岡野武志

第二東京弁護士会所属。刑事事件で逮捕されてしまっても前科をつけずに解決できる方法があります。

「刑事事件 法律Know」では、逮捕や前科を回避する方法、逮捕後すぐに釈放されるためにできることを詳しく解説しています。

被害者との示談で刑事処分を軽くしたい、前科をつけずに事件を解決したいという相談は、アトム法律事務所にお電話ください。

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出し子の検挙率は?検挙されたらどうなる?逮捕後の流れと弁護士活動について

警察庁の調べによると、令和2年での特殊詐欺検挙件数は、7000件を超えています。
また、検挙人員においては3000人弱というデータが出ており、内2000人弱が受け子や出し子であるといわれています。
つまり検挙された人員の大部分が、出し子などの末端であるとされているのです。

特殊詐欺とは、被害者宅に電話をかけるなどして対面することなく信頼させ、通帳などから金銭を引き出す犯罪のことです。

特殊詐欺のなかでも、振り込め詐欺やオレオレ詐欺の手口についてはご存知の方が多いでしょう。

検挙とは一般的に、捜査機関が特定の人物を犯人と断定し、逮捕または在宅のまま取り調べることをいい、振り込め詐欺などの出し子であっても検挙される可能性は十分にあります。

振り込め詐欺などの掛け子や受け子は、基本的に詐欺罪で検挙されますが、現金を引き出す出し子は単独では詐欺罪に該当しないケースがほとんどです。
もっとも、出し子であっても共謀共同正犯として詐欺罪に該当することもあります。
振り込め詐欺にいう共同正犯とは、出し子も振り込め詐欺に関与していた点について、掛け子や受け子と共同して犯罪に加担していたとされるものです。

当記事では、以下の疑問に沿って説明しています。

  • 出し子は何罪で検挙される?
  • 検挙とはそもそも何?出し子で検挙されてしまったらどうなる?
  • 出し子で検挙されたら弁護士に相談すべき?依頼の内容・メリットは?

出し子など特殊詐欺の検挙率は、平成29年を境に増加しています。
また、高齢者が狙われやすいという点も依然として変わりなく、状況は深刻です。
振り込め詐欺は、加害者側にとっても深刻な結果をもたらす犯罪であることは間違いありません。

以下、出し子が検挙される可能性や根拠について詳しく解説していきましょう。

出し子は窃盗罪で検挙されることが多い

振り込め詐欺などの掛け子や受け子は、基本的に詐欺罪に該当するでしょう。
出し子の場合は、単に現金をATMから引き出すなどの役割にとどまることが多く、詐欺罪の構成要件を満たさない可能性が高いです。

詐欺罪というためには、大前提として被害者を騙して信頼させるという要件を満たす必要があります。
出し子の場合、被害者と直接連絡を取ったり、誰かや何かに扮して対面したりすることが基本的にないため、被害者を騙す行為が成立していないことが多いのです。

出し子が検挙されるとすれば、窃盗罪で逮捕されることが多いでしょう。

(窃盗)第二百三十五条 
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

刑法235条

窃盗罪は財産犯の1つです。
振り込め詐欺などの出し子の場合、被害者の財物(金銭)を窃取し、被害者の意思に反して財産を得たものだと解釈できます。
これらは、以下窃盗罪の構成要件に該当します。

出し子、つまり窃盗罪の構成要件をまとめると以下のとおりです。

  • 他人の財物を
  • 他人の意思に反して
  • 不法領得の意思を持ち
  • 窃取した

不法領得の意思とは、判例によれば「権利者を排除して、他人の物を自己の所有物として、その経済的用法に従い、利用処分する意思」だとされています。

他人の物を自己の所有物として利用、処分する意思があることが前提です。

窃取とは出し子の場合、占有者の意思に反して目的物である「財物(金銭)」を、占有者の占有を排除し、自己または第三者の占有に移すことです。

簡単にいってしまえば、窃盗は泥棒のことです。
また、振り込め詐欺などの末端を担う出し子や受け子は、真っ先に逮捕される可能性が高く、掛け子よりも先に警察の調べを受けることが多いでしょう。

その後共犯者である、掛け子や受け子が詐欺罪で逮捕されるといったケースが目立ちます。
出し子が検挙されるとすれば、実際に犯行に及んでいた現場を目撃されたり、ATMに設置してある監視カメラから発覚したりすることが多いでしょう。

出し子が検挙されたらどうなる?

検挙とは?逮捕との違い

検挙とは、捜査機関が特定の人物を犯人と断定し、逮捕または在宅のまま取り調べることです。
よって検挙は、「逮捕」よりも広い意味で解釈されています。

逮捕には、一般的な逮捕から緊急を要するものまで3種類あり、手続きの流れもすこし異なります。

逮捕には、
通常逮捕(後日逮捕)・現行犯逮捕・緊急逮捕の3つがあります。

なお、緊急逮捕は通常逮捕と違い、先に逮捕状を請求しません。
何よりも先に被疑者の拘束を優先するため、よほど犯人性の高い場合に限ってなされるものです。
逮捕状はあとから請求するのが実務上の流れです。

以下では、「通常逮捕(通常逮捕)」と「現行犯逮捕」についてご説明しましょう。

現行犯逮捕と後日逮捕の違い

通常逮捕は先に逮捕状を請求するため、出し子の犯罪をした日ではなく後日に逮捕されることとなります。
よって後日逮捕と呼ばれているのです。
出し子においては、監視カメラなどで犯人が特定され、警察が逮捕状をもって出し子である犯人の自宅に赴くでしょう。

現行犯逮捕は、まさに犯行途中に腕をつかまれるなどして逮捕されることです。
現行犯逮捕に限っては、例外的に逮捕状を必要としません。
その理由は、まさに犯罪をしているところを確実に目撃されているためです。
犯人であることが間違いないため、そのような手続きがなくても逮捕することができるのです。

現行犯逮捕は「私人逮捕」ともいわれることがあります。
警察以外の、たとえば通りがかりの素人でも逮捕が可能です。

出し子で検挙後(逮捕後)の流れ

つづいて、出し子で逮捕された後の流れについてご説明します。

逮捕の流れ

逮捕から勾留請求・勾留決定まで

出し子で逮捕されると、まずは警察署の留置場などに収容されます。
取り調べの際は、共犯者についても事情を聞かれるでしょう。

警察は48時間の持ち時間厳守で、被疑者を徹底的に調べます。
被疑者には黙秘権がありますが、やってしまったことまでを否認することと黙秘権の行使は別物です。
否認し続けていると、後の処分が不利になることもあるでしょう。

警察官の取り調べ終了後、被疑者は検察官に送られます。
このことを、法律用語で「送致」といいます。

被疑者を受け取った検察官は、24時間以内に、被疑者を勾留するか釈放するかを決めなければいけません。
振り込め詐欺などの組織犯罪においては、共犯者がいることや、取り調べる内容が多いことから、ほとんどの場合勾留請求されてしまうでしょう。
勾留が決定すれば、裁判所にて「勾留状」が発付されます。
その後被疑者の身柄は最大で20日間拘束されてしまいます。

勾留後、起訴不起訴の判断まで

勾留の満期を迎えると、検察官処分がなされます。

不起訴となれば事件は終了となり、被疑者は釈放されます。

起訴されれば裁判へ移行です。
裁判は、公判請求されて刑事裁判が開かれるか、罰金刑の場合は略式裁判となります。
なお、略式裁判は簡易裁判所の管轄です。

最終処分については、裁判官より判決で言い渡されることになります。

出し子で検挙されたら弁護士相談

出し子で自首するなら弁護士同行が可能

自首とは、犯人が自らの意思で罪の全容を警察官などに申告することです。
罪の一部だけ打ち明けたり、一部を否認することは自首ではありません。

被疑者もしくはそのご家族が弁護士に相談することで、弁護士同行の自首が可能になることもあります。

自首すれば逮捕される可能性はもちろんありますが、その後の処分が軽くなることもあるでしょう。
処分については、振り込め詐欺などの被害金額や犯罪の態様によっても変わってきますので、詳しくは弁護士に直接相談されることをおすすめします。

出し子で検挙されたら弁護士依頼がおすすめな理由・弁護士活動について

出し子で検挙(逮捕)されたら、まずは警察から被疑者のご家族に連絡がいくでしょう。

しかし警察から連絡を受けた親族であっても、被疑者逮捕の理由程度しか知らされず、取り調べの内容までは教えてもらえないことがほとんどです。
逮捕中はご家族であっても面会ができないため、最悪のケースですと、被疑者にとって取り調べが不利に進行する可能性も否めません。

出し子で逮捕された被疑者のご家族は、速やかに弁護士に相談しましょう。
弁護士に相談することで、以下のような弁護活動が可能となります。

弁護士接見を依頼する

接見とは、面会のことです。
弁護士と被疑者には、立会人なく接見する権利があります。

被疑者の取り調べは、想像以上に不安や孤独がともなうものです。
弁護士に接見依頼をすれば、被疑者の話に耳を傾けてくれるだけでなく、その後被疑者のご家族に接見内容を報告することも可能です。

弁護士による被疑者との接見は、時間制限もありません。
弁護士に接見依頼することにより、弁護士は被疑者に対して取り調べのアドバイスをしたり、黙秘権や供述調書署名・押印拒否などの権利行使の手助けをしたりすることが可能です。

被疑者勾留に対して解放活動をする

出し子で検挙・逮捕された被疑者に対し、弁護士はおもに以下のタイミングで身柄解放活動をします。
身柄解放活動とは、逮捕された被疑者の身体拘束を解放すべく、捜査機関や裁判官に対し意見の申し入れなどをすることです。

被疑者の身柄解放活動タイミング
タイミング活動内容
1.勾留請求前被疑者逮捕後、検察官による勾留請求がされないように働きかけます。
勾留要件を満たさない旨やその他被疑者に置かれた立場を検討し、検察官に意見書を提出します。
2.勾留請求後・勾留決定前勾留請求後は裁判官の判断により勾留が決定してしまいますので、今度は裁判官に対して意見書の提出を検討します。
また、裁判官と弁護士が面談をする場合もあります。
3.勾留決定後被疑者の早期解放を目指し、「準抗告」や場合によっては「特別抗告」をおこなうことがあります。
準抗告とは、裁判官が出した勾留決定処分を破棄するよう求める手続きをいいます。

上記の身柄解放活動は、あくまでもタイミングごとの活動に意味を成します。

そのため、出し子で逮捕された被疑者やそのご家族が留意しなければならないことは、刑事事件のスピードの把握です。

刑事事件はあっという間に次の段階に進行してしまいますので、何もしないでいると手遅れになる場合もあります。
弁護士への相談は早めにおこなうのが鉄則といえるでしょう。

被害者と示談する

出し子で検挙されたということは、掛け子や受け子が騙した被害者が存在しているということです。

出し子は現金を引き出すなどの役割のため、被害者と面識がないことがほとんどです。
そのような場合であっても、被害者との示談は必要なのでしょうか。

出し子であっても示談は有効です。
複数人の共犯者がいるような振り込め詐欺の場合、掛け子や受け子はもちろん、出し子においても示談が成立していることが望ましいです。

出し子で検挙・逮捕された被疑者の処分決定の根拠として、被害者との示談成立有無があげられます。
示談書には、示談締結の事実のほか、被害者が被疑者を許すという内容を付記することが多いため、そのような内容は処分に有利に働くのです。

振り込め詐欺には、行為の悪質さが際立つものも存在し、被害金額が多ければ処分が重くなるケースもあります。
弁護士であれば、示談締結と同時に被害者に金銭を返還することを約し、その全額を返済することによって示談に持っていけるよう交渉します。

最後に、出し子で検挙された被疑者(被疑者のご家族)が弁護士依頼するメリットについてまとめておきましょう。

出し子が弁護士依頼するメリット
  1. 接見で時間制限なく弁護士と話すことができるため、取り調べのアドバイスが受けられる
  2. 弁護士による身柄解放活動が、法律にのっとって段階的に実現できる
  3. 振り込め詐欺などの出し子にとって有利な、被害者との示談交渉が可能になる

出し子で検挙されたら、まずは刑事事件に詳しい弁護士事務所・弁護士に相談しましょう。