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万引きしたのが未成年だったら?未成年の逮捕と処分・家族ができることとは

未成年の息子・娘が万引きで逮捕されてしまった・・・
警察からそのような連絡を受けてしまった、あるいは逮捕はされていないが、万引き行為を繰り返している未成年の家族がいる・・・
未成年のご家族としては、何よりも本人の今後が心配なことでしょう。
当記事では、万引き行為の犯罪について解説しつつ、未成年独自の万引き事件について言及しています。
- 万引き行為は何罪に該当する?
- 万引きは未成年でも逮捕や勾留される?
- 万引き事件は未成年の場合処分はどうなる?
- 未成年の万引き事件について弁護士や保護者・家族は何ができる?
目次
万引き事件について知ろう
万引き行為は窃盗罪になる
まずは、万引き行為の犯罪について知りましょう。
万引きは、「窃盗罪」に該当します。
窃盗罪が成立するための要件は以下のとおりです。
窃盗罪の成立要件
- 不法領得の意思があり
- 他人の財物の占有を
- 窃取する
(窃盗)第二百三十五条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
刑法235条
不法領得の意思とは、判例では「権利者を排除して、他人の物を自己の所有物として、その経済的用法に従い、利用処分する意思」であるとされています。
商店から無断で商品を持ち出し、窃盗犯として自ら検挙してもらうため、100メートル離れた派出所に持参し出頭、自首した例について、占有が一時的であり権利排除意志も利用処分意志も認められないとして不可罰とした判例があります。
「窃取」とは、他人の占有する財物をその意思に反して自己または第三者の占有の下へ移転させる行為をいいます。
万引きの例ですと、お店の商品をポケットに入れた時点で、商品を自己の占有に移したと認められることから、窃取したといえます。
万引きは逮捕される可能性がある
万引きをし、店側に通報されたり防犯カメラで発覚したりすれば、逮捕となる可能性があります。
前者の場合、店側に現行犯逮捕されることがあるでしょう。
後者の場合ですと、後日逮捕となる可能性が高いです。
両者の違いは以下図のとおりです。

逮捕後、被害金額や程度が低いなど一定の要件を満たせば、微罪処分となる可能性もあります。
微罪処分となった場合、その日のうちに釈放されるでしょう。
逆に、万引き行為が悪質であったり、何度も万引きを繰り返す常習犯だったりした場合、検察官によって勾留請求され、のちに起訴される可能性もあります。
窃盗罪の法定刑は、懲役刑か罰金刑と比較的重いうえ、起訴されてしまえば前科もついてしまいます。
検察官に起訴され、有罪になるケースは基本的に成人の場合です。
次章では、未成年の万引き行為が逮捕されたケースについてご説明しましょう。
未成年でも万引きで勾留される?
万引きは未成年でも勾留される
未成年が逮捕された場合、捜査段階では成人と同じ手続きがとられます(少年法40条)。

被疑者段階での勾留期間ですが、まずは10日間あり、延長されればさらに最大10日間となります。
よって、未成年であっても、万引きで逮捕されれば最大20日間の勾留がつくこともあるのです。

弁護士が万引きの刑事事件に介入した場合、勾留請求をされないような弁護活動をすることができます。
未成年の万引きは家庭裁判所に送致される
万引きで逮捕された場合、事件は検察官に送られることになります。
検察官送致(刑事訴訟法203条)と呼ばれるものです。
未成年者の場合、その後は少年法という法律にのっとって、手続きが進行します。
少年事件は万引き事件にかかわらず、全件家庭裁判所に送致されることになっています(全件送致主義)。
ただし、嫌疑なし・嫌疑不十分である場合は送致されません。
成人の検察官送致と、家庭裁判所送致との違う点は、後者が少年を保護するという目的にあります。
未成年である「少年」は成長発達途上にあるため、刑罰を科すという手段は原則とられません。
家庭裁判所でのちに審判が開始されると、非行事実に加え、要保護性も審理対象になるのです。
家庭裁判所に送致後、観護措置が必要と判断されると少年鑑別所に収容されます。
観護措置が決定すると、少年の身柄は約4週間拘束されます。
観護措置とは、少年の心身の鑑別をおこなう手続きのことです。
少年審判とは?処分はどうなる?
家庭裁判所は調査の結果、審判を開始することが相当であると認めるときは、審判開始の決定をしなければなりません。
審判とは、成人の刑事事件でいう刑事裁判のことですが、成人とは内容が全く異なります。
また、観護措置に付されている場合は、同時に審判開始の決定がなされているのが実務上の運用です。
少年審判と刑事裁判の違い
少年審判 | 刑事裁判 | |
---|---|---|
目的 | 少年の教育・更生・指導 および今後の犯罪の予防 | 被告人の有罪・無罪の判断 および刑罰の決定 |
検察官関与 | 基本的になし | あり |
罪の重さと結果の反映度合 | 罪の重さのみで処分が決まるわけではない | 罪の重さが刑罰に影響することが大半 |
予断排除の原則(※) | 適用されない 証拠内容の制限もなく、裁判官に期日前に証拠を送ることが可能 | 適用される 裁判官の予断を排除するため、裁判官に事前に証拠を開示することはない |
※予断排除の原則とは、裁判官があらかじめ、事件の内容には触れない原則のことをいいます。
一定の心証を抱くことがないよう、予断は排除すべきという考えです。
万引きで審判開始されたあとの流れ
観護措置に付されている場合、観護措置決定の翌日には審判期日が指定されることが多いです。
逮捕後釈放されている場合は、在宅での捜査に切り替わりますが、その場合ただちに審判期日が決まることはあまりないでしょう。
なお、否認事件の場合、証人尋問の為に複数回審判が開かれることがあります。
つづいて、審判による決定についてみていきましょう。
少年審判には、起訴という手続きがないため前科がつきません。
深刻な事件については検察官送致もありえますが、禁錮以上の重罪や、16歳以上で殺人を犯したような一部のケースに限ります。
家庭裁判所がおこなう終局手決定には、不処分になるケースもあります。
不処分とは、保護処分に付すことができないと判断された場合であり、そのような決定が出れば釈放されます。
検察官送致と保護処分の違いとは?

成人が検察官に起訴された場合、有罪になれば前科が付きます。
未成年者の場合は保護処分となっても前科は付かず、両者はまったくの別物といえます。
先述の刑事裁判と審判の違いでお話ししたとおり、成人と未成年では、手続きや目的を異にするためです。
未成年が万引き事件で審判に付された場合、不処分でなければ「保護処分」となるのが一般的です。
保護処分には、おおきく保護観察と少年院送致があります。
保護観察と少年院送致の違いとは?
保護観察と少年院送致の違いは、第一に釈放されるかされないかです。
保護観察に付された場合、審判が終われば帰宅することになり、今後は社会生活を送りながら更生を目指します。
仕事を探したり、復学したりすることが可能になるでしょう。
保護観察の期間は、原則として少年が20歳に達するまでです。
ただし、決定のときから少年が20歳に達するまで2年に満たないときは、2年とされています。
保護観察に付されると、社会生活を送りながらも月に1〜2回保護司等との面接があります。
その際保護司等は、少年に必要な指導や助言を行い、少年がスムーズに社会生活に溶け込めるよう手助けをします。
万引き事件でも、被害金額が大きい場合や、万引き行為が癖になっている未成年者においては、少年院送致も考えられるでしょう。
少年院に送致されると、年齢や少年の状態によって分かれた施設に収容されます。
少年院送致は、基本的に少年の自由が約束されるような処遇ではありません。
保護処分のうち、もっとも重いものといえるでしょう。
未成年者が万引きで逮捕されて家族ができること

刑事事件・少年事件に詳しい弁護士に相談・依頼
弁護士はまず、ご家族(未成年)の万引き事件と向き合います。
身柄事件の場合は、身柄拘束解放活動をおこなうでしょう。
学校を休学していたり、仕事を休んだりしている場合、身柄拘束は深刻なものです。
未成年が逮捕された場合、以下のようにいくつかの釈放タイミングがあります。

- 逮捕された場合であっても勾留請求されないような活動をします
- 観護措置が付されないよう活動します
- 家庭裁判所送致後、審判不開始になるよう尽力します
- 審判開始後、少年院送致など強力な処遇にならないような活動をします
万引き事件は多種多様でも、未成年である少年の要保護性は1つしかありません。
よって、成人の刑事事件以上に慎重に検討する必要があります。
弁護士はまず、少年やそのご家族と相談のうえ、事件の筋道を立てます。
未成年のご家族は、弁護士とともに少年の更生を目指していきましょう。
万引き事件の背景を知る
未成年である少年の保護者・ご家族の方が事件の背景を知ることは重要です。
未成年の万引き事件においては、窃盗症などクレプトマニアという精神疾患が原因の場合もあるのです。
このような疾患が原因である場合、第一に治療についても検討します。
刑事事件・少年事件を多数扱っている弁護士事務所であれば、上記のような治療専門医との繋がりもあります。
早い段階で治療をし、その経過を家庭裁判所などに報告することも重要なのです。
弁護士は万引き被害者と示談交渉することが可能
以下の図は、被害者との示談までの一例です。

弁護士であれば、検察官などの捜査機関を通じて、被害者と接触することが可能です。
また、このようなルートをたどって被害者と接触することは、加害者側である未成年およびご家族であれば通常難しいでしょう。
被害者と示談が成立した場合、その後の処遇が軽くなる可能性が非常に高いです。
未成年の万引き事件については、積極的に弁護士に相談されることをおすすめいたします。
窃盗罪の刑罰は、10年以下の懲役刑か50万円以下の罰金刑です。
また、窃盗罪は未遂でも処罰されることがあります。