岡野武志

第二東京弁護士会所属。刑事事件で逮捕されてしまっても前科をつけずに解決できる方法があります。

「刑事事件 法律Know」では、逮捕や前科を回避する方法、逮捕後すぐに釈放されるためにできることを詳しく解説しています。

被害者との示談で刑事処分を軽くしたい、前科をつけずに事件を解決したいという相談は、アトム法律事務所にお電話ください。

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出し子が窃盗罪で逮捕されたら?出し子と受け子の罪の違い・対処法などを解説

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振り込め詐欺など、詐欺事件でお困りの方に向けて解説しています。

振り込め詐欺など特殊詐欺の類型には、たとえば以下のようなものがあります。

  • オレオレ詐欺
  • 架空請求詐欺
  • 還付金詐欺

詐欺事件には複数人の犯人が関与していることが多く、各役割について罪の構成要件も異なります。

当記事では、振り込め詐欺などに関与した「出し子」に焦点を当てて解説していきましょう。

当記事にたどり着いた方は、以下でお困りではないでしょうか?

  • 出し子はなぜ窃盗罪になる?
  • 出し子で逮捕された家族がいる・・・家族は帰ってくる?
  • 出し子が逮捕されたらそのあとどうなる?
  • 出し子が窃盗罪で逮捕されたら対処しておくことはある?
  • 出し子が窃盗罪で逮捕されたら実刑になる?

出し子は詐欺グループの末端を担う役割ではありますが、それでも詐欺事件で検挙されている人員のうち、半数以上は出し子あるいは受け子などというデータも出ています(「出し子の検挙率は?検挙されたらどうなる?逮捕後の流れと弁護士活動について」参照)。

出し子は「窃盗罪」で逮捕されることがほとんどです。
また、犯罪とは知らず、出し子の役割を担ってしまったと言い逃れをできないことも多いです。

詐欺事件を起こし、窃盗罪で逮捕されてしまったあとの流れやご家族の心配事・今後の対処法についてもこの記事で解決していきましょう。

出し子と窃盗罪

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出し子と受け子の違い

出し子と受け子は同じ詐欺事件の末端ですが、以下の違いがあります。

出し子被害者が口座に振り込んだお金を引き出す
受け子被害者に接触し、被害者から金銭等を受け取る

出し子は銀行ATMなどから現金を引き出す行為であるのに対し、受け子の行為は対被害者という点で、犯罪の構成要件に違いが出てきます。

受け子は被害者を騙し、金銭を受け取る役目です。
出し子は銀行口座から盗みをする行為ですので、被害者を騙すという行為がない場合がほとんどです。

詐欺事件の受け子は「詐欺罪」となるケースが大半です。
また、詐欺罪に該当するには、以下の要件を満たすことが必要です。

  • 被害者を騙し(欺罔行為)
  • 勘違いさせ(錯誤)
  • 被害者自身で財物を交付させ(処分行為)
  • 財物を犯人に渡すこと(占有・利益の移転)

出し子は、上記詐欺の構成要件を満たさないことが多いため、詐欺罪で検挙される可能性が少ないのです。

ただし、出し子が「共謀共同正犯」として詐欺罪で検挙されることはありえます。
共謀共同正犯とは、詐欺の実行行為には加担していないものの、共犯者として犯罪の計画を立てるなど重要な役割を果たした人のことをいいます。

実際に犯罪に手を下した人間が1人であっても、計画に参加した全員が共謀共同正犯に該当します。

さらに共謀共同正犯に該当するには、実行者との関係性や犯罪に関与した意思などが問われることになるでしょう。

共謀共同正犯に該当しない出し子の場合、銀行から財物を盗み取る「窃盗罪」に該当します。

窃盗罪の構成要件については、次章で解説いたしましょう。

窃盗罪の成立要件・罰則

窃盗罪は、刑法235条に規定されています。

(窃盗)第二百三十五条 

他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

刑法235条

オレオレ詐欺などの出し子の場合、窃盗罪の被害者は銀行です。

窃盗罪が成立するには、以下の要件を満たす必要があります。

出し子が窃盗罪に該当するための要件
  1. 他人の財物を
  2. 不法領得の意思をもって
  3. 窃取した

不法領得の意思について、判例では「権利者を排除し他人の物を自己の所有物としてその経済的用法に従い利用処分する意思」であると定義しています。

出し子が窃盗罪で逮捕されたら?

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出し子で逮捕されたあとの流れについて

出し子で逮捕されたら、以下のような流れをたどります。

刑事事件は身柄事件の場合、釈放されなかった事件を除き、逮捕から起訴されるまで約23日間となっています。

刑事事件の流れ

この間、弁護士依頼などにより釈放された場合は在宅事件に切り替わり、自宅から警察・検察の取調べを受けることになります。
その場合、身柄事件のタイムスケジュールとは異なるかたちで進行していくことになります。

出し子の家族と接見(面会)はできる?

逮捕から約3日間は、警察の取調べ期間になります。
この期間中は、弁護士を除き誰とも面会できません。

一般面会のスケジュールは以下のとおりですが、注意しなければならないのは、出し子である被疑者に接見禁止処分がついてしまったケースです。
接見とは面会のことをいいます。

一般面会の時期

詐欺事件の場合、共犯者がいることが大半ですので、取調べが徹底されるケースが多いです。
よっていまだ逮捕にいたっていない共犯者など、周囲の人間との接触を遮断されやすく、「接見禁止」がつくことがあります。
また、接見禁止処分により、親族であっても原則面会制限されてしまいます。

接見禁止はなぜつくの?

罪証隠滅(証拠を隠すこと)や逃亡の疑いがある場合に、裁判所の判断のうえ決定されます。

また、共犯者がいる事件の場合、逮捕された被疑者と共犯者とが口裏を合わせる危険性があると判断されることがあります。

また、接見禁止がつかなかったとしても、一般面会には数々の制限があります。
面会場所の警察署にもよりますが、どれだけ遠方のご家族であっても、1回15分程度でしょう。
また、立会人が監視している状態でなければ面会できません。

制限なしの面会は、弁護士の接見交通権を利用するしかありません。

出し子でも実刑になる?

詐欺事件で起訴された場合、出し子のような末端構成員であっても、実刑となる可能性は十分にあります。
もっとも、執行猶予付き判決となるケースもあり、事件内容により量刑判断は異なります。

出し子が窃盗罪で実刑判決になる基準としては、たとえば以下のような場合が考えられます。

出し子が捜査・裁判で不利になるケース
  • 被害金額が大きい
  • 詐欺グループから受け取った報酬金額が大きい
  • 前科・前歴があるまたは同種の犯罪を繰り返している
  • 事件について否認している
  • 反省が見られない

出し子が窃盗罪で起訴されても、初犯の場合、不利になるケースをのぞけば執行猶予がつく可能性は高くなります。
ケースによっては罰金刑もありえますが、特殊詐欺事件は厳罰化の傾向にあるのが事実です。

刑事事件の量刑判断は、各人・各事件により一概には言い切れません。
個別の事件相談は、あらかじめ弁護士に相談しておくと無難でしょう。
対処法についても早期に知ることができます。

なお、初犯で被害が極端に少ないなどのケースでは、起訴されず不起訴処分となる可能性もあります。

窃盗罪で逮捕されたのが未成年だったら?

逮捕された被疑者が未成年であっても、14歳以上であれば逮捕や勾留はされます。
その後検察官の逆送がないかぎり、原則全件家庭裁判所へ送致される点で、成人とは異なります。

未成年の逮捕の流れ

上記図のとおり、逮捕後は家庭裁判所の「調査」や「処分」に付されます。

出し子が窃盗で逮捕されたら何をすべき?家族は?

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まずは弁護士相談

出し子のご家族が逮捕されたら、まずは弁護士相談を利用しましょう。

弁護士相談のメリットは以下のとおりです。

  • 事件の概要・流れや処分についての道筋が見える
  • 事件の対処法を知ることができる

刑事事件の当事者が逮捕されてしまった場合、ご家族からの弁護士相談が奏功する可能性は高いです。

まずは逮捕中で身動きが取れない被疑者のために、早期に手を打っておくことが重要です。

詐欺事件の概要や今後の流れ・対処法を知ることによって、以下目的を達成できる可能性が高まります。

  • 釈放や接見禁止処分の解除を目指し、日常生活の軌道修正を図る
  • 事件の対処法を知り実行することによって、前科などの不利益を回避できることがある

刑事事件の弁護士相談を、一部無料でしている事務所もあります。
まずは取り急ぎ、電話・メールなどで問い合わせしてみましょう。

弁護士費用を、明確に案内している弁護士事務所がおすすめです。

被害弁償と示談

詐欺罪は、犯罪類型のなかでも「財産犯」に該当します。

よって、対処法としてもっとも有効なのは、被害者への被害弁償と示談でしょう。

被害弁償とは、被害額の返還です。
あわせて示談金というかたちで被害者に謝意を示し、謝罪文なども添えると有効でしょう。
状況にもよりますが、被害弁償の額は詐欺グループの全員と出し合うことが多いです。

示談に至るまでの示談交渉は、通常弁護士にしかできません。

示談金やその他条件を提示し、出し子である被疑者の反省を伝えたうえ、最終的に示談書にサインをしてもらえたら完了です。
被害金額が大きい場合や、出し子が引き出した金額をすでに費消してしまった場合などであっても、できる限りで示談締結を優先します。

示談とは、民事事件が当事者の合意によって解決することです。

和解とも言われ、当事者同士での話し合いができている事実により、刑事上の責任も軽くなる可能性が高いです。

逆をいえば、示談ができておらず、被害者とも接触ができない、被害者の被害感情・処罰感情が大きい場合は、刑事責任を問われやすくなります。

被害弁償・示談締結で獲得できやすい処分
  • 起訴されず不起訴処分となる(前科もつかない)
  • 起訴されても実刑にならず執行猶予付き判決となる(前科はつく)

被疑者の身柄解放や接見禁止処分に対する対処法

最後に、被疑者の身柄拘束についてお話しします。

弁護士相談から刑事弁護を依頼した場合、以下の活動が可能となります。

  • 逮捕中や勾留中に釈放されるよう活動する
  • 起訴後であっても保釈請求のうえ釈放されるよう活動する
  • 接見禁止処分について意見申し立てができる

すでにお話ししましたように、逮捕後の身体拘束は最大23日間続きます。
その後起訴されてしまった場合には、裁判の期日まで身体拘束が続くことになります。

接見禁止処分についても、解除されない限り起訴後まで続くでしょう。
何十日もの間弁護士以外との外部接触ができません。
接見禁止処分が不当だとされる場合には、弁護士による準抗告などを検討します。

接見禁止処分は、先述のとおり詐欺事件などの共犯者がいる事件のほか、否認事件やそもそも組織犯罪につきやすい傾向にあります。

長期拘束は、被疑者の日常生活に支障をきたします。

身柄拘束は、ときに不当な拘束にも該当します。

被害者との示談と同時に、身柄解放にも注力し、在宅捜査を目指しましょう。