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体液をかける行為は何罪で逮捕される?暴行罪や器物損壊罪・わいせつ罪について

面識のない相手に体液をかけ、逮捕されるというニュースを見聞きします。
報道で「体液」と聞くと、一般的に男性の精子をさしている場合が多いです。
体液をかける行為は「暴行罪」や「器物損壊罪」にあたるなどとして検挙されるケースが多いです。
この点、暴行罪のイメージとしては、人を殴る蹴るなどの行為・器物損壊罪のイメージとしては、物を壊す行為が代表的かと思います。
しかし過去の裁判例をみても、体液をかける行為を広い解釈でとらえ、暴行罪や器物損壊、もしくはわいせつ罪に該当したケースもあります。
体液をかける行為が何罪で逮捕されるかは、非常に難しい問題です。
- 体液をかける行為はどの犯罪で逮捕される?
- 体液をかける行為でなぜ暴行罪や器物損壊罪が成立する?
- 体液をかける行為で逮捕されたらまず何をすればいい?
この記事では体液をかける等の犯罪についてお悩みの方に向けて、これらの疑問にお答えしていきます。
目次
体液をかける行為で成立する犯罪とは?

体液をかける行為は何罪になる?
近年、以下のような体液をかける事件が報道されました。
- 電車内で乗り合わせていた面識のない学生に体液をかけ、現行犯逮捕された
- 恋人と別れてしまった腹いせに、面識のないカップル複数に体液をかけ逮捕された
- 駅内や電車内で複数人に体液をかけ、その様子を撮影したとして逮捕された
男性が体液をかける行為をし、逮捕にいたる事件は少なくありません。
しかし体液をかける行為すべてが同じ犯罪に該当するわけではなく、害を被った客体の状態や、加害者の行為などにより違ってきます。
体液をかける行為がどの犯罪名に該当するかは、具体的に以下の基準により変わってくる可能性があります。
- 人の身体にかけたのか、もしくは物にかけたのか
- 身体のどこに体液をかけたのか
- 物にかけた場合物の状態はどうなっているのか
- 行為者(加害者)にわいせつの意図はあったのか
大きな線引きとして、わいせつ罪に該当するケースかそうでないかで量刑が大きく異なる可能性があります。
わいせつ罪とはたとえば強制わいせつ罪であり、強制わいせつ罪に該当するには、基本的にはわいせつに対する「故意」が備わっている必要があります。
強制わいせつ罪の要件を満たさない場合は、その他の犯罪に該当するでしょう。
次章以降では、体液をかける行為で逮捕される事件において、該当しうる各犯罪について詳しく解説します。
具体的には、以下3つの犯罪について解説していきます。
- 暴行罪(刑法第208条)
- 器物損壊罪(刑法第261条)
- 強制わいせつ罪(刑法第176条)
体液をかける行為が暴行罪に該当する例とは?
(暴行)第二百八条
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
刑法第208条
暴行罪に該当した場合の刑罰は、懲役刑もしくは罰金または拘留もしくは科料です。
拘留とは、1日以上30日未満、刑事施設に収容することをいいます。
科料とは1,000円以上1万円未満(つまり9,999円以下)の金銭を強制的に徴収する財産刑です。
体液をかける行為が「人」でなく「物」である場合、暴行罪は成立しないことになります。
体液が身体に直接付着したことが要件と考えていいでしょう。
なお体液をかける行為は「暴力」ではありませんが、暴行罪として成立し得ます。
暴行とは、殴打など単に傷害に結びつく行為に限られません。判例上も人に水をかけたり塩を振りかけたりする行為について暴行罪の成立を認めています。
つまり暴行とは、殴る蹴るなど、傷害の結果を生じさせる程度のものに限られないのです。
つぎに、体液を人ではなく物にかけた場合についてみていきましょう。
体液をかける行為が器物損壊罪に該当する例とは?
(器物損壊等)第二百六十一条
前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する
刑法第261条
器物損壊罪は、財産犯のひとつです。
客体が「物」ですので、たとえば体液をかけた場所が被害者のかばんや靴などだった場合に成立しえます。
「損壊」ときくと、かばんや靴が壊れてしまった場合のみに成立しそうです。
しかし、器物損壊は物理的な損壊に限定されていません。
体液がかかったことにより、通常は「今後使用したくない」と考えるのが通常ではないでしょうか。
実は器物損壊の「損壊」には、そのような心理的に物の効用を害する行為も含まれるのです。

弁護士
「損壊」ときくと、かばんや靴が壊れてしまった場合のみに成立するとお考えの方もいるかもしれません。
しかし、器物損壊は物理的な損壊に限定されていません。
体液をかける事件について言えば、被害者の方は体液のかかった鞄等について、通常「今後使用したくない」と考えるものと思われます。
実は器物損壊の「損壊」には、そのような心理的に物の効用を害する行為も含まれるのです。
体液をかける行為が強制わいせつ罪に該当する例とは?
(強制わいせつ)第百七十六条
十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。
わいせつ罪に該当するには、「わいせつな性的意図・故意」があったかどうかなどが要件となります。

弁護士
わいせつな行為は、「その行為が犯人の性欲を刺激興奮させまたは満足させるという性的意図のもとにおこなわれること」を要するものとされています。
体液をかける行為が本罪に該当するかについてですが、以下2点ポイントをあげてみましょう。
- 強制わいせつ罪の要件である「暴行」または「脅迫」・「明らかな性的意図」があれば強制わいせつ罪になりやすい
- 暴行や脅迫もなく性的意図が不明確な場合、客観的に評価される
また、強制わいせつ罪においては、13歳という年齢を基準に規定しています。
被害者が13歳未満の女性などであれば、暴行や脅迫行為がなくても強制わいせつ罪は成立しえます。
しかし逆に、体液をかける行為については、13歳未満であっても強制わいせつ罪とまではいえないとした裁判例もあるのです。
わいせつな行為の定義は裁判例で明らかにされていても、強制わいせつの成立に、確固とした「性的意図」を必要とするかどうかについては明確な基準がないのが現状です。
体液をかける行為で逮捕されるには「故意」が必要?
ところで、犯罪の成立には基本的に「故意」が要件となります。
これまでみてきた犯罪に照らし合わせながら、故意について具体的に説明していきましょう。
故意とは
故意はおおきく以下2つに分かれます。
- 確定的故意
- 未必の故意
確定的故意は、犯人に意図がなくとも、犯罪の構成要件該当事実の発生を確定的なものと認識している場合に認められます。
対して未必の故意とは、犯罪事実の発生を確定的なものと認識していない場合であっても成立するものです。
なお、未必の故意でももちろん「故意性」の要件は満たします。
電車内で体液をかける行為に未必の故意があったかについて検討してみましょう。
電車内で人や物に対し、体液をかけようと意図していなくとも、仮に体液を出したら近くの人や物にあたるだろう=罪になるだろうと認識していた場合は、故意性が認められるということになります。
そのことを前提に、暴行罪や器物損壊罪などの要件を満たした場合、各犯罪が成立するのです。
体液をかける行為で逮捕されたら?

まずは弁護士に個別相談すべき?
これまでお話ししたように、体液をかける行為とひとくちにいっても事例は様々です。
体液をかける行為に限りませんが、刑事事件は個別具体的に判断されるという点・各事件により対策が異なる点から、弁護士への個別相談は重要といえます。
弁護士への相談・依頼の意義は、被疑者・被告人の罪を軽くしたり前科がつかない活動をしたりすることなどにあります。
つぎにご説明する刑事事件の流れに対応するためにも、早期に弁護士相談は済ませておきましょう。
逮捕の流れとは?早期釈放されるためにはどうすべき?
逮捕にはおおきく2種類あります。
- 現行犯逮捕
- 通常逮捕(後日逮捕)
現行犯逮捕は、犯行中に警察や私人に逮捕されることです。
犯行中の逮捕であることから、基本的には犯人であることに相違ないと考えられています。
よって、現行犯逮捕では逮捕状を要しません。
通常逮捕は後日逮捕とも呼ばれ、裁判所に逮捕状を請求してから警察官などが逮捕する手続きをいいます。

逮捕後、勾留されてしまうと、起訴・不起訴の判断が下るまで最大23日間の身柄拘束が続きます。

逮捕・勾留は「逃亡のおそれ」や「証拠隠滅のおそれ」が認められるときに行われます。
この点、弁護士に依頼すれば捜査機関に対し効果的に「逃亡のおそれ」「証拠隠滅のおそれ」がないことを主張することができます。
加害者本人が捜査機関に「逃亡・証拠隠滅のおそれはない」と主張しても、基本的に信じてはくれません。
第三者である弁護士が客観的な事実を元に主張することではじめて、逮捕の回避や早期釈放の可能性を上げることができるのです。
弁護士に依頼すれば前科が付くのを回避できる?
体液をかける犯罪について検挙されたあと、基本的には検察官によって起訴・不起訴の判断が下されることになります。
起訴というのは裁判の開廷を提起する手続きで、原則として裁判が開かれ、統計上99.9%の割合で有罪判決が下されます。
不起訴というのは事件終了とする手続きのことで、前科が付くことはありません。
前科を回避するためには、検察官の起訴するタイミングより前から弁護活動をする必要があります。
体液をかける行為で逮捕された事案では、被害者との示談を結ぶことで不起訴処分獲得の可能性を上げることができます。
被害者との示談交渉は事実上、弁護士への依頼が必須です。
捜査機関は通常、加害者本人に被害者の連絡先を教えることはありません。
弁護士が介入し加害者本人に連絡先を教えないと約束した上でなら、連絡を取ることができるようになるのです。
前科が付くのを回避したい方も、まずは弁護士に相談するのが良いと言えます。
弁護士
暴行罪にいう暴行の定義は、「人の身体に向けられた不法な有形力(ないし物理力)の行使」とされています。
相手が「人」であることがポイントです。