策(被害者と示談をする)
- 会社などご自分の立場における対策(解雇にならない要素を証明する)
当記事においては、おもに3つめの「会社などご自分の立場における対策」について重点的に解説しています。
また、ひき逃げ事件を起こして会社をクビになるかどうかは、1および2との関連も重要になってきます。
被疑者本人にとっては、上記3つの対策についてどれも欠かすわけにはいきません。
ひき逃げ事件の性質・解雇の性質ならびに今後の対策について理解し、手遅れにならないよう準備をしましょう。
刑事事件の被疑者や被告人になってしまったら、まずは刑事事件を多く扱う弁護士への相談が必須です。
- ひき逃げの罪についてわかる
- ひき逃げで会社をクビになる可能性・根拠がわかる
- ひき逃げで会社をクビにならないための対策がわかる
目次
そもそもひき逃げとは?

そもそも、ひき逃げとはどのような罪かについて知りましょう。
ひき逃げとは?
ひき逃げとは、人を死傷させる交通事故を起こしたにもかかわらず、その場で救護義務や警察通報など現場対応をせずに、逃げ去る行為をいいます。
道路交通法第72条違反となり、刑罰は10年以下の懲役または100万円の罰金と定められています。
ひき逃げは、行為時から逃走している点で、逮捕される可能性が非常に高いです。
逮捕されたあとは、警察署の留置場での生活を強いられ、その後勾留請求されることもあります。
道路交通法違反のほか、ひき逃げをしたことにより相手を負傷もしくは死亡させてしまった際は、以下の罪に該当します。
- 過失運転致死傷罪
過失により被害者を負傷もしくは死亡させた - 危険運転致死傷罪
危険運転により被害者を負傷もしくは死亡させた
なおいずれの罪においても、起訴され有罪にならなければ、刑罰は科せられませんし前科もつきません。
次章では、ひき逃げ事件と会社での立場について詳しく解説していきましょう。
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ひき逃げで会社をクビになる理由

解雇とは?
解雇(クビ)とは、使用者側の一方的な労働契約の終了をいいます。
そのため使用者側は、解雇制限事由の規定が適用されたり、解雇予告手当の支払い義務があったりと、さまざまな規定の縛りを受けます。
まずは解雇の種類からみてみましょう。
解雇の種類はおおきく2つです。
- 普通解雇
- 懲役解雇
当記事においては、ひき逃げ事件を中心にお話ししていきますので、2の懲戒解雇に注目していきましょう。
ひき逃げ事件を起こした被疑者・被告人は、懲戒解雇されてしまうのかどうか、ということです。
解雇濫用法理とは
もともと解雇とは、判例法浬で確立された「解雇濫用法理」により、使用者側の解雇権濫用が認められないようになっていました。
現行では、労働契約法第16条に明記されています。
(解雇)第十六条
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
労働契約法第16条
条文にあるように、会社が労働者を解雇するためには、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であることが必要です。
では、実際解雇される現場ではどのような点で問題になるのか、ひき逃げ事件ではどうなのかについて、以下解説していきましょう。
ひき逃げで懲戒解雇される可能性
解雇の判断基準
ひき逃げ事件を起こし、懲戒解雇されるかどうかについては、以下が基準になります。
- 就業規則に解雇の理由が明確に記載されているか
- その他の個別事情
就業規則の記載内容、その他の事情を考慮し、解雇するだけの相当な理由があれば解雇対象となります。
就業規則とは
就業規則とは、会社の従業員など「労働者」が就業するにあたり、守るべき規律および労働条件に関する具体的細目について定めた規則類の総称です。
会社に勤務する従業員は、勤務先の就業規則において拘束されます。
就業規則は周知されていることが条件ではありますが、従業員個人がその就業規則を知っていた・知らなかったに関係なく拘束されるという性質があります。
就業規則は、労働基準法などの法令・労働組合と結ぶ労働協約の次に優先されます。
また、会社のなかでの「懲罰」制度は以下の4つであり、そのうち法令に規定されているのは「減給」についてのみです。
- 減給
- 譴責(けんせき)
- 出勤停止
- 即時解雇
そこで具体的な解雇事由については、就業規則によることになるのです。
ひき逃げ事件においては、以下の点で解雇されるか否かが問題となる可能性があります。
- 逮捕されているか否か
- 起訴され有罪判決を受けたか否か
逮捕とは、捜査機関による、取り調べのために必要な身体拘束をいいます。
逮捕時点での被疑者は、この時点では無罪推定により有罪とは断定できません。
結論、起訴され有罪判決を受けた場合には解雇される可能性が高まります。
また就業規則において、刑事事件における解雇条件を、有罪判決を受けた場合に限定していることも多いです。
そして逮捕時点での解雇は、就業規則に明記されていても、「不当解雇」とされる場合があります。
最終的には、個別事情も考慮のうえ、解雇されるかどうかが決まることになるでしょう。
なお会社側には、解雇について慎重に判断されることが求められており、労働者には弁明の機会を与えなければなりません。
ここまでの解雇にまつわる説明をまとめたものは、以下のとおりです。
- 大前提として、労働者を解雇するには客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要
- 懲戒解雇されるか否かは就業規則による
- 就業規則に解雇事由が明記されていても、個別事情も考慮する必要あり
- 就業規則に解雇事由が明記されていても、逮捕時点での解雇は無罪推定に反して無効になることあり
- 労働者には弁明の機会も与えなければならない
では、ひき逃げ事件の「個別事情」について、もう少し詳しく検討していきましょう。
ひき逃げ事件で考慮される可能性のある個別事情
ひき逃げ事件とひとくちにいっても、その態様は様々です。
ひき逃げ事件は確かに重大犯罪ですが、刑事事件の処分や会社での処分においては、以下の要素も考慮されるでしょう。
- 相手(被害者)の状態は軽症なのか・重症なのか
- 飲酒運転や無免許運転などその他の悪質要素はあったか
- 本人は反省しているか
- 被害者への損害賠償義務を果たしているか
- 被害者との示談は成立しているか
上記は、就業規則のほかに考慮される可能性のある、個別事情の一例です。
個別事情の程度により、処分が重くなったり、軽くなったりする可能性があります。
実際の刑事裁判においては、ひき逃げの態様が悪く、悪質性が認められるケースにおいて、実刑判決とされる事案は多いです。
相手の被害状態が重篤なケースでも、その後の処分は重くなります。
その場合、刑事事件の処分に比例して、会社を解雇される可能性も高くなってくるでしょう。
ひき逃げで会社をクビになりたくない方は弁護士へ

まずは弁護士相談
くり返しになりますが、ひき逃げ事件の内容はさまざまです。
第一に、弁護士に事件概要を話すところから始めましょう。
弁護士は、これまでの実績や裁判例などにもとづき、事件の見通しを立て対策を検討します。
弁護士への相談時点で会社から解雇を言い渡されている場合は、一部が不当とされたり、すべてが無効になったりすることもあります。
ひき逃げ事件の弁護活動・対策
ひき逃げ事件で不起訴処分を獲得するには
ひき逃げ事件で解雇にならないために、もっとも良い結末は「不起訴処分」を獲得することです。
不起訴処分を獲得すれば、会社を解雇されない可能性が高くなるでしょう。
実際に解雇を言い渡されていても、「不当解雇」とされる可能性が高いです。
不起訴処分になれば、「有罪」とはならず事件が終了します。
不起訴処分とは、以下3つをいいます。
- 嫌疑なし
- 嫌疑不十分
- 起訴猶予
起訴もしくは不起訴の判断は、検察官の専権とされています。
そもそも犯人ではないことが明らかになったり、犯罪を認定するだけの証拠がなかったりした場合には、「嫌疑なし」とされます。
「嫌疑不十分」の例としては、ひき逃げをしたが、運転者本人に事故の認識がなかったケースです。
被害者をひいてしまったことに対し、気づいていなかった場合などが該当するでしょう。
不起訴処分を獲得するためには、検察官に意見書をもって意見することが必要です。
検察官に対し、起訴理由が存在しないことを明らかにするということです。
「起訴猶予」は、犯罪の軽重や犯人の年齢、前科前歴の有無、その他の事情を考慮して判断されます。
ひき逃げ事件においては、以下の点が重要視されます。
ひき逃げ事件で不起訴になるための重要要素
- 被害者と示談ができている
- 加害者の過失が重大でない
- 被害者の被害状況が重くない
上記が立証できれば、不起訴処分を獲得できる可能性があります。
なお示談は、被害者のいる犯罪において、もっとも重要かつ有効な手段です。
基本的には弁護士を介すほか手段がありませんので、優先的に依頼しましょう。
示談成立は、被害者の許しを得たことに繋がる場合が多いです。
許しを得ている時点で、刑事処分が猶予される可能性が高いのです。
そもそもひき逃げ事件を会社に連絡されたくない場合は?
この記事を読まれている方のなかには、事件を起こした直後の会社連絡を心配されている方もいるかと思います。
ですが、警察が率先して会社に連絡することは通常ありません。
ただ、ひき逃げ事件は逮捕の可能性が高いため、逮捕後勾留されてしまえば会社を無断欠勤しかねません。
そのような状況になった場合、会社に事件が明るみになってしまうことが考えられるでしょう。
会社を長期欠勤したくない場合は、以下の弁護活動を優先します。
- 身柄解放のための活動
- 被害者との示談
身柄解放活動は、逮捕直後から可能です。
検察官の勾留請求前であれば、勾留請求されないよう意見書を提出します。
勾留決定後であれば、準抗告や勾留取消請求を検討します。
なお、被害者対応は並行しておこなうことになるでしょう。
逮捕・勾留中に被害者との示談が成立すれば、その理由によっても釈放が期待できます。
一貫して重要なのは、加害者やその家族が早期に行動することです。
刑事事件は、身柄事件であれば時間に制限されるため、早期に手を打っておかなければあっという間に起訴されてしまいます。
起訴されてしまいますと、刑事処分の面からみても会社立場からみても手遅れになる可能性が高いです。
最後に、この章についてまとめておきましょう。
- ひき逃げ事件を起こしたらまずは弁護士相談
- 事件内容を相談後、ご自分に必要な弁護活動を依頼
- 刑事弁護は起訴前におこなうことが重要
- 被害者との示談は弁護活動のなかでも優先させる
- 早めの弁護士相談・依頼により、釈放の可能性や解雇にならない可能性が高まる
無罪の推定とは、被疑者もしくは被告人について、刑事裁判で有罪判決が下らない限りは無罪として扱わなければならない原則のことです。
そのため、無罪推定である被疑者や被告人をただちに解雇できるかが問題となります。