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盗撮行為で懲戒処分になる可能性|不起訴なら解雇されない?公務員の場合は?

- 盗撮で懲戒処分になるのはどんなとき?解雇、クビの可能性は?
- 盗撮をしたとしても不起訴なら懲戒処分にはならない?公務員なら?
ご覧のページでは、盗撮による懲戒処分について徹底解説します。
目次
盗撮で起訴されたら懲戒処分がくだされるのか|解雇、クビの可能性
盗撮は犯罪です。
盗撮行為がどのような罪に問われるか知りたい!という方はコチラの記事をご覧ください。

起訴されると裁判が開廷され、ほぼ確実に有罪判決がくだされることになります。
まずは、盗撮について起訴され有罪となった場合について解説していきましょう。
盗撮で起訴、有罪となった場合は懲戒解雇?|社内盗撮
- 社内の更衣室を盗撮した
- 社内のトイレを盗撮した
- 同じ会社に勤める人を盗撮した
といった態様の事件では、解雇は正当なものだと認められる可能性は高いでしょう。
法律上、使用者が従業員を解雇するときには、
- 客観的に合理的な理由
- 社会通念上の相当性
が必要であるとされています。
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
引用元:労働契約法16条
社内盗撮はこれら要件に当てはまると解される可能性がそうとう高いです。
盗撮で起訴、有罪となった場合は懲戒解雇?|私生活上の盗撮
- 通勤中の電車、路上などでの盗撮
- 休日中に行った盗撮
など、業務と関係のない私生活上の犯罪の場合、たとえ有罪になったとしても解雇が認められるケースというのは限定的です。
判例上、私生活上の犯罪について解雇が認められるのは、事件の態様が以下の①と②両方に当てはまる場合だけです。
要件
- ① 定款などに、私生活上の犯罪が懲戒の事由にあたるということが明記されている
- ② 下記のいずれかに該当する
- その行為が企業秩序に直接の関連を有する
- その行為が企業に対して社会的評価の低下毀損につながるおそれがあると客観的に認められるものである
これは非常にハードルが高いです。
解雇が不当とされた事例
私生活上の犯罪で、解雇が不当とされた一例をここにご紹介しましょう。
盗撮の事案ではありませんが、同じ破廉恥犯(不純な動機の犯罪)の事例ですから、大いに参考となります。
解雇が不当とされた事例①
非番の鉄道職員が、痴漢撲滅キャンペーン中に当時14歳の被害女性の臀部、大腿部を着衣の上から触った。
その職員は、略式罰金20万円の有罪判決を受けた。
解雇が不当とされた事例②
会社が従業員に対し職場諸規則の厳守、信賞必罰の趣旨を強調していた時期に、住居侵入罪で有罪となった事例。
その従業員は深夜に他人の住居の風呂の扉をはずして侵入、家人に見とがめられて逃走した破廉恥犯であり、罰金2500円を科せられた。
これほどの態様の事件でも、解雇は不当とされました。
事例②の判決文に、盗撮での解雇について参考となる部分があるのでここに引用しましょう。
(略)
会社の組織、業務等に関係のないいわば私生活の範囲内で行なわれたものであること、(略)刑罰が罰金二、五〇〇円の程度に止まつたこと、(略)(被告人の)職務上の地位も(略)指導的なものでないことなど原判示の諸事情を勘案すれば、被上告人の右行為が、上告会社の体面を著しく汚したとまで評価するのは、当たらないというのほかはない。
(略)
引用元:最高裁判所第3小法廷 昭和45年7月28日判決 事件番号『昭和44年(オ)第204号』
つまり、
- 私生活の範囲の犯罪で
- 科された刑罰が軽微で
- 会社内の地位がそこまで高くない
こういった事情が見られる場合、解雇が不当と認められる可能性は高いのです。
なお判決文中の
『刑罰が罰金二、五〇〇円の程度に止まつたこと』
という記述についてですが、罰金2500円は当時の住居侵入罪における最上限の金額です。
「2500円に止まった」というのは、「懲役刑ではなく罰金刑で済んだ」という意味だと解すことができます。
解雇が正当だと認められた事例
解雇が正当なものだと認められた事例も紹介しましょう。
解雇が正当だと認められた事例
過去何回も痴漢をはたらいた鉄道職員が、再三、訓戒処分や減給処分をうけたにも関わらず、また再び痴漢をはたらいた事例。
当該の鉄道職員は、以前、痴漢行為をはたらいた際に、
「もう二度と痴漢はしない。仮に痴漢をした場合、どんな処分も受け入れる」
といった旨の念書を作成していた。
私生活上の盗撮行為で解雇が正当なものだと認められるには、この事例に匹敵するレベルの悪質さが必要となるでしょう。
業務上の盗撮 | 私生活上の盗撮 | |
---|---|---|
解雇の可能性 | 高い | 低い |
要件 | ・客観的に合理的な理由がある & ・社会通念上の相当性がある | ・定款などに、私生活上の犯罪が懲戒の事由になると明記 & ・企業秩序に直接関連する or ・企業に対して社会的評価の低下毀損につながるおそれがある |
私生活上の盗撮でもクビ以外の懲戒処分ならあり得る?
「私生活上の盗撮犯罪については、懲戒解雇が正当だと認められるケースは限定的」
ですが解雇よりも軽い処分であれば、それが正当なものだと認められる可能性は十分に高いです。
判例をあたってみると、懲戒処分をくだす際には以下の要素が考慮されることになっています。
- その犯罪行為の原因、動機、状況、結果
- 当該職員の犯罪前後における態度
- 懲戒処分等の処分歴
- 他の職員及び社会に与える影響
など
これら要素を総合的に踏まえたうえで、
『企業秩序の維持確保という見地から考えて相当だと思われる処分』
がくだされることになっています。
個別事情的に判断されることであり一概には言えませんが、
- 会社内での地位が高い
- 犯行態様が悪質
- 事件が報道された
- 過去、懲戒処分歴がある
などの事情がある場合、降格、停職、減給など重い処分がくだってもおかしくはないでしょう。
盗撮で不起訴なら懲戒処分はくだされないのか|不起訴の種類
日本の刑事手続きにおいては、裁判開廷の前にまず検察官が、起訴するか不起訴とするかを判断します。

統計上は、検察が把握した刑事事件のうち6割~7割ほどの事件について不起訴となっています。
起訴猶予で不起訴なら懲戒処分もあり得る?
不起訴処分は、不起訴となった理由によってその種類がわかれます。
盗撮の事案では、
- 起訴猶予
- 嫌疑なし
- 嫌疑不十分
の3つの理由による不起訴が多いです。
中でも、統計上もっとも多いのは起訴猶予を理由とした不起訴処分です。
起訴猶予とは
起訴猶予とは、以下のイラストのような理由による不起訴のことです。

「犯罪を犯したと十分に疑われる」という点で、他の理由による不起訴とは一線を画します。
社内盗撮の場合
社内の盗撮で、最終的に起訴猶予処分となったとき、懲戒解雇が正当だと認められる可能性は否定できません。
「犯罪を犯したと十分に疑われる」ので、企業秩序に鑑み解雇処分が相当だと判断されてもおかしくはないのです。
私生活上の盗撮の場合
私生活上の盗撮について起訴猶予で不起訴になった場合、解雇処分が正当だと認められることはほぼないとみてよいでしょう。
有罪の場合ですら解雇が正当だと認められるケースは限定的なのですから、起訴猶予ならなおさらのことです。
解雇よりも軽い処分を受ける可能性については否定できません。
ただし、有罪判決を受けた場合と比較すれば、処分の内容はより軽いものとなるはずです。
嫌疑なし、嫌疑不十分で不起訴なら懲戒処分は無効?
嫌疑なし、嫌疑不十分で不起訴となった場合は、解雇に限らずそもそも懲戒処分をくだすことそれ自体が、原則不当であると認められるでしょう。
嫌疑なし、嫌疑不十分とは
嫌疑なし、嫌疑不十分とはそれぞれ以下のような意味となります。
嫌疑なし
被疑者が犯人であるという証拠が見つからなかった、あるいは犯人ではないことが明らかになった
嫌疑不十分
被疑者が犯人であるという証拠が不十分だった
厳密にいえば、刑事手続の上で証拠不十分だと認められた案件が、民事的な側面からも潔白であると認められるかどうかというのは、まだわかりません。
ただ、嫌疑なし、嫌疑不十分で不起訴となったという事実は「事件に関与していない」ということを主張するひとつの論拠となり得ます。
会社側としても、そうした論拠を持つ人に対しうかつには懲戒処分をくだせないでしょう。
でも盗撮のことがばれたら職場にいづらくならない?
会社は法律の専門家ではありません。
そのため、法的に解雇が不当だと認められ得る事件について、会社側の独断で懲戒解雇がくだされるケースというのは数多くあります。
また、たとえ懲戒処分がくだされなかったとしても、逮捕、検挙、起訴された事実などが職場内に広まってしまうこともあります。
まして盗撮は性犯罪の一種ですから、職場に居づらくなるという点について想像に難くありません。
実務上は自主退職となるケースも多い
実務的には
弁護士に依頼して懲戒処分を取り消し、または軽減してもらい、自主退職という形で職場を去る
という方も多いです。
懲戒解雇のままではもらえなかった退職金を手に入れたうえで、それを元手に再就職先を見つけるというわけです。
起訴猶予(業務に関連) | 起訴猶予(私生活上) | |
---|---|---|
懲戒解雇 | 可能性は否定できない | 可能性はとても低い |
解雇よりも軽い処分 | 可能性は十分にある | 可能性は十分にある |
*なお実務上は自主退職の道を選ぶ人も多い
*「嫌疑なし」「嫌疑不十分」で不起訴となった場合、懲戒処分は原則不当
公務員が盗撮したら懲戒処分は不可避?
ここまで、一般企業を想定し、盗撮による解雇の可能性などについて解説してきました。
ここからは、公務員の盗撮について解説していきましょう。
盗撮で公務員が懲戒免職になる可能性は?
一般に公務員の場合、通常の会社員と比較すると懲戒処分のリスクは高くなります。
公務員は、国家公務員法、地方公務員法によって
- 規則などに抵触したとき
- 全体の奉仕者としてふさわしくない非行があったとき
懲戒処分がくだされると規定されています。
国家公務員法
職員が、次の各号のいずれかに該当する場合においては、これに対し懲戒処分として、免職、停職、減給又は戒告の処分をすることができる。
一 この法律若しくは国家公務員倫理法又はこれらの法律に基づく命令(略)に違反した場合
(略)
三 国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合
引用元:国家公務員法82条
地方公務員法
職員が次の各号の一に該当する場合においては、これに対し懲戒処分として戒告、減給、停職又は免職の処分をすることができる。
一 この法律若しくは第五十七条に規定する特例を定めた法律又はこれに基く条例、地方公共団体の規則若しくは地方公共団体の機関の定める規程に違反した場合
(略)
三 全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合
引用元:地方公務員法29条
業務に関係する盗撮はもちろんのこと。
場合によっては私生活上の盗撮行為でも懲戒免職になる可能性はあります。
私生活上の盗撮行為で免職になった事例
私生活上の盗撮行為により懲戒免職処分がくだされた事例を、ニュースから参照してみましょう。
実際の事例に鑑みると、以下のような要素を備えていると、減給や停職などでは済まされず懲戒免職にまでなってしまう可能性があるようです。
- 犯行態様が悪質
- その犯行が、他の規則にも抵触する
- 職務との兼ね合いで、より悪質な非行であると認められる
- その職員の地位や立場が社会的に見てより重要
など
具体的に見ていきましょう。
事例①|校長が日常的に盗撮
埼玉県教育委員会は9日、東京都迷惑防止条例違反(盗撮)の疑いで警視庁に逮捕された(略)小学校校長(58)を懲戒免職処分にした。
県教委によると、校長は「盗撮に興味があり、2年前から週1、2回やっていた」と説明。
(略)
スーパーで女子高生のスカート内を盗撮。警視庁が翌11日に逮捕していた。
(略)
引用元:サンスポ.com 2018/5/9 19:56 『盗撮容疑の校長「興味があり2年前から週1、2回」 懲戒免職処分に』
このニュースでは、
- 常習的に盗撮をしていた:犯行態様の悪質性
- 教育機関に関わるものが未成年者を盗撮した:職務との兼ね合い
- 小学校の校長が盗撮した:社会的な地位がある
という点が認められます。
事例②|町職員が旅館で盗撮
旅館で入浴中の女性をスマートフォンのカメラで盗撮したとして、奈良県大淀町は3日、男性主任主事(31)を懲戒免職処分にしたと発表した。
(略)
アルバイト先の同県天川村内の旅館で、入浴中だった女性2人をスマートフォンのカメラで撮影
(略)
主任主事は(略)入庁して以降も年に数回から数十回程度、繁忙期に休日を利用して働いていたという。
引用元:産経WEST 2018/9/4 7:20『旅館で入浴中の女性を盗撮 奈良・大淀町職員を懲戒免職処分』
このニュースでは、
兼業禁止なのに旅館でアルバイトをしている:他の規則にも抵触する犯行態様
が認められます。
公務員の副業は、国家公務員法、地方公務員法によって原則的に禁じられています。
懲戒免職が不当とされた事例
「より悪質な態様の盗撮では懲戒免職となる可能性もある」
逆に言えば、「盗撮し有罪になった」という理由だけでは、懲戒免職が不当と判断される余地もあります。
たとえば、市職員が懲戒免職に対して異議を申し立て、結果免職から停職に処分内容が変更された事例があります。
広島県東広島市は2月27日、女性のスカート内をカメラで盗撮したとして、懲戒免職にした健康福祉部の男性主事(26)を、市公平委員会の裁決に従って停職6カ月に変更した。
市によると、男性は2016年4月、盗撮をした県迷惑防止条例違反容疑で広島県警に逮捕され、20万円の罰金刑が確定した。翌5月に免職となったが、処分を不服として市公正委員会に審査を請求。公正委が2月24日、処分が重すぎると判断し、停職6カ月と裁決した。
(略)
引用元:HUFFPOST NEWS 2017/2/28 19:36 『盗撮で市職員を懲戒免職⇒「重すぎる」と停職6カ月に変更される』
たとえ私生活上の盗撮で有罪となったとしても、免職を免れる可能性はゼロではないということです。
まとめ
公務員の盗撮による懲戒処分
業務に関係する盗撮 | 私生活上の盗撮 | |
---|---|---|
懲戒免職 | 可能性は著しく高い | 悪質な態様:可能性は高い それ以外:可能性は高いとまでは言えない |
懲戒免職よりも軽い処分 | - | 可能性は著しく高い |
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野尻大輔
盗撮が刑事事件化したときには、捜査の終了後、検察官によって
が判断されます。