岡野武志

第二東京弁護士会所属。刑事事件で逮捕されてしまっても前科をつけずに解決できる方法があります。

「刑事事件 法律Know」では、逮捕や前科を回避する方法、逮捕後すぐに釈放されるためにできることを詳しく解説しています。

被害者との示談で刑事処分を軽くしたい、前科をつけずに事件を解決したいという相談は、アトム法律事務所にお電話ください。

アトムは夜間土日も受け付けの相談窓口で刑事事件のお悩みにスピーディーに対応いたします。

交通事故でも前科はつく!前科がつく違反と起訴・前科を避けるための方法

ac1122 car 2

当記事にたどり着いた方は、以下についてお困りではないでしょうか。

  • 交通事故で前科がつくケース・前科がつかないケースってどんな事故?
  • 交通事故で前科をつけない対策はある?

まずもって、交通事故で前科がつくことはあります。

ただし、交通事故の加害者になったからといって、ただちに前科がつくわけではありません。
また、加害者が法律違反を犯したからといって、かならず前科がつくわけでもありません。

交通事故の加害者という立場は、故意に殺人を犯したなどのケースを除き、ご自分の意思でなったわけではない方がほとんどではないでしょうか。
そのような交通事故の原因は基本的に「過失」であると判断されますが、過失の程度によっても前科がつくかつかないかのケースに分かれます。

交通事故の加害者に前科がつく場合とは、交通事故が刑事事件に発展し、検察官に起訴され有罪の確定判決を受けた場合です。

それでは交通事故と前科について、以下の疑問に沿って解説していきましょう。

  • 交通事故で前科がつくまでの流れとは?
  • 交通事故の前科はどのような違反でつく?
  • 交通事故で前科がつかない場合とは?
  • 交通事故で前科をつけたくない・・・どうすれば?

交通事故で前科がつくケース

ac1120 arrest 2

交通事故で前科がつくまでの流れ

交通事故で前科がつくまでの流れを図で確認してみましょう。

刑事事件の流れ


交通違反事件で前科がつく場合とは、起訴後の刑事裁判を経て「有罪」が確定したときのみです。

執行猶予付き判決や罰金刑が確定した場合、被告人がただちに刑務所に収監されることはありません。

ただし、執行猶予付き判決や罰金刑は、無罪判決ではなく有罪判決です。

よって前科はつきます。

なお、前歴とは逮捕歴や捜査履歴のみをいいます。
起訴されない限りは、前歴にとどまります。

つづいて、逮捕・起訴される可能性のある交通違反についてみていきましょう。

交通事故で前科がつく可能性のある違反

交通事故で、前科がつく可能性のある違反・犯罪についてご説明しましょう。
犯罪の嫌疑・違反の疑いがあれば、逮捕される可能性は出てきます。

道路交通法違反

道路交通法違反のうち、以下について解説します。

  • スピード違反
  • 飲酒運転
  • ひき逃げ
  • 無免許運転
スピード違反

標識に書かれた速度を超過した場合、もしくは標識のない道路で法定速度を超過した場合に罰則が適用されます。
スピード違反は、反則金などの行政処分で済む違反と、刑事処分が免れない重大な違反があることに注意が必要です。
スピード違反が刑事事件に発展する場合、以下の速度が基準となります。

  • 一般道路で30キロ以上のスピード違反
  • 高速道路で40キロ以上のスピード違反

スピード違反が刑事事件である場合の刑罰は、6ヶ月以下の懲役又は10万円以下の罰金刑となっています。
なお、上記の速度未満のスピード違反であっても、反則金の通知が手元にあるにもかかわらず支払わないでいると、事件が検察官に送られてしまいます。
そうすると、行政処分から刑事罰である罰金刑が下される可能性もあるため、軽微な違反であっても前科がついてしまうことになります。

飲酒運転

飲酒運転で逮捕・起訴されるニュースをたびたび目にした方もいらっしゃるかもしれません。

ご存知のように、飲酒運転は近年厳しく取り締まっているため、初犯であっても逮捕・起訴されてもおかしくありません。
悪質なケースですと、実刑判決となることも想定されます。

飲酒運転はただしくは「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」に区別され、罰則は以下のとおりです。

酒気帯び運転酒酔い運転
違反体に「酒気を帯びた状態」で運転したこと
呼気1リットル中、0.15mg以上のアルコールを検知したこと
「酩酊状態」で運転したこと
飲酒量は関係ない
罰則3年以下の懲役又は50万円以下の罰金刑 5年以下の懲役又は100万円以下の罰金 刑
ひき逃げ

ひき逃げは、「救護義務違反」とも言われます。
現場ではまず、被害者救護にあたらなくてはなりません。
ひき逃げの罪が重いと言われる理由は、たとえば不注意による交通事故の場合、救護義務違反と、その後の過失運転致死傷罪などが併科されるためです。

救護義務違反の罰則は、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金刑です。

無免許運転

無免許運転とは、免許証を取得していない状態で自動車の運転をすることです。
免許証不携帯は無免許運転ではありません。

また、免許証の取り消しをされた方が、免許証を交付されない期間に運転した場合ももちろん無免許運転です。
当然ですが、免許停止中の運転についても、停止期間は免許証の効力がありません。
よって、無免許運転になります。

無免許運転の罰則は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金刑です。
他の違反と同様、悪質な場合は懲役刑(実刑)となる可能性も十分にあります。

自動車運転処罰法違反

つづいて、自動車運転処罰法違反についてご紹介します。
もともとは刑法に規定されていた行為が、現在は「 自動車運転処罰法 」という独立した法律に規定されています。

過失運転致死傷罪

過失により、被害者を怪我させたり死亡させたりした場合に成立します。
過失類型の例は以下のとおりです。

  • 前方不注意
  • 居眠り運転
  • 信号無視
  • ながら運転

近年特に、ながら運転(ながらスマホなど)については厳罰化されました。
ながら運転による事故は、行政処分においても即刻免許停止処分になるなど、十分な過失として認識されています。

過失運転致死傷罪の罰則は、7年以下の懲役刑又は100万円以下の罰金刑です。

危険運転致死傷罪

危険運転致死傷罪の類型については以下のとおりです。

  • 酩酊状態で被害者を死傷させた
  • 進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行した
  • 赤信号無視などをし、かつ重大な危険が生じるほどの高速度で運転した
  • 車の通行を妨害する目的で、走行中の車の前方で停止したり接近したりした(あおり行為)

危険運転致死傷罪の罰則は非常に重く、被害者が負傷した場合には15年以下の懲役刑、被害者が死亡した場合には1年以上の有期懲役刑となっています。
つまり、罰金刑の規定がなく、有罪になれば実刑となることも少なくありません。

近年、妨害運転が社会問題となったこともあり、重罰化についてはご存知の方も多いかもしれません。

交通事故で前科がつかないケース

broken unsp 3

交通事故で前科がつかないケースを、以下2点にまとめてご説明します。

  • 当該交通事故が道路交通法違反のない物損事故である
  • 当該交通事故が刑事事件となったが不起訴になった

物損事故のみでは前科はつかない

まずは道路交通法違反のない物損事故である場合です。

物損事故とは、車やモノのみの損害がある事故のことをいいます。
物損のみの損害の場合、たとえば車の修理というかたちで賠償責任を果たせるからです。
民事上の責任のみにとどまり、直接刑事事件に発展することはないでしょう。
よって、物損事故は原則として前科がつかないと言えます。

ただし、物損事故を起こした場合も、道路交通法上の危険防止措置義務や報告義務があります。
これら義務を怠った場合、刑事責任が生じ前科がつく可能性があります。
また、飲酒運転等の道路交通法違反の行為で物損事故を起こした場合も、刑事責任を負い前科がつく危険があります。

不起訴処分となった場合

交通事故・交通違反事件で、不起訴処分となった場合前科はつきません。

不起訴の流れ

不起訴処分とは、検察官が起訴しないことをいいます。
起訴されると刑事裁判に移行しますが、不起訴処分となれば身柄拘束中の被疑者は釈放されます。
在宅捜査中であっても、不起訴処分が告知されることで事件は終了し、その後もとの生活に戻ることが可能です。

不起訴処分の種類については以下のとおりです。

嫌疑なし犯罪に該当する「嫌疑」がないこと
嫌疑不十分犯罪に該当する「嫌疑」(証拠)が不十分であること
起訴猶予起訴すれば有罪になる可能性はあるが、情状酌量などにより起訴しないこと

交通事故で不起訴処分となる場合、その理由は起訴猶予である可能性がもっとも高いでしょう。

起訴猶予となる理由や根拠については、一概に断定することはできません。
起訴猶予となるための条件は、個々の交通事故事案により検討されるからです。
起訴猶予となる可能性のある条件・要素は以下のとおりです。

  • 交通事故や事件の態様
  • 加害者(被疑者)の反省度合い
  • 被害者に対し民事上の賠償責任を果たしたかどうか
    (示談が済んでいるかどうか)
  • その他情状を酌量する余地はあるか

起訴するか不起訴処分にするかの判断は、検察官のみがおこないます。
上記の要素を総合的に判断し、処分が確定することになります。

次章では、不起訴処分のうち「起訴猶予」を獲得するための対策について解説いたします。

交通事故で前科を付けないための対策

hope 0828 4 1

交通事故で前科をつけないためには「不起訴処分」を獲得することについてはご説明しました。

不起訴処分は、ただ待っていれば獲得できるものではありません。
検察官に、起訴させないための要素をアピールしていく必要があります。

まずは交通事故を弁護士に相談

まずは、交通事故や刑事事件に慣れている弁護士への相談を早めに検討してください。
そもそもどのような交通事故なのか、そのために何をすればいいのか、その先の想定される処分などについて見通しやプランの作成が可能です。

弁護士相談では取り急ぎの相談が可能ですので、その後の依頼については別途検討すれば大丈夫です。

何よりもまず、専門家の意見を聞くことを優先させましょう。

捜査機関に対する刑事弁護活動を依頼

ご自分の交通事故事件がどの段階にあるかにもよりますが、刑事事件はそのタイミングでしなければならないことも異なります。

よって、ご自分の立ち位置を把握し、不起訴処分に向けて弁護士に依頼しましょう。

逮捕されている被疑者の場合、捜査には法律上の時間制限があります。
制限時間を過ぎると、あっという間に検察官の判断時期がきてしまいます。
その前に手を打っておかなければ、手遅れになることは間違いありません。

以下は刑事事件の一般的なスケジュールを表にしたものです。

刑事事件の流れ

上図のように、逮捕・勾留された場合は起訴・不起訴の判断が下るまで最大23日間の身柄拘束となります。
身柄事件の場合は、勾留期間の満期を迎えるまでに検察官の判断が下ることになります。

身柄事件の場合は、上記スケジュールを熟知したうえで行動する必要がありますので、被疑者やそのご家族は注意が必要です。

なお、逮捕されても釈放されるなどして在宅捜査となった場合は、検察官送致や起訴不起訴の判断に時間制限はありません。法律上の明確な決まりがないからです。

不起訴処分に向けた、具体的な活動は以下のとおりです。

不起訴処分に向けた弁護活動の例
  • 被害弁償済み・示談交渉事実・示談成立など加害者に有利な事実を報告する
  • 被害届が取り下げられるよう活動し報告する
  • 加害者の犯した違反などについて、起訴するにあたり十分な証拠等がない旨意見する

なお、これらの準備や手続きについては、交通事故の加害者が1人でできるものではありません。
弁護士を通じてでなければ検察官も取り合ってくれないため、注意してください。

最後に、交通事故加害者がすべきことを以下に挙げておきます。

交通事故の加害者になってしまった場合

上記は、交通事故を起こした方が最低限しなければならないことです。
これらを怠れば、今後の処分にももちろん影響が出ます。
現時点で交通事故の加害者になっていない場合であっても留意し、安全運転に努めましょう。