岡野武志

第二東京弁護士会所属。刑事事件で逮捕されてしまっても前科をつけずに解決できる方法があります。

「刑事事件 法律Know」では、逮捕や前科を回避する方法、逮捕後すぐに釈放されるためにできることを詳しく解説しています。

被害者との示談で刑事処分を軽くしたい、前科をつけずに事件を解決したいという相談は、アトム法律事務所にお電話ください。

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自転車窃盗は逮捕される?罪の内容や逮捕の流れ・時効や起訴前示談について

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つい出来心で駐輪していた自転車を盗難してしまったり、過去に自転車を盗難し時効を迎えていない状態であったりなど、自転車盗難が罪になるという意識の薄いまま犯行に及び不安を抱えている方もいるのではないでしょうか。

自転車窃盗は犯罪です。
よって、捜査機関に盗取したことがバレれば逮捕につながることもあるでしょう。

当記事では以下の疑問に沿って、「自転車窃盗」のその後の流れについて解説しています。

  • 自転車盗は何罪になる?罰則は?
  • 自転車窃盗で逮捕されたら?逮捕にはどんなリスクがある?
  • 自分は未成年だが自転車窃盗で逮捕されるのか?
  • 過去に自転車窃盗をした。逮捕の可能性はある?時効はどうなってる?
  • 自転車窃盗で前科を付けたくない・・・何をしたらいい?

それでは順番にみていきましょう。

自転車の窃盗は犯罪?

窃盗罪の構成要件とは?

つい軽はずみな行動であっても他人の自転車を盗んでしまった場合、「窃盗罪」として処罰されます。
まずはじめに、窃盗罪が成立してしまう理由などについて解説していきましょう。

(窃盗)第二百三十五条 
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

刑法235条

自転車を盗んでしまった場合、「不法領得の意思をもって、他人の財物の占有を自己の占有に移した場合」に犯罪として成立します。

不法領得の意思とは、自分の物にする意思のことです。
判例上では、「権利者を排除し、他人の物を自己の所有物としてその経済的用法に従いこれを利用処分する意思」と定義づけられています。

窃盗罪に規定されている「占有」ですが、実際に所持している必要はありません。
占有はあくまでも事実的な支配のことをいっているのです。

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窃盗罪は財産罪の中でも領得罪にあたります。

自転車の盗難で窃盗罪に該当するかどうかは、「占有の移転」があったかなかったかによって分かれます。

被害者の意思に反し、自転車を盗難したのであれば所持の有無にかかわらず「窃盗罪」として処罰されてしまうのです。

自転車窃盗にならないケースとは?

他人の自転車を利用した場合であっても、窃盗罪が成立しないケースもあります。

例えば、「友人所有の自転車を、友人に黙って何時間も乗っていた場合」などです。

くり返しになりますが、窃盗罪では不法領得の意思、つまり「権利者を排除し、他人の物を自己の所有物とした」ことが要件となっています。
自転車の持ち主に返還する意思があり、実際に使用後すぐに返却した場合は、自転車盗にはなりません。

自転車窃盗で逮捕されたら?

自転車窃盗で逮捕されるまでの流れ

被害者から自転車盗難の被害が出されても、検挙率は決して高くないのが現状です。
しかしだからといって、逮捕される可能性がないわけではありません。

警察官がたまたま張り込みや待ち伏せををしていた場合、現行犯として逮捕されるケースもあるでしょう。

逮捕には大きく「現行犯逮捕」と「通常逮捕」があります。

現行犯逮捕と後日逮捕の違い

現行犯逮捕は通りがかりの人でもできるため、私人逮捕とも呼ばれています。
自転車盗が現行犯だった場合は、一般人による逮捕が認められているのです。

通常逮捕となるケースは、たとえば被害者から盗難届が出されていた場合です。
防犯カメラなど証拠が残っていれば、後日逮捕される可能性はあるでしょう。

またパトロール中の警察官が職務質問を行い、自転車について照会をして盗難車であることが判明し、その場で逮捕されるといったケースもあります。

自転車窃盗が他の罪に問われるケースとは?

施錠されている自転車を盗難したケース

施錠されている自転車をそのまま運転することはできないため、鍵の部分や自転車周辺に施されたチェーンを破壊するケースもあります。
このような場合は「器物損壊罪」にも該当し、窃盗とは別に再逮捕されるという可能性もあります。

(器物損壊等)第二百六十一条 前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。

刑法261条

自転車窃盗目的で住居や建造物に侵入した

自転車盗難するため、他人の住居やその周辺をまたぐケースが考えられます。
住宅の敷地内であれば住居侵入罪に該当するケースが多く、そのような場合は、住居侵入罪としても逮捕・取り調べを受けることがあるでしょう。

(住居侵入等)第百三十条 
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。

刑法130条

自転車窃盗で逮捕・勾留されるリスクとは?

逮捕・勾留の流れとは?

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自転車窃盗で逮捕されてしまった場合、まずは警察の取り調べを受けます。
警察が法律上取り調べにかけられる時間は48時間ですが、その後釈放されなければ身柄は検察へ送られます。
これが検察官送致です。

検察へ送られたあとは、検察官の判断によりさらに身柄拘束が続くことが予想されます。
この身柄拘束のことを「勾留」といいますが、勾留期間は最大20日間となっているため、釈放されない限りは23日間もの身柄拘束が続いてしまうのです。

なお逮捕されてから勾留中にかけては、警察署内の留置場などで拘束されることになります。

身柄拘束のリスクに対応するためには、弁護士への早期相談がベストです。

逮捕された場合、学校や仕事を休まなければならない

身柄拘束が長期に及ぶと、加害者といえど学校や社内で不利益を受けるでしょう。
逮捕・勾留中は基本的に外部と連絡ができないため、会社であれば無断欠勤が続くことも予想されます。

自転車窃盗は、学生など若い人がついつい手を出してしまうこともある犯罪です。
身柄拘束が長期化すれば、毎日の授業や進学に影響が出ることは間違いないでしょう。
学校に逮捕の事情が明るみになれば、停学・退学措置を採られることも容易に想像できます。

悪質な場合や再犯の場合は前科がつくことも

自転車の窃盗は、特に初犯であればそもそも検察官送致されず、微罪処分で済む場合もあります。
しかし油断してはいけません。
再犯だったり行為が悪質だったりした場合には、逮捕・勾留後、起訴されてしまうケースだってあるのです。

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検察官に起訴されると、窃盗罪条文記載のとおり、懲役刑や罰金刑に科せられます。

罰金刑となれば刑務所に収監されることはないですが、略式裁判にかけられ、犯人は有罪になってしまいます。
つまり罰金刑であっても前科はつくのです。

自転車窃盗をしたのが未成年だった場合は?

自転車窃盗はつい出来心でやってしまうケースも多々あり、その犯人が未成年であることも考えられます。
そのため、窃盗犯が未成年である場合でも、逮捕や勾留、起訴不起訴の判断がされるかどうかが気になるところです。

結論、未成年であっても、逮捕・勾留は成人と同じ手続きにのっとってされます。
しかしその後の手続きが成人と異なります。
未成年の事件は検察庁に送られるのではなく、全件家庭裁判所に送られる仕組みになっているのです。

未成年の窃盗事件は、少年法にのっとって処罰されます。
また20歳未満のなかでも、14歳未満においては刑事責任を負わないとされてますが、児童相談所に事件が送られることがあります。

自転車窃盗の時効は何年?

自転車窃盗の時効は7年です。

この時効は「公訴時効」といわれるもので、刑事上の時効になります。
公訴時効を過ぎれば、窃盗犯の犯人は起訴されることはありませんし、その前段階である逮捕もされないでしょう。

しかし注意したいのは、あくまで刑事上の時効が7年というだけで、「責任」の面においては民事上の損害賠償責任も取らなければならないこともあります。

あくまで持ち主が慰謝料請求を視野に入れている場合ですが、民事上の時効は窃盗犯の犯人を知ったときから3年、犯人を知らなかった場合は不法行為のときから20年であり、時効が完成すれば損害賠償請求権は消滅します。

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窃盗犯である自転車盗の時効の起算点は、自転車を窃取したときです。

犯罪行為が終わった時点からカウントすることになっています。

時効の種類年数
公訴時効
(起訴されなくなる時効)
自転車窃取から7年
民事上の時効
(不法行為責任の時効)
加害者を知ったときから3年(知らない場合は20年)

自転車窃盗で起訴されないためには?

被害者との示談を検討する

最後に、自転車窃盗で起訴されないためにしておくべきことをまとめておきましょう。

先述のとおり、自転車窃盗の行為が再犯または悪質である場合は逮捕後、さらなる身柄拘束や起訴される可能性が出てきます。

逮捕されても起訴されないためには、被害者との示談成立が重要です。
示談書には、「犯人を許す」といった文言(宥恕文言)を通常記載するため、そのような被害者の意思を捜査機関に提出することは非常に有効なのです。

自転車盗で逮捕されても、起訴前に示談ができていれば不起訴処分の獲得により前科を付けずに済む可能性が非常に高まります。

刑事事件の手続きについて弁護士に相談・依頼する

先ほどご説明した被害者との示談を含め、刑事事件の実績豊富な弁護士に相談しておくといいでしょう。

示談交渉であれば、自転車盗の犯人が被害者とまともに接触するのは難しいといえます。
そもそも、被害者の連絡先すら知らないといったことが多いからです。
また、最近ではひとくちに自転車といっても、性能のいい電動自転車や、ロードバイクなどが盗取の対象となることもあり、被害感情が大きい被害者もいます。
そのような被害者を相手に、示談交渉を自身ですることは困難といえるでしょう。

被害者との示談交渉は、被害者に対し以下項目を聴取することが必要です。

  • 被害感情の有無
  • 被害弁償の必要性
  • 慰謝料や示談金の希望金額

被害者から希望などを聞き出し、それを実現することはそうそう簡単なことではありません。
その点弁護士に相談・依頼しておけば、示談交渉から示談手続き、その後の刑事事件手続き全般においても全面的に依頼できます。

自転車窃盗した場合は、取り返しのつかない事態になる前にぜひ弁護士相談を利用しましょう。